「キャリアマネジメント」という言葉をご存じでしょうか。人生の中で役立つと言われている「キャリアマネジメント」。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、「キャリアマネジメント」について知見を得ましょう。
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人生を80年と仮定すると、会社の中で働く組織人として送る年数は40年以上。半分以上の期間を占めます。そんな長い人生のなかで役立つとされているのが「キャリアマネジメント」です。
キャリアマネジメントとは「将来のキャリアを見据えて仕事を実施すること」をいいます。
昨今、会社組織に対しても「個としての尊重」を求める声が強くなっており、社員自身も「会社に染まる」のではなく「自分らしく働く」生き方を強く意識するようになりつつあります。
今回は、このような情勢の中で、近年話題のキャリアマネジメントを通じて社員のキャリア形成に向き合い、組織にとってプラスになる人材育成へつなげるための方法としての「キャリアマネジメント」についてお話ししていきます。
近年話題の「キャリアマネジメント」とは? 注目される背景について
キャリアマネジメントは、「会社から任された仕事をこなしていく」という受動的な姿勢とは一線を画すものです。自分にとっての理想の働き方をイメージし、その理想像を実現するための具体的なステップを計画し、歳を重ねるごとに職業人としての成長を図っていくことを指します。
計画的なキャリアを歩むことを重視しながらも、社会人として組織に属する中では、働き手自身が想定していなかった職務への任命や部署異動など、個人の意思ではコントロールできないイベントも発生するでしょう。
キャリアマネジメントには、計画的なキャリアを歩むことを重視しながらも、そういったイレギュラーなできごとに合わせて軌道修正し、新たなキャリアパスを描き直すことも含まれています。
従来、社員のキャリアパスを決めるのは雇用主の企業でしたが、近年は社員自身が自分のキャリアマネジメントを自律的に行い、企業はその支援を行うというやり方が広まりつつあります。
この背景にはやはり、「働き方の多様化」がかかわっています。バブル崩壊後の不調に見舞われた日本企業は、一種の改革として、従来の日本的人事制度に代わり、欧米型の人事制度を取り入れるようになりました。
この一環として、多様な働き方が認められるようになりつつあり、働く一人一人のキャリア観も多様化が進んでいます。
これまでの「キャリアアップ」の常識だった、一つの会社に長く勤め、昇進や役職を得ていくキャリア観だけでなく、いくつもの企業を移りながら自身の専門性を高めていくキャリアアップや、あるいは企業に属さないフリーランスとしての働き方も一般化しつつあるのが現状です。
したがって、まずは社員側に自身が理想とするキャリアパスを考えてもらい、その理想像を支援する代わりに会社への帰属意識を引き出す、という手段によって社員を自社につなぎ止めるという手段が取られるようになってきているのです。
企業と社員、それぞれにとってのキャリアマネジメント
ここからは、
1.企業にとってのキャリアマネジメント
2.社員にとってのキャリアマネジメント
それぞれの特徴について説明しましょう。
1.企業にとってのキャリアマネジメント
企業にとって、キャリアマネジメントは社員のモチベーション維持やスキルアップにつながる手段です。また、社員の能力を最大限に引き出し、適材適所での人材配置を可能にするための重要な手段でもあります。さらに、社員のキャリア形成を支援することで、離職率の低減や社員満足度の向上も期待できる可能性があります。
キャリア観が多様化しつつあるからこそ、企業側が社員一人ひとりの意思に沿ったキャリアマネジメントを支援するようになっています。
社員側に「今勤めている会社から他の会社へ移ってもいい」という選択肢が生まれているからこそ、社員の転職や離職を防ぎたい会社側が、離職防止に向けて働きかける必要があります。
社員の意思に沿ったキャリア支援を提供し、つなぎ止めるような形になっているとも言えるでしょう。
2.社員にとってのキャリアマネジメント
社員にとって、キャリアマネジメントは自己実現のツールといえます。
日本企業の勢いが盛んかつ終身雇用が根強かった時代であれば、キャリアパスというのは会社側に任せるのが一般的でした。また、そうした時代であれば「自分のキャリアの流れを計画する」よりも「会社が与えてくれた役目に全力で応えれば、良いポストへの昇進などの形で報いてくれる」と考えて働くことが、ある意味で合理的でもありました。
ところが、終身雇用の前提が過去のものとなりつつある昨今では、社員側としても自分の人生を守るため、「寄らば大樹の陰」という具合に会社に身の安全を求めるのでは生き残れないと考えるようになってきました。
いまや、自分自身で人生の舵取りを考える必要があると、大部分の社会人が認識するようになっています。
企業によるキャリアマネジメント推進がもたらすメリット
企業によるキャリアマネジメントの推進は、以下のようなメリットをもたらします。
1.社員の能力開発
2.ロイヤリティの向上
1.社員の能力開発
企業側は、「社員のキャリア形成の支援」という名目で社員のキャリアマネジメントをサポートしますが、役立つ業務スキルを社員に身につけてもらうことは会社の業績向上にとってもプラスになります。
キャリアマネジメントを通じて、社員一人ひとりが自己の能力を磨くことが可能です。これにより、社員が自身の能力を最大限に引き出すことができ、結果的に企業全体のパフォーマンス向上につながります。
また、キャリアマネジメントを通じて、社員が自身の強みや弱みを理解し、自己改善のための行動を促すことにも寄与するでしょう。キャリアマネジメントは個々の社員が自分の能力やスキル、キャリア目標を明確にし、それに向けて自己啓発を進めるきっかけを提供するものです。
これにより、社員一人ひとりが「望ましいポストを掴むために、この能力を向上させるぞ」とスキル習得に励むようになります。こうすることで、企業側が業務時間内に行う社員教育の時間以外でも、社員が自発的に業務時間外での学習を行ってくれるようになるでしょう。
結果的に、企業が社員に投じることができる教育コストの限界を超えて、社員が自らの成長のため自発的に時間や費用を投じるようになるのも大きなメリットです。
2.ロイヤリティの向上
キャリアマネジメントは、社員の会社へのロイヤリティ(忠誠心)を向上させる効果もあります。
やはり、企業が社員のキャリア形成をサポートすることで、「この会社は私の人生を考えてくれて、良くしてくれようとしているんだ」と社員に実感させることができるからです。
結果的に、社員の仕事に対するモチベーションを高めるとともに、社員の離職率を低減させ、組織の安定性を高めることにつなげられます。
まとめ
今日の多様化する職業人生の中で、企業と個々の社員が協力してキャリアマネジメントを進めることは、双方にとって大きな利益をもたらします。
企業側としては、社員のモチベーションとスキルを高め、適材適所の人材配置を図り、離職率を低減させることにつながります。一方で社員にとってみても、自己実現のための具体的な道筋を探し、自分らしさを保ちながら働くことが可能です。
社員が自身のキャリアパスを自己決定し、それを企業がサポートする形が一般的になる中で、キャリアマネジメントは社員の自己実現を可能にし、企業のパフォーマンス向上にも寄与します。このように、キャリアマネジメントは企業と社員双方にとって、共に成長し、双方にとってWin-Winの結果をもたらす重要な戦略であるといえるでしょう。
【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。
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引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/