リーダーシップにはさまざまなスタイルがあります。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、リーダーシップの定義とともに、新しいマネジメントについて知見を得ましょう。
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リーダーといえばチームを率いる重要な存在ですが、そのなかにもさまざまなタイプがあり、「サーバントリーダー」と呼ばれる支援中心のスタイルを好むリーダーがいます。
ただ、変化の激しい現代社会においては「サーバントリーダーシップは時代遅れ」という声も聞こえてきます。
今回は、サーバントリーダーシップの定義を振り返りながら、新時代における新しいマネジメント方法を考察していきたいと思います。
サーバントリーダーシップの定義とマネジメント手法の特徴
サーバントリーダーシップは、「支援型リーダーシップ」とも呼ばれ、メンバーの成長を最優先でサポートするマネジメントスタイルのことを指します。
まず、サーバントリーダーシップの定義や特徴から詳しく見ていきましょう。
サーバントリーダーシップの定義は「支援型リーダーシップ」
「サーバントリーダーシップ」とは、リーダーがチームメンバーを支援することに重点を置いたマネジメントスタイルのことです。
「サーバントリーダーシップ」は、アメリカのマネジメントの権威であり教育コンサルタントでもあるロバート・K・グリーンリーフによって1970年代に提唱されました。
サーバント(servant)は「召使い」や「従者」を意味する言葉です。したがって、サーバントリーダーシップは、リーダーがチームメンバーのために奉仕することを主眼に置いています。
参考までに、サーバントリーダーシップと、対極となるトップダウン型マネジメントとを比較してみました。
【サーバントリーダーシップとトップダウンマネジメントとの比較】
ちなみに、資生堂の社長だった池田守男氏もサーバントリーダーシップを推奨した人として有名です。
サーバントリーダーの特徴
サーバントリーダーは、メンバーのニーズに耳を傾け、彼らの成長をサポートすることに重点を置きます。
具体的には、次のような特徴があります。
・聞き手に徹する…サーバントリーダーはメンバーの意見を積極的に聞き、理解しようとする。1on1ミーティングだけではなくテーマを設けたグループディスカッションなども頻繁に行う
・メンバーの自主性を促進する…メンバー自身が自らの判断で行動し、問題解決ができるように支援する
・権限移譲…メンバーに権限を委譲し信頼する。プロジェクトの決定権をメンバーに与え、自己決定できる場面を増やす
サーバントリーダーシップが時代遅れと言われる5つの理由
「メンバーの主体性を重んじる」「支援に徹する」と聞くと、とても優秀なリーダー像に見えますが、「時代遅れ」という意見もあります。
サーバントリーダーシップが時代遅れと言われるのには、「成果を重視しないこと」「意思決定の遅れ」など、さまざまな理由があります。
以下で、ひとつずつ見ていきましょう。
1.成果を重視しなくなる
「サーバントリーダーシップが時代遅れ」と言われるもっとも大きな理由として、「成果を重視しなくなる」点があげられます。成果よりもプロセスを評価し過ぎてしまい、目標達成を重視しなくなるのです。
具体的には、次のようなことが起こる可能性があります。
・目標未達…「営業担当は毎日必死で頑張っている」「担当の顧客に寄り添う気持ちを尊重する」など、目標達成よりもプロセスを重視し過ぎてしまい、目標未達に終わってしまう
・納期や開発に遅れが出る…例えば、研究部門においてメンバーの創造性を重視するがあまり、新製品の開発や市場への投入が遅れる
・利益に直結しない顧客満足の向上…カスタマーサポートなどにおいて「顧客に寄り添う行動」を支援し過ぎてしまい、サポート費用ばかり発生し利益を圧迫する
サーバントリーダーシップを尊重したいなら、「組織管理者に求められる成果はなにか」を第一に考え、バランスよくマネジメントしていくことが大切です。
2.意思決定が遅れる
従業員の主体性を重んじるあまり、意思決定プロセスが遅延する可能性もあります。
例えば、緊急時の対応が遅れるのは、サーバントリーダーシップを重視し過ぎて失敗する顕著な例です。ほかにも、次のような結果をもたらすことがあります。
・商品の市場投入が遅れる…商品の特徴やデザインなどについてメンバーの意見を平等に取り入れようとするがあまり、新商品の市場投入が遅れる
・クレーム対応が遅れる…突発的な品質クレームなどが発生したときに、メンバーひとり一人の意見を尊重し過ぎてしまい対応が遅れる
・戦略を誤る…新事業戦略などを考える場面で、メンバー全員の主体性を重んじてしまい経営目線とは外れた意思決定をしてしまう
変化が激しいビジネス環境においては、従業員の意見を尊重しつつも、必要に応じて迅速かつ決断力を持って行動するバランス感が重要です。
3.リーダーの権威性が薄れる
メンバーへの過度なサポートは、リーダーの権威と指導力を弱めるケースがあります。リーダーが常にサポート役に徹することで、決断力や指導力が疑われる状況が生じるかもしれません。
サーバントリーダーは「指示をしてはいけない」ということはありません。緊急性が重視されるような場面では、権威性をもった指示が必要です。
4.評価が難しい
サーバントリーダーシップは、プロセス評価を重視するケースが多いため、業績評価時に判断が難しくなることがあります。
「精一杯頑張ったから」「アイデアをたくさん出してくれたから」などのプロセスだけを評価してしまい、組織内での不平等を生じさせたり、メンバーの主体性を奪ってしまうこともあります。
5.大きな組織では運用が難しいケースが多い
サーバントリーダーシップは小さな組織では機能するかもしれませんが、大規模な組織では不向きなケースがあります。
大企業においては、多様な部門やチーム間での調整が必要となるため、サーバントリーダーシップはスピード感に欠けるため、非効率です。
新時代のサーバントリーダーシップ|主体性を尊重するマネジメント方法
先述したように、サーバントリーダーシップは運用方法によってはデメリットも多く、組織の大きさや職種によっては不向きな場合があります。
新時代のマネジメントにおいて、サーバントリーダーシップの良い点を活かすには、次の4つのポイントを忘れないようにしましょう。
1.部下の特性やパフォーマンスに応じて柔軟に対応する
2.リスクや求められるスピード感によって臨機応変に管理する
3.成果重視を徹底し、メンバー自身に主体性を持ってもらう
4.誠実さと公平性を忘れない
部下の特性やパフォーマンスに応じて柔軟に対応する
すべての部下に対し、支援型マネジメントが適切であるとは限りません。自立したメンバーには自由度を与え、サポートが必要なメンバーには積極的な支援が必要です。
例えば、経験豊富なメンバーには新しいプロジェクトにおいてイニシアティブを与え、一方で新入社員や未経験者に対しては、より詳細な指導や支援をするといいでしょう。
リスクや求められるスピード感によって臨機応変に管理する
リスク対応や迅速な意思決定が必要な場合、支援型ではなく「支配型」のアプローチが適切な場合があります。
緊急で結果をださなければいけないプロジェクトや危機管理の際には、迅速な決断と行動が求められます。また、突発的な市場の変動や競合他社の動きには、リーダーが即座に判断しチームメンバーに的確な指示を出しましょう。
成果重視を徹底しメンバー自身に主体性を持ってもらう
サーバントリーダーシップはプロセスを重視しますが、決して「目標未達でもよい」というわけではありません。メンバーには主体性を持たせつつも、目標達成などの主要KPIは必ず達成するようにマネジメントしましょう。
目標達成を厳しく求めることで、メンバーが「達成までに何をすべきか」を真剣に考えるようになり、メンバー自身の成長にもつながります。
誠実さと公平性を忘れない
支援型でも支配型でも、リーダーとしての誠実さと公平性は重要です。
例えば、メンバーのレベルに応じて目標を調整するのは、公平なマネジメントとはいえません。スキルが低いメンバーの目標を下げると、メンバーは自己成長の可能性を失い「これで大丈夫なんだ」と間違った自己判断を下してしまいます。
リーダーは支配型・支援型にかかわらず、メンバーには誠実に向き合いましょう。メンバーの成果は適切なタイミングでフィードバックし、必要な支援を積極的に行うことが大切です。
まとめ
サーバントリーダーシップは、決して時代遅れの概念ではなく、現代の組織運営においても重要な役割を果たします。組織の特性や職種などによって、従来のマネジメント方法と融合させながらサーバントリーダーシップを発揮する方法がおすすめです。
成果重視のマネジメントと、サポート型のアプローチをバランス良く組み合わせることで、組織の目標達成に貢献できるようマネジメントしていきましょう。
【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
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