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ミステリアスな能面と能衣装の名品を一挙公開!《特別展 金剛宗家の能面と能装束》

取材・文/池田充枝

日光作「翁」〔室町時代 金剛家蔵〕

能の舞台に用いられる仮面が能面(のうめん)ですが、能の世界では特に「面(おもて)」と呼んでいます。その種類は200種を超えるともいわれますが、大きくは「翁面(おきなめん)」「尉面(じょうめん)」「女面」「男面」「鬼神面」に分けられます。

「翁面」は、天下泰平・五穀豊穣・子孫繁栄を祈祷(きとう)し言祝(ことほ)ぐ宗教儀式的な性格を有します。それに対し「尉面」をはじめ「女面」「男面」「鬼神面」は、それぞれが能で演じる役柄を表現します。

「尉面」は神の化身役、あるいは老人役の面。悪尉面は鬼神面の一種で、すこぶる強いというような意味で、強い老体の鬼神といえます。「女面」は女性を表した面ですが、貴族の女性が基本となっていて、小面、孫次郎、増女(ぞうおんな)、十寸神(ますかみ)、曲見(しゃくみ)、姥というように年齢と役柄に応じた種類があります。

「男面」も年齢に沿った様々な面があります。女面と同じく貴族が基本となっていますが、武将の猛々しさが加わります。そして「鬼神面」は、鬼や荒ぶる神などの面です。

赤鶴作「般若」〔室町時代 金剛家蔵〕

一方、能の舞台で役者が纏う「能装束」の種類としては、唐風な織物の「唐織(からおり)」、堅い厚地の織物の「厚板(あついた)」、女性に用いる小袖の一種「縫箔(ぬいはく)」、公家の略服とされる「狩衣(かりぎぬ)」、武装の簡単な甲冑姿を表す「側次(そばつぎ)」、女性が羽織って着る「長絹(ちょうけん)」などがあります。

日光作「翁」〔室町時代 金剛家蔵〕

そんな能面や能装束の優品を一挙に拝見できる展覧会《特別展 金剛宗家の能面と能装束》が、東京・日本橋の三井記念美術館で開かれています(~9月2日まで)。

本展では、能楽シテ方五流派のひとつ、京都の金剛流宗家に代々伝わる伝来品に、近年蒐集された能面・能装束も加えて出品されます。なかでも豊臣秀吉が愛蔵したという「雪の小面」と、当館所蔵の「花の小面」(重要文化財)が一緒に展示され、雪と花の「小面」が時空を超えて再会するのが見ものです。

龍右衛門作「雪の小面」〔室町時代 金剛家蔵〕

本展の見どころを、三井記念美術館の学芸部長、清水実さんにうかがいました。

「金剛流は、中世に遡る大和猿楽四座の一つ「坂戸(さかど)金剛」に源を発する長い歴史がありますが、坂戸金剛家23世の金剛右京(氏慧・うじやす)が、跡継ぎがなく、伝家の能面54面を三井家の三井八郎右衛門(高公)に譲り、昭和11年に金剛宗家の絶家を遺言して没したといいます。しかし、能楽界の要請と推薦により、翌昭和12年に、京都で活躍していた「野村金剛家」から金剛巖(初世)を家元にたてることで金剛流が継承されました。現在は、金剛永謹氏が金剛流26世を名乗られています。

三井家に譲られた旧金剛家伝来の能面は、昭和59年に三井文庫に寄贈され、現在当館の所管となっています。このような金剛流とのかかわりから、今回、京都の金剛宗家に伝来する能面と能装束の展覧会を開催することとなりました。

龍右衛門作「小面(花の小面)」〔重要文化財 室町時代 三井記念美術館蔵〕

出品作品は能面58面、能装束27領、ほかに腰帯や扇など小道具が若干出品されます。金剛家の能面は、古くから野村家に伝わるもののほか、喜多家伝来のもの、金春家伝来のもの、大阪平瀬家伝来のものに大きく分かれるようです。今回出品の能面の3分の1ほどが、永謹氏の蒐集によるものということで、同氏の能面への思い入れの深さと、演能当事者の目から見た能面観がうかがえるまたとない展覧会といえます」

中世以来の幽玄の美の世界が広がります。ぜひ会場でご堪能ください。

【開催要項】
特別展 金剛宗家の能面と能装束
会期:2018年6月30日(土)~9月2日(日)会期中一部展示替えあり
会場:三井記念美術館
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
http://www.mitsui-museum.jp
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし7月16日、8月13日は開館)

取材・文/池田充枝

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