「英国で始まり」とは、濱田庄司(1894~1978)が自身の半生を回顧した有名な言葉「私の陶器の仕事は、京都で道を見つけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った」の一節です。

濱田は今から100年前の1920年、バーナード・リーチ(1887~1979)とともにイギリスに渡り、南西部のコーンウォール州にある港町セントアイヴスに東洋風の登り窯を築きました。そこから、イギリス近代陶芸の礎となったリーチ派の作家が生まれます。

濱田とリーチがセントアイヴスで陶芸を始めたことの意義を問う展覧会が開かれています。 (11月8日まで)

セントアイヴス・ヘッド 撮影:アルバン・ロイナルド Photo:St Ives Head By Alban Roinard

本展は、イギリスと益子、二つの地で切り開かれた陶芸を同時に見せる初めての展覧会。現代イギリスを代表する作家から、益子の礎を築いた作家まで、60名による作品約170点が一堂に会します。

マイケル・カーデュー《鷺文楕円皿》 1928年
アベリストゥイス大学美術館蔵
 Ceramics Collection, School of Art Museum and Galleries, Aberystwyth University

本展の見どころを、益子陶芸美術館の学芸員、松﨑裕子さんにうかがいました。

「濱田庄司は1923年にロンドンで初個展を開き、陶芸家としてデビューしました。濱田の陶芸表現は高く評価され、セントアイヴスで制作した作品はほぼ完売したといわれています。今回の展覧会では、日本で目にする機会が少ない濱田の稀少な初個展出品作品や同時期の作品を紹介しています。

濱田庄司《鉄絵壺》 1922年頃 益子陶芸美術館蔵

イギリス陶芸では、リーチの最初の弟子マイケル・カーデュー(1901〜1983)による英国伝統のスリップウェア、日本でも愛好家の多いルーシー・リー(1902〜1995)やハンス・コパー(1919〜1981)、そして彼らに学んだ世代による多種多様なうつわの表現に焦点を当てています。

ハンス・コパー《ポット(ティッスル・フォーム)》 1975年 兵庫陶芸美術館蔵

一方、濱田が帰国後に作陶拠点とした栃木県益子では、濱田に直接師事した『濱田派』の作家たちをはじめ、木村一郎(1915〜1978)や加守田章二(1933〜1983)らによる力強くモダンな造形の作風が次々に生まれました。民藝陶器・益子焼というイメージだけでは語れない、益子の個人陶芸の多彩な表現をお楽しみください」

加守田章二《曲線彫文鉢》 1970年 桝澤コレクション

英国・セントアイヴスで生まれた温もりのあるうつわたちをご鑑賞ください。

【開催要項】
英国で始まり 濱田・リーチ 二つの道  
会期:2020年6月28日(日)~11月8日(日)
会場:益子陶芸美術館/陶芸メッセ・益子
住所:栃木県芳賀郡益子町益子3021
電話番号:0285・72・7555
http://www.mashiko-museum.jp
開館時間:9時30分から17時まで、11月からは16時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(祝休日の場合は開館し翌日休館)※益子陶器市期間は無休・翌日休館
料金:HP参照
アクセス:HP参照

取材・文/池田充枝

 

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