今よりも待遇が良い仕事や、やりがいのある仕事をしたいと、キャリアアップを考える場合、どのように行動すれば理想に近づいていけるのでしょうか? やみくもな行動は後悔に繋がりかねません。そこで、プロティアンキャリア協会代表理事の有山徹さんの著書『新しいキャリアの見つけ方』から、人それぞれの特性や仕事に対する価値観を再発見する方法をご紹介します。

文/有山徹

より良く生きていくにはどうすればいいかを考える

「キャリア」という言葉について聞かれたとき、あなたはどのように説明しますか? 「これまでの仕事の経歴」「時間をかけて積み上げてきたスキルと経験」「仕事上の専門的な知識と技術」といったところでしょうか。

キャリアは過去に築かれたものなので、いまさら変えることなんてできない。そう思っている人が多いのではないでしょうか。でも、それは大きな間違いなんです。

後に事例として紹介しますが、74歳でプロティアン・キャリア戦略塾に入塾して、新たなキャリア開発をしている人もいます。

どんな人でも、いつからでも、何歳からでも、キャリアは新しく作っていくことができます。キャリアとは、より良く生きていくにはどうすればいいかを考えることなのです。

「新しいキャリアなんて、どうやって作ればいいのかわからないよ」
「今までやってきたことを捨てて、いまさら新しいものなんか……」

そう、普通はそう思いますよね。でも、それは〝過去志向のキャリア〞に縛られているからなんです。
これから、その呪縛を、解いていきましょう。

キャリアに対する3つの呪縛

キャリアに対する呪縛は以下の3つ。
1.履歴書に傷があってはいけない(転職が多いのはよくない)
2.会社の大きさや知名度に左右される(知名度の高い企業にいると優秀な人材)
3.ある年齢を超えたら変えられない(年齢でキャリアの可能性を判断する)
 
たとえば、何度も転職してきたし、それほど有名な企業で実績を残してきたわけでもない。気付いたら30代も後半になってしまったし、家族もいるので収入は落とせない。

そんな状況だったら、いままでやってきたことを活かせる範囲でしか、将来のキャリアは選択できないと思ってしまいますよね。たとえば、システムエンジニアとして15年間働いてきた人なら、これから先もその延長線上にしかキャリアはないと思ってしまうだろうし、営業一筋で20年叩き上げてきた人は、その年月そのものがキャリアであって、他の職種に移れるとは考えないと思います。

でも、プロティアン・キャリアでは、そうは考えません。長らく「キャリア」というのは、履歴書や職務経歴書などに書き込めるような、それまでの社会人人生で築き上げたものというイメージがありました。

辞書で調べてみても、「キャリア=(職業・生涯の)経歴」となっていて、そのイメージが正しいことを裏付けています。

みなさんの認識にも辞書での意味にも共通しているのが、キャリアとは「過去」の経歴を指しているということです。それはあなた自身が歩んできた足跡のようなもので、変えられないものだという認識ではないでしょうか?

経歴に一流大学や大手企業の名前が並んでいて、立派な肩書きがたくさん書いてあるのが「すごいキャリア」で、逆に頻繁に転職していて、わかりやすい肩書きや実績がないと「しょぼいキャリア」。いったんそんな風に差がついてしまったら、もう取り返しがつかないような気がしてしまいます。

でもそれは、キャリアにおける過去の価値観です。確かに、かつては大企業に入社して実績を積むことや、大勢の部下を管理するマネジメントの経験、事業や企業を立ち上げた経歴などが大きな意味を持っていました。キャリアとは、仕事におけるキラキラした履歴そのものだったのです。

時代は流れ、社会の仕組みも変わり、これからのキャリアは違ってきます。出産、育児休暇をとって子育てや家事をがんばることもキャリア。都心を離れてゆったりした環境で生きるのもキャリア。本を読んだり資格の勉強をしたりして自己研鑽を積むのもキャリア。本業と副業に分散して稼ぐのもキャリア。知人や社会のために手を貸したりボランティアに励んだりするのもキャリア。退職してしばらくじっくり人生を考えてみることもキャリア。

そう、現代におけるキャリアとは、履歴書や職務経歴書にアウトプットされる文字列のことではありません。生まれてからいままでに経験したこと、そしてこれから歩んでいく生き方のプロセスそのものなのです。大事なのは、自分のやってきたことが〝キラキラキャリア〞として使えるかどうかではなく、過去の経験がいまの自分にとってどんな意味があるかなのです。

職務経歴書は書き換えられなくても、その行間に隠されているはずの、あなたが向き合ってきた人生のすべてに意味があるのです。未来志向に考えて肯定的にそれらを捉え直し、これからの行動のエンジンにして、未来の働き方や生き方に向き合うことが、何よりも大事なのです。

* * *

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有山徹(ありやま・とおる)
一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事。4designs株式会社代表取締役CEO/founder、国家資格キャリアコンサルタント。早稲田大学MBA。国家資格中小企業診断士。就職氷河期である2000年に早稲田大学卒業、大手食品メーカーに就職するも、より経営に近い成長できる環境を求めて3ヶ月で退職しフリーターに。24歳で中小企業診断士に合格し経営コンサルティング会社に転職、その後、東証一部上場のIT企業、DX企業や医療系ベンチャー企業など事業会社5社で経営企画部長や管理本部長などを経験。MBO後の組織改革や、未上場からの東証一部直接上場(IPO)案件、グループERP導入案件などのプロジェクトリーダーを務めるなど全社プロジェクトマネジメントを得意とする。2019年、経営・キャリア支援を行う4designs株式会社を起業、独立。2020年3月、法政大学キャリアデザイン学部田中研之輔教授と一般社団法人プロティアン・キャリア協会を設立。現在は、大手総合商社、大手電機メーカー、大手石油・化粧品メーカー等へのキャリア開発視点での組織開発支援やキャリア開発の実践支援を行うプロティアン・キャリア戦略塾など、研修や面談を通じて多くの個人に100年・VUCA時代の最先端キャリア開発である現代版プロティアン・キャリアを伝えている。

 

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