プレイングマネージャーとは何か? マネージャーとは何が違うのか? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、プレイングマネージャーについての知見を得よう。
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組織コンサルティングに携わるなかで「悩めるプレイングマネージャー」によく出会います。彼らは抱えきれない量の仕事を抱え、部下のミスをカバーし、上司にも部下にも気を遣い、それでも部下からは嫌われ、上司からは怒られ、客先にも他部署にも頭を下げて回り、疲れとストレスに苦しみながらギリギリの状態で踏ん張っています。プレーヤーとして勝利を収めてきた彼らがなぜ悩むのか。彼らの悩みの正体と、経営者がすべき対策について考えていきます。
プレイングマネージャーはマネージャーである
多くの経営者が、優秀なプレーヤーのなかからプレイングマネージャーを選んでいるでしょう。そして、その人には他のプレーヤーと同等またはそれ以上のプレーヤー機能を期待しているはずです。
彼らには同時にマネージャーとしても活躍してもらわねばなりません。プレーヤーとして他をリードするだけではなく、部下のプレーヤーたちを管理し、チームとして勝利を収めながら部下全員を成長させてほしいわけです。
とはいえ、プレーヤーとマネージャーの両方を完全にこなすことは難しいため、彼らの力の入れ具合はどちらかに偏ってきます。では、どちらの機能が優先される必要があるでしょうか。そのために両極端な二つのパターンのプレイングマネージャーを、5名の部下がいると仮定して比較してみます。
1.プレーヤー機能がとても多く(個人成績が優れている)、マネージャー機能がとても少ない(時間がない)
2.プレーヤー機能がとても少なく(個人成績が悪い)、マネージャー機能がとても多い(管理できている)
1の場合は、プレイングマネージャーの実力によりチーム結成当初の成績は良好であることが多いです。しかし、その人は少ないとはいえマネージャー機能も持っているため、プレーヤーに専念できたときほどの成績は期待できません。それでも前より成績を上げてくるケースでは、多くの場合、本来部下が獲得すべき数字をプレイングマネージャーが積み上げています。
この状態を継続するには、一人で高いパフォーマンスを維持し続ける必要があるため負担が集中していくでしょう。いつかその負担に耐え切れなくなるときが来たとしても不思議ではありません。そればかりか、部下を管理する時間がない上に、よかれと思って部下の数字まで獲得してしまっていることで、5名の部下は経験値を得ることができず、成長は期待できませんし、部下を増やすと負担が増えてしまい増員は困難な状態となります。
2の場合は、優秀なプレーヤーであったプレイングマネージャーがマネージャー機能に力点を置いたことで、当初はチームのパフォーマンスが落ちるかもしれません。また、本来取れた数字を部下が落としてしまう機会も多いでしょう。しかし、もともと優秀なプレーヤーが部下を管理する上、部下が数多く経験を積めるので、5名の部下は短期間での成長が期待できます。当然、部下が1名の優秀なプレーヤーの成績を追い抜くのに長い時間は必要ないでしょう。部下が成長すると、上司であるプレイングマネージャーの管理コストも軽減し、できた時間で本来の優秀なプレーヤーとしての実力を発揮できるほか、増員してチームを拡大することも可能となります。
つまり、1よりも2の方が6名のチームとして勝利を収める可能性が高く、なおかつ増員によってより大きなチームに拡大することもできます。組織にとってプレイングマネージャーは、マネージャーであるべきなのです。
悩めるプレイングマネージャーを生まないために 経営者がすべき対策
プレイングマネージャーに求められる役割はあくまでマネージャーであり、プレーヤー機能は自身のマネージャーとしての勝利を達成するための権限の一つであると捉えるのが正しいと言えます。
ただ、多くのプレイングマネージャーは、そのように明確に割り切った定義がなされず、部下からも上司からも、優秀なプレーヤーと理解ある上司という2人分以上(下手したら3人分以上)の役割を求められるでしょう。本人もその認識でいることから、悩み疲れ果て、心身ともに限界を迎えるほどの負担を抱えたプレイングマネージャーが生まれるのです。
実は、いったん悩めるプレイングマネージャーが生まれると、その個人に依存した組織状態に陥ってしまいます。本人がその解消に労力を割くことはチームの敗北に直結するため、なかなかその悩みがなくなることはありません。何よりもまず、悩めるプレイングマネージャーを生まないようにすることが重要です。
では、経営者は悩めるプレイングマネージャーを生み出さないために、どのような対策を講じたらよいでしょうか。三つご紹介します。
ルールを明確に設定する
一つ目は明確なルールの設定です。
そもそもルールを守る組織になっていなければ、それぞれが個別の判断で動くためにマネージャーもプレーヤーも多発する問題やロスタイムに苦しむことになってしまうでしょう。ルールがあれば、こうした無駄をなくすことができるはずです。
チームの結果だけを評価する
二つ目は、個人成績ではなくチームの結果だけを見てプレイングマネージャーを評価することです。これにより、プレイングマネージャーは部下を管理することに集中でき、自身のプレーヤー機能も「チームの勝利の切り札」として持っている状態になります。
チームの勝利を正当に評価される環境でプレイングマネージャーが成長し、マネージャーとしてさらに上の役職を獲得できれば、本人にとっても組織にとっても非常に有益です。
マネージャーを育成する仕組みを設ける
プレーヤーとプレイングマネージャーという呼び名は、昇進してもプレーヤー要素が残っているために、本人だけでなく部下も上司も、「前とそんなに変わってない」と認識しているケースが多くあります。しかし、プレイングマネージャーには、プレーヤーとしてまったく経験していなかったマネージャーの役割が設定されているのです。そのため、チームを勝利に導くマネジメントをするための教育の仕組みを用意しましょう。
組織として上記のような環境を設定することで、中間管理職が集中して業務に取り組めるようになるはずです。
【この記事を書いた人】
渡會 剛至/大阪営業部 営業1課 課長 同志社大学文学部を卒業後、法務省矯正局に入省。 非行少年の面談や行動観察、矯正教育のカリキュラム管理や行事運営などに13年ほど携わる。 法務省退職後、注文住宅販売会社に入社して1年目でトップ営業となり、2年目で事業責任者を任される。 その後は、個人事業主としてコンサルティング業に従事しながら学校設立を目指す中、組織作りに悩み、解決方法を模索しているなかで出会った識学のロジックに共感し、識学に入社。
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いかがだったでしょうか。プレイングマネージャーについて理解いただけたでしょうか。悩めるプレイングマネージャーを生まないためにも、組織として環境設定への取り組みを考えることが大切ですね。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/