マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、目標ときちんと向き合えず、流したり諦めたりしている部下へのマネジメントについて考察します。
4月から新たな期を迎え、6月で四半期の最終月を迎える会社も多いのではないでしょうか。最後の1か月、気を付けたいのが部下の目標に対する「流し」と「諦め」です。
今はマネジメント層の皆様も、部下時代に思い当たる経験があるのではないでしょうか。「大幅達成しているから後1か月は適当に流すか」「もう達成は無理だから諦めよう」……。こういった思考のメンバーをいかにして、「今」に集中させ、パフォーマンスを最大化させるか、押さえるべきポイントについて解説します。
そもそも部下が「流したり」「諦めたり」するメカニズム
原因を一言でいうと「今」に集中していないからです。流すということは、例えば、未来(数か月先)の査定が安泰だから、今(今週の結果)はどうでもいいという思考です。諦めることも同様です、未来の査定が厳しそうだから、今動いても仕方がないという要領です。
ある意味で正しいのですが、これは上司の管理が効いていない裏返しでもあります。
筆者の属する「識学」では、目の前の「結果」に集中しておらず、未来の「成果」に視点がおかれている、このような状態を「成果視点」と表現します。今の自分のやるべき事ではなく、未来の他者からの評価に目線が置かれている状態です。
成果視点の弊害
成果視点の状態が慢性的に続くと人は集中力を失い、結果的にパフォーマンスの低下に繋がります。皆様も追うべき目標が曖昧だったり、目標のスパンが長すぎると日々の動きがなんだかボンヤリして行動に移せない感覚はお分かりになると思います。例えば、「3年後までに英語がネイティブのように話せるようになる」といった目標がなかなか実現しづらいのは、想像に難くないでしょう。
こうした状態では、仮に個人目標達成が見えていたとしても、チーム全体のパフォーマンスが下がっている事は明白です。言い換えるとマネジメント側は常にメンバーの最大パフォーマンスを引き出すために、「今」の目の前の結果に集中させる必要があるということです。
では、どうすれば人は目の前のことに集中できるのでしょうか。
求める「結果」を定義する
まずは求める結果を定義することからです。一見当たり前の事ですが、これがなされていないケースがとても多いのです。多くの会社で営業職については結果設定が数値でなされていますが、他の職種(例えば、事務系や企画系)はどうでしょうか。この求める結果が定義されていないと、人は「成果視点」に陥ります。何が求められているか不明なので、上司の顔色を気にしたり、頑張ってますアピールが始まってしまいます。こういった現象を部下のせいにしてしまいがちですが、これは上司のマネジメントに原因があります。
求められる結果設定のポイントは「〇〇」と「〇〇」の明確化
では、求められる結果を明確にするにはどうすれば良いでしょうか?
結論は、仕事の「期限」と「状態」の明確化です。
例えば、営業職の例で言うと、6月の月末までという「期限」に、200万円の契約が取れている「状態」です。
営業職以外はなかなか出来ないんじゃない? という声が聞こえてきそうですが、心配ご無用です。例えば、事務系の例でいうと、今日の18時までの「期限」でAというタスクについて上長の承認を得ている「状態」や、B案件の見積もりを3社に送付出来ている「状態」等です。
識学ではこの「期限」と「状態」がセットになっている状態を「完全結果」と名付けています。あらゆる仕事や役割は完全結果で設定することが出来、完全結果にすることで人によって解釈がずれない指示や結果設定が可能です。まずは求める結果が明確になっているか是非上司側の皆様は、セルフチェックしていただきたいです。
毎週の結果と行動を明確化する
求める結果が明確になった上で、次にやるべきはその「管理」です。先の「流し」や「諦め」が起こりやすいのは、この管理がないケースが大半です。
四半期や月間の結果が「完全結果」で設定されたとしても、そのまま放置であれば部下はどんな思考に陥るでしょうか。部下は今週のやるべき結果は自分で決められると錯覚し、進捗が良い場合は「流して」、進捗が悪い場合は「諦めて」しまうのです。
繰り返しですが、やるべき事は「管理」。部下のレベルにもよりますが、推奨は「最低週1回の管理=会議」です。設定された結果(目標)に対する、現状、目標との差分、(未達成の場合)原因、改善策、来週の結果(目標)を毎週部下から上司に報告させるサイクルを作ります。毎週のやるべき事を強制的に考え、報告の機会を作ることで、構造的に流しや諦めが出来ない環境を上司は設定する必要があるのです。
上記の管理サイクルが定着すると、「流し」や「諦め」はなくなってくるでしょう。ただ、それと実際に達成できるかは別問題です。諦めず動いているがなかなか達成出来ない部下に対する対処法を最後にお伝えします。
やり方に介入する弊害
まずは避けたいマネジメントからです。例えば、先の6月の目標が200万のメンバーの例で考えてみましょう。毎週考えて動いているがなかなか思ったように成約に至らない。こういったケースでやってしまいがちなマネジメントが、いわゆる「アドバイス」です。ポジティブな意味で使われがちなこのアドバイスですが、大きな弊害があります。
「自分ならこうするよ」「もっとこうやってみたら?」……こんなアドバイスを私自身も前職で繰り返していました。識学の理論でこの状態を「経過への介入」と呼びます。こういったマネジメントが慢性的に続くとどんな弊害が起こるでしょうか。
典型的なものは考えない部下を生んでしまうこと、そして出来ない理由を上司の責任にしてしまうことです。良かれと思って上司は経過への介入をしていますが、それが部下の成長を阻害しているのです。
「背伸びすれば出来る」小さな結果を設定する
では、どうすべきか。結論は結果を「分解」し設定することです。世間一般で言われるKPI(重要業績評価指標)マネジメントと近い概念で捉えていただければスムーズかと思います。最終的な結果を分解し、背伸びすれば手が届く結果をもう一つ見極め設定する。これを識学では「結果点を下げる」と表現します。
文字通り最終的な結果を一つブレイクダウンしてちょうどいい結果を設定するという意味です。
営業で言うと最終的な「成約額」という結果を、「提案数」や「商談件数」に分解するイメージでしょうか。最初は小さな結果設定で問題ありません。毎週一つずつクリアし最終的には、自力で目標達成まで到達させる要領です。
そしてその設定した結果点の達成方法(=経過)に上司は介入してはなりません。
まとめ
・結果を完全結果で明確化
・毎週結果の管理を行う
・経過に介入せずに、結果点を下げる(KPIマネジメント)
これらを構造的にマネジメント側が設定する事で、流しや諦めはなくなるはずです。部下を「今」に集中させることで、部下もチームもマネージャー自身も良い評価を受ける、そんな好循環を作るためのヒントにしていただければと思います。
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