『ZOKKON 命-LOVE-』(シブがき隊)、『バンビーナ』(布袋寅泰)、『CHA-LA HEAD-CHA-LA』(アニメ『ドラゴンボールZ』主題歌)など、軽妙かつ諧謔、そしてどこかエロティックな作詞で知られる森雪之丞さん。キャリア48年目を迎え、手がけた楽曲は2700曲を超えている。「今年、70代に突入し、自分に喝を入れるためにも、初の自選詩集『感情の配線』を作りました」という森さんに、作詞以外の表現について伺った。

1954年1月14日、東京都生まれ。作詞家、詩人、劇作家。73年、大学在学中から音楽活動を始める。伝説的プログレッシブ・ロックバンド『四人囃子』のゲスト・シンガーとして参画。76年に作詞・作曲家としてデビューし、アイドルポップス、アニメソングなど多くのヒット曲を手がける。90年代以降は布袋寅泰、氷室京介ほか、ロック・アーティストに詞を提供。48年のキャリアで手がけた楽曲は2700曲を超える。作詞と並行し、ポエトリー・リーディング・ライヴ『眠れぬ森の雪之丞』の主催や、ロックオペラ『サイケデリック・ペイン』では脚本を手がける。24年1月、初の自選詩集「感情の配線」を刊行。

「違和感」を仕込んだものに心惹かれる

――前回で「森雪之丞」というペンネームが、デヴィッド・ボウイの初来日コンサートのパフォーマンスに由来していることを紹介した。「雪之丞、ってパフォーマーの名前であって、クリエイターの名前ではないですよね」という森さんは、もともとパフォーマー志望だった。
1980年代は、劇的舞踏バンド“マイティ・オペラ”を結成し、ヴォーカルとダンスのパフォーマンスを披露。1993年にファッションブランド「ヨウジヤマモト」のパリコレクションにモデルとして出演する。
このインタビュー当日も、ヨウジヤマモトの服を着こなし、ロック・アーティストからも支持されるジュエリーブランド・クロムハーツのペンダントトップをコーディネートしていた。60年代ロンドンを思わせるスタイリングは、森さんの静かな佇まいにとてもよく似合っていた。

ファッションは昔から好きですが、「どこか外している」デザインを選んでいます。服の形、シルエットの美しさを極めながら、違和感があるものに惹かれてしまう。

山本耀司(ヨウジヤマモトのデザイナー)さんの服がまさにそうで、服としてはもちろん、袖を通した後も美しい。しかし、その服を着て動き出すと、ポケットの位置が違ったり、アシンメトリーだったりと、どこかに違和感があることに気付く。そこに心惹かれてしまうのです。

「違和感を仕込んだものに惹かれる」というのは、僕自身がそうだからかもしれませんね。歌詞になったときに、歪みや違和感をあえてつける。それを面白いと思ってくださる方に、伝わっているんだろうと思っています。

おしゃれは大切です。やはり、老いを抜く力があると実感しています。どこまで似合うか・似合わないかは自分ではわかりませんが、頑張ってみる。ファッションは気持ちと、その人の在り方を変えるすごい力があると思います。

――森さんの同世代のミュージシャンで、ファッショニスタとして知られていたのは、2023年に亡くなった高橋幸宏さん。森さんは高橋さんの誘いを受け、1989年に再結成した「サディスティック・ミカ・バンド」の作詞を担当する。
リーダーは加藤和彦さん、ヴォーカルに桐島かれんさん、ギターは高中正義さん、ドラムに高橋幸宏さんほか、有名ミュージシャンが結集し、現在も伝説のバンドとして音楽史に残る。森さんは1988年の後半数か月を、バンドメンバーとともにスタジオで過ごす。

作詞家は、可能な限りアーティストと同じ時間と場所を共有し、メンバーのような存在であるべきだと考えています。キング・クリムゾン(ロックバンド)で「詩&イルミネーション」とクレジットされていたピート・シンフィールドや、エルトン・ジョンの相棒バーニー・トーピンのように在りたいという思いもありました。

加えて、作詞家の場合、自分の中に言葉があっても、アーティストと出会わないと、歌にはできないのです。

【作詞家・森雪之丞が、アーティスト・布袋寅泰に託したものとは……次のページに続きます】

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