パラレルキャリア、という言葉をご存じだろうか。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、副業との違いなど、パラレルキャリアについて、知見を得よう。
* * *
社会情勢や労働市場の変化にともない、「パラレルキャリア」という言葉をよく耳にするようになりました。パラレルキャリアとは、本業も持ちながら、社外での活動によって並行して全く別のキャリアを築くという、新しいキャリア形成の仕方です。
この記事では、パラレルキャリアの基礎知識や副業との違い、取り組むことのメリットや注意点、具体的な始め方について解説していきます。
パラレルキャリアとは
パラレルキャリアとは、本業を持ちながらも、副業に限らない社外活動を通して第2、第3のキャリアを築くことです。よく本業以外に収入を得ることと勘違いされますが、パラレルキャリアの目的は、社外での活動を通して人生を豊かにすることです。例えば、会社員の傍らでバンド活動を続けて定期的なライブを開催したり、起業の準備を始めたり、NPOを通してボランティア活動をしたりといったこともパラレルキャリアにあたります。
「パラレル」とは、「並行」を意味する言葉です。つまり、本業と並行して複数の人生の基盤を持つことがパラレルキャリアの意味です。パラレルキャリアは、『マネジメント』で有名な経済学者、ピーター・ドラッカーの著書『明日を支配するもの-21世紀のマネジメント革命』で提唱された考え方です。
ドラッカーは、パラレルキャリアを「本業を持ちながら、第二のキャリアを形成すること」と説明しており、「第二のキャリア」について、具体的な定義をしていません。このことから、副業などの経済活動に限らず、趣味やボランティア活動、起業に向けた準備、転職活動なども、パラレルキャリアに含まれると解釈されています。
パラレルキャリアが注目されている理由
ドラッカーは、著書の中で「歴史上初めて、組織より人間の寿命が長命になったため、第二の人生をどうするか考える必要が出てきた」と述べています。以前までは終身雇用や年功序列が当たり前でしたが、現状、このような旧来型の雇用制度は実質的に破綻しています。
さらに、変化の激しい現代では、安泰と思われていた大企業の倒産も目立つようになっています。労働市場の変化に伴い、一つの会社に一生を捧げるような働き方は困難になりました。その上、「人生100年時代」と言われる現代では、会社を定年してからの「第2の人生」も格段に長くなっています。
その結果、「人生をどう生きていくのか」を考え、会社以外で人生を豊かにする生き方を重視する人が増えています。その選択肢のひとつとして、パラレルキャリアも注目されるようになりました。
副業との違いとは
前述の通り、パラレルキャリアは「人生を豊かにすること」を意義としています。本業以外で自分がやってみたいことであれば、報酬が発生しない活動でもパラレルキャリアに含まれます。パラレルキャリアとは、いわば自分なりのライフスタイルを探して試行錯誤することなのです。
一方、副業とは、本業以外で収入源を得るための活動です。趣味やボランティア活動は副業には含まれません。つまり、報酬を目的とするか、やりがいを目的とするかがパラレルキャリアと副業の違いになります。
パラレルキャリアのメリット
パラレルキャリアに挑戦することは、自分自身にたくさんのメリットをもたらします。
自分の夢の実現への一歩となる
例えば、小さい頃は漫画家になることが夢だったけれど今は会社員として働いている人ならば、パラレルキャリアとして漫画を描き続けることも可能です。起業に興味のある人は、手始めに勉強会に参加するところから最初の一歩を踏み出すこともできます。報酬を目的としないパラレルキャリアでは、自分のペースで「とりあえず」夢にチャレンジすることができるのです。
起業や副業の下準備になる
パラレルキャリアは報酬を目的とはしませんが、活動が結果的に収入につながることもあります。趣味で描いたイラストをSNSで公開していたところ、仕事の話が舞い込んできたということもあり得ます。また、本業では提案する機会がないビジネスアイデアを、パラレルキャリアで試してみてもいいでしょう。本業で安定した収入を得ながら、起業や副業のために少しずつ試行錯誤できることがパラレルキャリアの強みです。
本業とは違う経験ができ、視野が広がる
一つの会社に長く勤めていると、その会社や業界の常識が当たり前になってしまい、課題に気付けなくなってしまうことがあります。非効率な作業や整合性のないルールなども、会社や業界特有の常識として、疑問を感じなくなってしまうのです。
パラレルキャリアで本業以外の経験を積むことで、本業を客観視できるようになるといいます。違う分野で得た価値観が、固執した常識を打破したり、新しい解決策やアイデアを生みだしたりするきっかけになるかもしれません。
自分の得意分野が明確になる
パラレルキャリアは、「ちょっと興味がある」ということでも、気軽に挑戦できることが魅力です。以前からプログラミングにチャレンジしてみたかった、経験はないけど調理の資格をとってみたいなど、「とりあえず」という気持ちで挑戦できます。
その結果、やっぱり自分には向いていないとか、力不足だと気付くこともあるでしょう。しかし、行動を積み重ねてこそ、自分の得意分野が明確になっていきます。試行錯誤を繰り返しながら、自分の特性や本当にやりたいことを見極められることが、パラレルキャリア最大のメリットともいえます。
新しい人脈が広がる
同じ会社でずっと働いていると、安定収入を得られる一方で新しい出会いが創出されないというデメリットもあります。同じ環境で同じ人とばかり接していると、考え方も凝り固まってきてしまいます。
パラレルキャリアによって本業以外の場で人と出会う機会があると、これまでになかった人脈を作り出すことができます。これらの人脈が、本業に還元されたり、今後起業するときの助けになったりするかもしれません。
時間の管理などマネジメントスキルの向上
パラレルキャリアに挑戦すると、人生が豊かになる一方で、これまでよりも忙しくなることは間違いありません。本業の仕事に加えて、平日の終業後や休日の時間を使って活動に取り組まなければならないため、今まで何気なく使っていた時間を有効活用する必要があります。
職場までの出勤の時間を勉強に使う、だらだらテレビを見る習慣を改めるなど、工夫が求められます。その結果、優先順位を付けたり、スケジュールを組むといったマネジメントスキルの向上につながります。
社会貢献につながる
報酬を前提としないパラレルキャリアとして、ボランティア活動や地域活動に取り組む人も多く見られます。これらの活動は、参加する本人の人生を豊かにするだけでなく、社会貢献になる活動です。イメージ向上につながるという理由から、パラレルキャリアに限定して副業を解禁する企業も現れています。
パラレルキャリアを考える際の注意点
「やりたいことがない」と思い込まない
パラレルキャリアに興味があるという方は多いものですが、「やりたいことがない」「自分の得意なことがわからない」という声もよく耳にします。会社以外に居場所を作りたいという気持ちは多くの人が持っている一方で、何をすればいいのかわからず、結局踏み出せないままでいる人が多いのです。
このような人は、何か立派なことや意義のあることをしなければならないと思い込んでしまっている傾向があります。前から興味があることや、友達がやっていて楽しそうだったことでもかまいません。行動のハードルを下げて「とりあえずやってみる」ことに注力しましょう。
本業に支障が出ないように気をつける
パラレルキャリアでの活動は、成果を意識せず、自分の好きなことに自由に打ち込める時間です。熱中して楽しめる時間があるのは素晴らしいことですが、そのせいで本業をないがしろにしてしまっては本末転倒です。前述でも触れた通り、パラレルキャリアで好きな活動に打ち込むことができるのは、本業での安定した収入があるからです。社外活動に力を入れすぎて集中力を欠いたり、疲れて居眠りしたりしてしまうようでは考え物です。社外での活動を本業にも還元させてこそ、人生を包括的に豊かにすることにつながるということを忘れないようにしましょう。
これまで以上に時間の管理が必要になる
本業に支障を出さずに活動を楽しむためには、タイムマネジメント能力が問われることとなります。スキマ時間を有効活用する工夫やペース配分、休憩時間をしっかり確保することも大切です。また、本業とパラレルキャリアの繁忙期が重ならないようにするなど、長期間のスケジューリングにも注意しましょう。
お金がかかる
報酬を前提としないパラレルキャリアですが、かえって活動にお金がかかることもしばしばです。ボランティア活動でも遠征費用や食費などがかかることもありますし、活動に必要な道具なども自費で揃えなければなりません。生活や本業に支障のないよう、計画的な資金計画を立ててのぞみましょう。
自分の健康に十分気をつける
本業と他の活動を両立させるためには、必然的に終業後や休日を活動時間に充てることになります。新しいことにチャレンジするときはやる気も十分なため、少し無理なスケジュールでも頑張れるかもしれませんが、それでは長続きしないでしょう。十分な休息を取らずに無理な計画で活動をしていると、体調を崩しかねません。体を壊しては本業にも支障をきたしてしまいますので、焦らずに余裕をもって、長く続けられるスケジュールを心がけてください。
場合によっては会社の規定違反となることがある
近年では副業を解禁する会社も増えてきていますが、所属企業の就労規則はしっかり確認してから着手するようにしましょう。
報酬の発生しない活動であれば問題ないと思われるかもしれませんが、副業と勘違いされてしまう可能性もあります。パラレルキャリアの認知度はまだ高くないため、注意が必要です。
パラレルキャリアの始め方
パラレルキャリアを始めたい人は、具体的にどんなことから着手すればいいのでしょうか。パラレルキャリアを始める方法をいくつかご紹介します。
自分のやりたいことを明確にし、リスト化する
まずは、自分のやりたいことや好きなこと、興味のあることや気になっていたことなど、自由に書き出してみましょう。なかなか思いつかない人は、「お金を気にしないでいいとしたら、何がしたい?」「これまでに時間を忘れるほど熱中したことは?」など、自分に問いかけをしてみてください。書き出しは、ノートでもスマホのメモ帳でもかまいません。思いついたことは、小さなことでも素直に書き出してみましょう。
自分が「本当はやりたくないこと」を洗い出し排除する
前ステップで書き出したリストを、次は客観的に眺めてみましょう。その中に、「本心でやりたいと思っていないこと」が含まれていないでしょうか。例えば、「周りから褒めてもらえそう」「成功している人はやっていそう」など、周囲の視線を意識しているものなどです。人からの承認を目標としても、なかなか活動を継続することはできません。やっている自分を想像した時にワクワクするか、本心から楽しんで取り組めるか、もう一度検討してみてください。
交流会や勉強会へ参加する
なかなか最初の一歩が踏み出せない人は、異業種交流会や興味のある分野の勉強会に参加してみるのもおすすめです。会社では出会わないような業種で働いている人の話を聞いたり、すでにパラレルキャリアを実践している人から刺激をもらったりするだけでも、何かのきっかけになるかもしれません。
ボランティア活動に参加する
最初の一歩としては、ボランティア活動に参加してみるのもいいでしょう。ネットでも多くの募集を見つけることができますし、一日だけの参加も可能です。ゴミ拾いや子どもとのレクリエーション、施設訪問、イベントの運営サポートなど、多様な分野の募集があります。実際に活動に参加してみると、自分の得意分野やどんなことに楽しさを感じるのかを知るきっかけにもなります。
クラウドソーシングを活用する
すでにどんなキャリアを伸ばしたいか決まっている人は、クラウドソーシングサイトを利用してみてもいいでしょう。クラウドソーシングサイトでは、多様な分野の仕事が数多く掲載されており、初心者でも応募できる依頼も豊富です。語学スキルがある人であれば翻訳の仕事、イラストが得意な人であればイラスト制作の仕事などを受けることができます。仕事として経験を積みながら、副収入を得ることもできるため、将来起業を考えている人は挑戦してみるといいかもしれません。
パラレルキャリアで可能性を広げよう
パラレルキャリアは、会社以外の場で自分の可能性を模索し、人生の選択肢を増やすための活動です。スキルアップやプライベートの楽しみとしてパラレルキャリアに取り組む人も多くいますが、雇用が不安定な現代においては、リスク分散の手段としてパラレルキャリアを検討する人もいます。
本業とのバランスを保ちながら、人生の充実度を高める新しいライフスタイルについて検討してみていはいかがでしょうか。
【参照】
HRNOTE「パラレルキャリアとは|副業との違い・メリットや注意点を総まとめ」
ボーグル「パラレルキャリアとは?成長の幅を広げる社外活動の発見方法」https://bowgl.com/parallel-career/
INTERNETACADEMY「パラレルキャリアとは?副業を始める前に「パラレルキャリア」について知っておこう」https://www.internetacademy.jp/it/design/web-design/parallel-career-sideline.html
ジョイキャリア「パラレルキャリアで人生を豊かに!副業と違う働き方」https://career.joi.media/workstyle/2020/05/24/8706/
BizHINT「パラレルキャリア」https://bizhint.jp/keyword/12537
SharingNeighbors「パラレルキャリアとは?“副業解禁時代”の新しいスタンダード」https://share.jp/work-style/parallel-career/new-standard/
プログラミングスクール https://programming-school.work/
テックキャンプブログ「パラレルキャリアとは?第二の仕事を始める方法やメリット・デメリットを解説」
https://tech-camp.in/note/pickup/73254/
【この記事を書いた人】
識学総研編集部 株式会社識学内にある、コンテンツを企画・制作する編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作。
* * *
いかがでしたでしょうか。パラレルキャリアと副業との違い、パラレルキャリアで人生の充実度が増すこと、などについておわかりいただけたでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/