取材・文/池田充枝
スペインのマドリードにあるプラド美術館は、スペイン王室の収集品を核に1819年に開設された、世界屈指の美の殿堂です。収蔵品は約3万7500点を誇ります。
開館当時の17世紀のスペインは、ベラスケスはじめリベーラやムリーリョなどの大画家を輩出しました。彼らの芸術を育んだ重要な一因に、歴代スペイン王がみな、絵画を愛好し収集したことが挙げられます。
とくに国王フェリペ4世の庇護を受け、王室コレクションのティツィアーノやルーベンスの傑作群から触発を受けて大成した宮廷画家ベラスケスは、スペインにおいて絵画芸術が到達し得た究極の栄光を具現した存在です。
そんなベラスケスの傑作をはじめとするプラド美術館の名品を一気に鑑賞できる展覧会《プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光》が、東京・上野の国立西洋美術館で開かれています。(~2018年5月27日まで)
本展は西洋美術史上に燦然と輝くベラスケスの作品7点を軸に、ルーベンスほか17世紀絵画の傑作など61点を含む70点を紹介し、17世紀スペインの国際的アートシーンを再現します。
本展の見どころを、主催の読売新聞社文化事業部の山本文音さんにうかがいました。
「今回のプラド美術館展は、16-17世紀の絵画コレクションが中心です。17世紀のスペインは、国王フェリペ4世によって未曾有の規模で芸術の擁護と収集が進められ、名実ともに絵画の黄金時代をむかえていました。
このスペインの黄金時代の中心人物であり、西洋絵画史において最も重要な画家のひとりに数えられるのがディエゴ・ベラスケス(1599-1660)でした。本展ではベラスケスの作品7点が来日しますが、これは日本で観られるベラスケス作品では過去最多にして最高のセレクションです。
現存するベラスケスの作品は約120点と比較的少なく、プラド美術館はそのうちの約4割を所蔵していますが、国民的画家としての重要性から、まとまった数で貸し出される機会は限られています。今回は初来日の《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》を含め、国王の全身像の大作や、宮廷に入る前に描かれたとされる作品など、彼の表現の変化や革新性を確認し、堪能できるラインナップになっています。
ベラスケスのほかにも、スペインの黄金時代を彩った傑作ぞろい。歴代のスペイン国王に愛され、17世紀の画家の模範ともなった16世紀イタリアの画家ティツィアーノの《音楽にくつろぐヴィーナス》、ベラスケスに多大な影響を与えたフランドルの画家ルーベンスの絶筆とされる《アンドロメダを救うペルセウス》、ベラスケスと同時代のスペイン画家ムリーリョやスルバランの作品も並び、17世紀スペインの国際的なアートシーンが再現されます」
日本スペイン外交150周年を記念する大規模展。このチャンスをぜひお見逃しなく。
【開催要項】
『日本スペイン外交関係樹立150周年記念 プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光』
会期:2018年2月24日(土)~5月27日(日)
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分から17時30分まで、金・土曜日は20時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし3月26日、4月30日は開館)
展覧会特設サイト:http://prado2018.yomiuri.co.jp
美術館サイト:http://nmwa.go.jp
※本展は兵庫県立美術館に巡回されます(2018年6月13日~10月14日)。
取材・文/池田充枝