取材・文/池田充枝

生涯にわたり美人画を描き続けた日本画家、上村松園(1875-1949)。
京都で生まれ育った松園は、京都府画学校に通い鈴木松年に学んだのち、幸野楳嶺、竹内栖鳳に師事し、技法の習得に励みました。江戸や明治の風俗、和漢の古典に取材した女性像を描いて早くから頭角を現し、文展や帝展など数々の展覧会に出品を重ねて活躍します。

美人画の名手として高く評価され、昭和23年(1948)には女性として初めて文化勲章を受章しました。「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香り高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語った松園の作品は、今なお多くの人に愛されています。

上村松園《牡丹雪》1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

上村松園《牡丹雪》1944(昭和19)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

屈指のコレクションを誇る山種美術館の松園作品全点が観られる展覧会が開かれています。(3月1日まで)

上村松園《春のよそをひ》1936(昭和11)年頃 絹本・彩色 山種美術館蔵

上村松園《春のよそをひ》1936(昭和11)年頃 絹本・彩色 山種美術館蔵

本展の見どころを、山種美術館の館長、山﨑妙子さんにうかがいました。

「山種美術館が広尾に移転し開館してから10周年を迎えたことを記念して、当館が所蔵する上村松園の作品を一挙公開する特別展を開催しております。当館創立者で初代館長の山﨑種二(1893-1983)は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集しました。《蛍》、《新蛍》、《砧》、《牡丹雪》などの代表作を含む当館所蔵の作品計18点は、屈指の松園コレクションとして知られます。季節を感じさせる衣装や丹念に描かれた日本髪、繊細な表情をみせる目元や指先など、松園芸術の粋をご堪能ください。

上村松園《蛍》1913(大正2)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

上村松園《蛍》1913(大正2)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

本展では、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方」と並び称された鏑木清方や、その弟子の伊東深水の美人画、さらに村上華岳、小倉遊亀、橋本明治などの日本画家による、多彩な女性像をご紹介します。松園の美人画とともに、近代・現代のさまざまな画家たちが女性の姿を描き出した作品をご覧いただきながら、日本画における美人画の世界の豊かな広がりや、その表現の展開をお楽しみいただければ幸いです」

村上華岳《裸婦図》重要文化財 1920(大正9)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

村上華岳《裸婦図》重要文化財 1920(大正9)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

橋本明治《舞》1966(昭和41)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

橋本明治《舞》1966(昭和41)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

新年にふさわしい雅な作品の数々が並びます。ぜひ会場に足をお運びください。

上村松園《砧》1938(昭和13)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

上村松園《砧》1938(昭和13)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

【開催要項】
山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 上村松園と美人画の世界
会期:2019年1月3日(金)~3月1日(日)会期中一部展示替えあり
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://www.yamatane-museum.jp
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし1月13日、2月24日は開館)、1月14日(火)、2月25日(火)

取材・文/池田充枝

 

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