サルは極めて人間に近い霊長類である。だが、そんなサルの中でもゴリラには人間社会にも通じる学びがあるという。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」で、ゴリラに学ぶこととは何なのか?その秘密を知ろう。

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「サル化する人間社会」に求められる真のリーダーシップとは

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唐突ではありますが、人間は「社会生活を営む霊長類」です。
同様に、サルとゴリラも社会生活を営む霊長類なのですが、実は両者の「社会」はかなり様相が違います。

現代の人間社会は「サル化」しているといいます。
そんな時代に求められるマネジメント術とはどのようなものでしょう。

サル化する人間社会

現在の京都大学総長である山極寿一氏は、ゴリラ研究の第一人者です。
アフリカの森で26年ぶりに再開した野生のゴリラが自分のことを覚えていたことなど、いくつもの興味深い話が著書に綴られています。

ゲノム的には、サルよりもゴリラの方がヒトに近いのだといいます。
そして山極氏が指摘するのは、人間社会はゴリラではなく「サル化」しているということです。

山極氏によれば、「勝ち負け」のないのがゴリラ社会であり、一方で「優劣重視」なのがサル社会です。

特にサル社会の特徴は上下関係がはっきりと確立されていることです。人間社会がこれに近づいているのは、「優劣を反映させることで無駄な戦いを生まず、未然にトラブルを防ぐ」という合理主義が進んだ結果だといいます。

そんなサル社会では、サルのオス同士が鉢合わせた時、劣位にあるサルは初めから負けを認め、優位のサルに対して「媚びる」態度を取るのだといいます。

口を開けて歯茎を出し、敵意がないことを示す表情を浮かべるのです。グリメイスといって、見た目は人間の笑いに似ています。人間でいうところの「愛想笑い」のようなものかもしれません。強い相手に睨まれたらすぐさま白旗を揚げ、自分の負けだからあとは関わらないでください、といった感じでしょうか。

なんだか、「叱られたくない若者」の姿に重なります。

常に自分と相手のどちらが強いか弱いかをはっきり認知していて、弱い方は戦わずして退くのです。確かに、無駄な戦いをしないという意味では、劣位のサルが命を守るのにも、群れの秩序を守るのにも合理的ではあるでしょう。

また他のサルも、他人(サル)同士の優劣を知っています。誰が誰より優位で、そうでないかというのが群れの中で共有されているのです。

すると、時々こんなことがあるといいます。

真ん中のサルが一番弱い。餌に手を出そうとしたら、目の前に自分より強いサルがやってきたため、餌に手を出せない。でも、ふと右手を見ると、目の前のサルよりも強いサルがやってくるから助けを求めます。そうすると、右の一番強いサルにとって、目の前で自分より弱いサルが強そうな態度を示していたら、自分の社会的地位が脅かされるので、それを追いかけます。そうすると、結果的に一番弱い真ん中のサルが餌をせしめることができるというわけです。これがサル知恵なのです。

引用:財務省職員セミナー「サル化する人間社会」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201709/201709o.html

会社に一人や二人はこういう人がいるなあ、いたなあ、と思わせるリアリティがあります。

しかし企業の場合、このように「自分の利益のためだけに階級組織を利用する」人間が出てくると組織はすぐに歪んでしまいます。
サル知恵が結集すると、極端な話「クーデター」にもなりかねません。

また、「媚びて衝突を避ける」ことが目的化してしまいます。
組織の中で「媚びる」ことが最優先事項になってしまっては、まともなビジネスはできないのはもちろんのこと、自分でものを考え、解決する力は芽生えません。

ゴリラ社会と松下幸之助のリーダー論

一方でゴリラの社会には序列がないどころか、そもそも「負け」という概念が存在しないといいます。

サルは餌を手に入れるとすぐにあちこちに散ってしまい、他のサルと目を合わせることなく各々の場所で単独で食事をします。

一方、ゴリラは群れの中で、顔を向き合わせて食事をします。「奪い合う」「奪い合いに勝つ、負ける」という概念がないのです。また、体の大きなオスは目の前の餌を独占しようと思えばできますが、メスや子供達が群がってくると少しずつ引きちぎって落とすことで「分け与え」、そして一緒に対面して食事をするといいます。分け前をもらったゴリラも、それを握りしめて去っていくということがありません。

メスたちはサルのグリメイスのような行動で餌を持っているオスに媚びるということもなく、リーダーは、それが自分の役割だとわかっているため、そこに優劣は存在しません。
サルよりも「家族」の色が濃いのだといいます。確かに、人間家族でも、父親の収入で母親や子供が食べ物を買うのを許さないということは基本的にはないでしょう。

そして山極氏は、自分が研究対象としてきたゴリラ社会に、松下幸之助氏のリーダー論が重なったといいます。

松下幸之助さんが生前に若い社員を面接した時に、こいつは将来リーダーになるなと思った条件が3つあるそうです。一つは「愛嬌がある」ことと「運が良さそうに見える」こと。そして最後は「背中で語れること」だそうです。この3つとも言葉は要りません。すべてゴリラに当てはまるのです。

引用:財務省職員セミナー「サル化する人間社会」https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201709/201709o.html

ここには大きな示唆があります。

まず「運が良さそうに見える」ということについてです。
若い社員、新入社員からすれば、マネジメントは最初から「マネジメント」「リーダー」です。上下関係が最初にあるのですから、その人の過去は知りようもありませんし、知ったところで彼らの役には立ちません。

「運が良さそうに見える」要素の大切さはここにあります。ゴリラで言えば、この人は良い餌のありかを知っていそうだという雰囲気を出すことが、メスや子どもにとって魅力に映り「ついていこう」と感じさせるのだといいます。

自分のことをすごいと思わせるために、俺は社長と仲良しなんだぜ、と見せたくてに誰かに「媚びる」などということはありえません。

また、「愛嬌」の重要性です。

ゴリラ社会に序列はなく、子どももメスも、オスがその期待に応えてくれなければ猛然と抗議するので、パワーだけでなく優しさや愛嬌が必要とされるのです。子どもと一緒に遊べる愛嬌があることもまた、群れをまとめて率いるための重要な要素になっています。

アイデンティティの持ち方

そして「背中で語る」ことは最も重要かもしれません。なんだかダンディズム論のようですがそうではなく、マネジメントのアイデンティティーのあり方として必要なのです。

優劣重視のサル社会と勝ち負けの概念を持たないゴリラ社会では、ボス、あるいはリーダーの自己の確立の方法が違っているように思います。

サルの場合、自分の「地位」にアイデンティティーを持っています。よって、自分の地位を脅かそうとするサルがいると排除することで自分の地位を保とうとします。自分の「地位」がアイデンティティーとも言えるでしょう。

一方でゴリラの場合、群れの中のメスや子どもとの関係や自分の役割にアイデンティティーを持っています。

本来、社会の中での自己の確立とは、後者のようなものではないでしょうか。

戦わずして、あるいは暴力的な方法で排除、排斥するのはある意味簡単で合理的でしょう。しかしそれを繰り返すと、組織は閉塞していってしまいます。
実際、組織の中にそういう人は一定割合で存在しますが、それを良しとすると、新しいものは生まれなくなってしまいます。

また山極氏は、リーダーは「誰とも平等に距離を置く」ことが大切なのだといいます。特定の誰かの味方になってしまうと、味方の敵は自分の敵にもなってしまいます。すると、色眼鏡を通した景色しか見えなくなってしまい「本質」がわからなくなってしまうのです。

なお、喧嘩が起きた時、ゴリラはこう対処するのだといいます。

「ゴリラの喧嘩の仲裁は、非常に平和的です。というのも、第三者はどちらにも味方しないのです。
ニホンザルで喧嘩が起こった時は、どちらか一方に加勢して争いを止めようとする動きが起こります。たいていの場合、優位なサルに大勢が味方して、喧嘩を終わらせるのです。
しかし、ゴリラはそういった態度をとりません。子どもやメス同士の喧嘩では、大人のオスが介入して攻撃された方に加勢することが多いのですが、あえてどちらにも加勢せず、喧嘩をしている二頭の間に体を割り込ませてただうつぶせになる、という行動も見られます。
(中略)ゴリラの喧嘩は、どちらかが勝ってどちらかが負ける、という決着を見ません。そんなことになる前に、第三者が仲裁に入る。誰も負けず、誰も勝たない。互いに対等なところで決着がつくのです」

引用:「『サル化』する人間社会」p55~56

誰かの味方をするような言動よりも、「背中で語れ」というのはこういうことです。また、「勝ち負けのない喧嘩」は、生産的なものではないでしょうか。
利害関係を持つ関係者全てから等距離の場所に自分を置いてみるのです。

実はこの状況は孤独です。しかし、そうしないと物事を正しく見ることはできません。

なお、ゴリラのリーダーは群れを率いる時、基本的に「後ろを振り返る」ことはしないそうです。極度に体の弱い子供がいるときは様子を見ますが、「ちゃんと付いてきているか」を背中で察知し、自分の歩幅が「後ろが付いてこられないペースになっているな」と察した時にようやく後ろを振り返るのだといいます。

部下からすると、この方が心地よい場合もあります。
10歩ごとに振り返られてしまってはなんだか監視されているようで、「だるまさんが転んだ」ゲームのようにぎこちなくなってしまいます。「口うるさい」と思われてしまうでしょう。

自分の後ろを本人の歩幅で進ませ、メンバーの体格差を考えてばらつきそうになったところで振り返って一呼吸おく。
歩幅の違う人間をまとめるには、このような技術も必要になってきます。

そして「孤独」との向き合い方も、マネジメントが学ぶべきものの一つでしょう。
「誰とも一定の距離感を持つ」上司は、信頼されやすいものです。

このようなゴリラの美徳から学ぶべきことは、私たち人間社会のリーダーにも、とても多いのではないでしょうか。

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いかがだっただろうか。ゴリラについての認識が新たになったのではないだろうか。ヒトとして、ゴリラに学ぶべきことを真摯に受け取りたいものだ。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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