取材・文/池田充枝
紫式部によって著された『源氏物語』は、日本の文学史上もっとも重要な作品として尊崇され、各時代を通じて読み継がれ、後世の文学をはじめ精神・文化面でもさまざまな影響を与えてきました。
これと表裏をなすように、原作が成立してさほど時を経ずして絵画化がはじめられたとみられます。以後現代にいたるまで『源氏物語』は幾度も繰り返し描き継がれ、「源氏絵」という日本の絵画史上特殊で重要なジャンルを形成してきました。
そのなかにあって国宝「源氏物語絵巻」は、現存最古の「源氏絵」の遺例として著名な作品です。現存する国宝「源氏物語絵巻」は19場面。そのうちの15場面が名古屋の徳川美術館に、4場面が東京の五島美術館に所蔵されています。
貴重な国宝「源氏物語絵巻」を目の当たりにすることができる展覧会が開かれています。(12月16日まで)
源氏物語の世界―王朝の恋物語―(会場:徳川美術館)
本展は、徳川美術館が所蔵する国宝「源氏物語絵巻」15場面のうち、修復が完成した7場面と来年度修復が予定されている3場面を公開。併せて数々の模本や注釈書も紹介します。
本展の見どころを徳川美術館の学芸部長、四辻秀紀さんにうかがいました。
「当館が所蔵する国宝「源氏物語絵巻」は、原作に書き綴られた王朝人たちの営みを伝えてくれるにとどまらず、研ぎ澄まされた感性による絵画表現、美麗に装飾された料紙にしたためられた詞書(ことばがき)の優美な書など、他の「源氏絵」と一線を画する質の高さと説得力をもって見るものを魅了します。
制作された12世紀前半当初、80場面あったと推定されるこの「源氏物語絵巻」ですが、現存するのはわずか19場面。このうち当館が所蔵する15場面(絵15面・詞書28面)は、国庫補助金による文化財の保存修理が行われ、絵15面は平成27年に完了しましたが、その後も詞書の修復が継続して行われています。本展覧会では、修復が終わった7場面とともに、来年度に修復が予定されている作品を併せて公開します(会期中入れ替えあり)。修復前と修復後の場面を見比べることで、修復技術の素晴らしさに驚くことと思います。
また、『源氏物語』の貴重な写本類や平安時代以降の「源氏絵」の系譜もたどります。」
華麗な中にも哀調ただよう王朝の恋絵巻!! ぜひ会場でじっくりご鑑賞ください。
【開催要項】
源氏物語の世界―王朝の恋物語―
会期:2018年11月3日(土・祝)~12月16日(日)
会場:徳川美術館
住所:名古屋市東区徳川町1017
電話番号:052・935・6262
http://www.tokugawa-art-museum.jp/
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
取材・文/池田充枝