茶の湯の大成者である千利休の茶をいまに伝えている表千家、裏千家、武者小路千家の三千家。この三千家の家元と強く結びつき、茶道具類を作り続けてきた10の職家を「千家十職(せんけじゅっしょく)」と呼びます。

この呼称は大正12年(1923)5月に三越大阪店で開催された「千家十職茶器陳列会」のときに命名されたもの。その当時から現在に至るまで、茶の湯の精神を広める活動を続けている日本橋三越本店では、8月31日(水)から『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』と題し、三千家に代々伝わる「名品」や「代表作」、そして千家十職の名職家や美術館所蔵の茶道具を一堂に展覧します。

茶室画像(トリミング済)

利休の名が冠される茶道具には、利休が所持した・作った・作らせた・関わるものとされる「利休道具」と、利休が好んだ道具の寸法や形状であり、茶の湯の基本となった「利休形」に大別されます。

その両方を集めた今回の展覧会では、利休が愛玩したとされる樂家の長次郎作の『黒樂茶碗 銘禿』(樂家初代長次郎作、下写真)などの「利休道具」から、当代各職家の作品まで約250点を、「利休とその時代」「少庵・千家再興の時代」「元伯宗旦の時代」「江戸初期 茶の湯の広がり」「三千家の時代の始まり」「利休百年忌の時代」「千家の再興」「紀州家と表千家」「幕末・維新の時代」「千家と女性茶人の時代」「現代の家元と千家十職」と時代ごとに楽しむことができます。

『黒樂茶碗 銘禿』初代長次郎作

『黒樂茶碗 銘禿』初代長次郎作

会期初日の8月31日には、土田家当代の土田半四郎さん、奥村家当代の奥村吉兵衛さん、永樂家次代の永樂陽一さん、樂家次代の樂 篤人さん、そして本展の監修者である東京国立博物館名誉館員の林屋晴三さんによる特別対談も企画されています。(参加には招待券が必要です。詳細は後述)

茶の湯の精神を伝える“いま”に触れることができる本展覧会。8月31日(水)〜9月5日(月)には三千家によるお茶席や、千家十職当代の新作を披露する「千家十職 新作展 -伝承の美の世界-」(会場は日本橋三越本店の本館6階美術特選画廊・最終日は17時開場)も同時開催しています。ぜひ足を運んでみてください。

永樂家(土風炉・焼物師)
代々、土風炉を主に制作。十一代保全が1827年紀州藩主より金印「河濱支流」、銀印「永樂」を拝領し、以降、永樂姓を名乗り、広く茶陶も作り始めます。現在の当主は十七代目です。

001 永樂家(土風炉・焼物師)『金襴手葵御紋茶碗』十一代保全作

『金襴手葵御紋茶碗』十一代保全作

樂家(樂焼・茶碗師)
千利休の侘茶の創意を受け、手とへらだけで成形する手捏ねで樂茶碗を焼いた長次郎が始祖です。歴代がそれぞれの個性を発揮し、茶碗を中心に、水指や花入など茶陶を制作しています。現在の当主は十五代目です。

002 樂家(楽焼・茶碗師)『黒樂茶碗 万代屋黒』初代長次郎作

『黒樂茶碗 銘万代屋黒』初代長次郎作

大西家(釜師)
江戸初期、初代浄林から現在の十六代清右衛門まで三条釜座にて制作を続けています。二代浄清は徳川三代を祀る梵鐘なども作り、千家においては宗旦の釜を作りました。大名の茶や侘び茶に向く釜を作り続けています。

『鶴ノ釜』二代浄清作

『鶴ノ釜』二代浄清作

飛来家(一閑張細工師)
樂家に次いで千家に出入りを始めた職家。千宗旦が自身の侘びの茶風にふさわしいとして、初代一閑に茶器などを作らせたのが始まり。棗や香合などの一閑張細工師である現当主は十六代目です。

004 飛来家(一閑張細工師)『菊香合』初代一閑作

『菊香合』初代一閑作

土田家(袋師)
土田家は代々仕服、服紗を始め、裂・糸に関わる茶道具の調製が中心で、初代土田半平が表千家七代家元から「友湖」の号を賜りました。現在の当主は十三代目です。

005 土田家(袋師)『即中斎好 ウロコ鶴間道仕覆』十二代友湖作

『ウロコ鶴間道仕服』 即中斎好 十二代友湖作

中村家(塗師)
棗などの茶器や茶事で使う椀家具などを制作する中村家。利休が好まれた形と寸法を不易の型として復元制作し、歴代宗匠方の新趣向の作品は好み物として制作しています。現在の当主は十三代目です。

006 中村家(塗師)『藤村庸軒好 凡鳥棗』初代宗哲作

『凡鳥棗 藤村庸軒好』初代宗哲作

黒田家(竹細工・柄杓師)
柄杓をはじめ竹製の茶道具を制作している黒田家。小堀遠州、徳川将軍家などの柄杓師として御用を務め、三代正玄より千家へ出入りし、花入や香合なども手がけています。現在の当主は十四代目です。

007 黒田家(竹細工・柄杓師)『竹一重切花入 銘帰雁』初代正玄作

『竹一重切花入 銘帰雁』初代正玄作

奥村家(表具師)
利休の時代から床の間に掛ける軸は、茶道具のなかでも重要なものと考えられていました。家元らの揮毫の軸装や風炉先屏風、釜の敷物の一種である「紙釜敷」の制作などを行ないます。現在の当主は十三代目です。

008 奥村家(表具師)『三千家三幅対』五代吉兵衛、七代吉兵衛

『三千家三幅対』土佐光孚画

駒澤家(指物師)
棚や水指など美しい木地を活かした道具を制作している駒澤家。表千家六代覚々斎から利斎の名を与えられ、多くの好み物を作り続けてきました。現在は十四代の甥の子息が後を継ぐべく修行を積んでいます。

009 駒澤家(指物師)『了々斎好 八角桐木地蒔絵菓子器』八代利斎作

『八角桐木地菊絵菓子器 了々斎好』八代利斎作

中川家(金物師)
北野大茶会に際して利休から依頼されて制作した「利休薬罐」の作者が初代紹益。二代より浄益の名で、花入や建水など千家家元の好みの道具を制作してきましたが、十一代が逝去されてから、当代は空席です。

010 中川家(金物師)『青磁塁座三足二見香炉 二見ヶ浦夫婦岩南鐐火屋』九代淨益作

『青磁塁座三足平香炉(青磁二見香炉) 穂家・銀製二見ヶ浦夫婦岩』九代淨益作

『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』
■会期/8月31日(水)~9月12日(月)
■時間/10時30分~19時(閉場は19時30分)※最終日は16時まで(閉場は16時30分)
■会場/日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
■入場料/一般・大学生800円、高校生・中学生600円(小学生以下無料)
■主催/茶の湯の継承千家十職の軌跡展実行委員会、日本橋三越本店
■共催/読売新聞社
■特別協力/表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵
■監修/林屋晴三(東京国立博物館名誉会員)
■お問い合わせ:03-3241-3311(大代表)

特別対談企画「千家十職の温故知新 ~千家十職の未来を担う若手職家~」
■日時/8月31日(水)開場13時30分、開演14時(終演予定は15時)
■会場/日本橋三越本店 本館6階 三越劇場
■登壇者/土田家当代・土田半四郎、奥村家当代・奥村吉兵衛、永楽家次代・永樂陽一、樂家次代・樂 篤人、東京国立博物館名誉館員・林屋晴三
※参加には招待券が必要です。参加ご希望の方は、serai■shogakukan.co.jp(■は@に変更してください)に、タイトルを「千家十職招待券希望」として、お名前、電話(日中に連絡可能な連絡先)、メールアドレスを明記して送ってください。締め切りは8月28日(日)20時までです。
応募は締め切りました。多数のご応募ありがとうございました。(なお応募者多数のため抽選とさせていただき、当選された方々には個別に連絡をさせていただきました。選にもれてしまいました方におかれましては、ご希望に沿えない状況となり、申し訳ございません。)

「三千家によるお茶席」
■表千家不審菴:8月31日(水)、9月1日(木)
■裏千家今日庵:9月2日(金)、3日(土)
■武者小路千家官休庵:9月4日(日)、5日(月)
※各日ともに11時~16時。会場は本館7階催物会場。お茶券代1001円(和菓子付)

 

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