社会人にとっての「勉強」とは何か。社会人になってこそ「勉強」が必要なのだと、マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」は説く。「社会人の勉強」の必要性と方法を知ろう。

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【社会人の勉強】最大の壁はモチベーションの維持

社会人であっても勉強が必要です。そして、ほとんどの社会人は「社会人こそ勉強が必要である」と感じているのではないでしょうか。
資格を取得したり、仕事のスキルを向上させたりするには、学生が勉強するように勉強しなければならないからです。
しかし勉強は常に苦しく、しかも社会人は「仕事が忙しいから」と言うだけで、勉強をしない言い訳ができてしまいます。人間、よい言い訳が完成すると、苦しいことを回避してしまいます。勉強しないビジネスパーソンが少なくないのはそのせいもあるでしょう。
そこでこの記事では、勉強しない言い訳に打ち克つための、やる気とモチベーションの維持方法を解説します。

「目標がないから」派か、「つまらないから」派か

勉強の必要性を感じながら、どうしても勉強する気になれないのは、なにかが障害になっているからです。その障害を取り除くことができれば、勉強をスイスイ進めることができるはずです。
勉強する気持ちを削ぐ障害はいくつかありますが、この記事では次の2つの障害を乗り越える方法を紹介します。

・目標が定まらないので、勉強する気が起きない
・勉強を始めるが、つまらないと感じて、いつもすぐに飽きてしまう

「目標がないから」派は、次に紹介する塩野義製薬方式を採用すれば、勉強モチベーションが上がるかもしれません。
「つまらないから」派は、その次に紹介する、「勉強の鬼」といわれている作家の勉強法が向いているかもしれません。

それでは2つの勉強モチベーション向上法を紹介します。

塩野義製薬では勉強しないと昇格できない

塩野義製薬の社長、手代木功氏は、自身が直接、幹部クラスの社員を鍛える「社長塾」を開催しています。月1回、1回4~5時間行われ、「生徒」たちは「先生」から与えられる課題を解いていきます[1]。
課題の内容は、残念ながら明かされていません。なぜなら、課題はいずれも塩野義製薬の10年後20年後の事業を想定したものだからです。つまり社長塾で「生徒」の幹部社員たちが考えなければならないのは、リアルな経営です。社長塾では、勉強のための勉強が行われるのではなく、手代木氏の後継者や、その次の後継者、または将来の後継者が把握しなければならないことを学びます。

役員を泣かすほど厳しくする理由

手代木氏の妻によると、社長塾の日は、自宅に戻った手代木氏は憔悴しているそうです。それは手代木氏が真剣勝負で社長塾に臨んでいるからです。
社長塾は、相当厳しい内容になっています。「生徒」が的外れな回答をすると、手代木氏は「何年、働いているんだ」「そんな甘い考えなら、今すぐここから出ていけ」と罵倒します。あまりの厳しさに、役員クラスでも泣くことがあるそうです。

もちろん社長塾は、単なるスパルタでも安直なパワハラでもありません。後継者候補たちをそれだけ厳しく指導するのは、製薬業界がそれだけ厳しい競争にさらされているからです。

手代木氏は東大薬学部を卒業して塩野義製薬に入社した超エリートです。そして社内ではニューヨーク駐在や開発渉外部、経営企画部長、医薬研究開発本部長などを歴任してきました[2]。
薬の専門家が、専門化としての仕事と経営の仕事の両方に携わってきました。
塩野義製薬は創業140年の、日本を代表する製薬メーカーですが、1990年代に業績不振に陥りました[3]。

手代木氏は、2004年に医薬研究開発本部長に就任すると、研究論文ばかり書き、商品になる新薬をつくろうとしない研究職の社員たちに「研究だけしたいなら大学に戻れ」と一喝します。
さらに、抗がん剤の研究チームを解体して、感染症など3分野に研究・開発資源を集中させました。
その結果、塩野義製薬は次々と新薬を生み出せるようになりました。

ここまでしなければ製薬会社は生き残ることができないとわかっているので、手代木氏は、後継者の育成に全身全霊を傾けるわけです。

経営者を目指せば勉強できる

勉強モチベーションが高まらないビジネスパーソンは、経営者を目指してみてはいかがでしょうか。
経営者が全身全霊で経営に当たらなければ会社が生き残れないのは、なにも製薬業界だけではないはずです。自分が今いる業界でも、自分が今の会社の社長になったら、死力を尽くして経営しないと、会社は立ち行かなくなるでしょう。
「経営者を目指す」という覚悟を決めれば、勉強するのは当たり前になります。

手代木氏は「勉強し続けない幹部は失格、昇格させない」と断言しています。
社長塾の参加者のなかには、1年後にもう一度、社長塾に呼ばれる人もいます。手代木氏は「戻ってきた生徒」に違う課題を与えて、この1年間、どれくらい勉強してきたか推量します。「1年間サボっていた人は、ものの見事にわかる」と言います。
そのような社員は、「絶対に昇格させません」。なぜなら「部下が絶対迷惑する」からです[2]。

勉強モチベーションが上がらない人は、もし自社の社長が手代木氏だったらと想像してみてください。勉強しない言い訳がすべて消え飛ぶはずです。

「王道」を歩めば楽しい

勉強モチベーションが上がらない人は、勉強の仕方が悪いのかもしれません。
そのようなビジネスパーソンは、学校に通っていたころを思い出してみてください。それまで苦手だった科目が、教師が変わった途端に好きになった、という経験をしたことはないでしょうか。

学問や研究対象は不変ですが、知識や情報を得る方法は千差万別です。
つまり、山頂はひとつでも、登山ルートはいくつかあります。そして、ある登山ルートは、森のなかを歩くだけのつまらない道なのに、別のルートは眺望がよく素晴らしい景色を堪能しながら登ることができる、といった山はいくらでもあります。
同じ量と質の知識や情報を得るにしても、楽しい勉強とつまらない勉強があります。

ビジネスパーソンに楽しい勉強の仕方を教えてくれるのが、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏です。佐藤氏は「勉強の鬼」として知られていて、ビジネスパーソンの勉強法に一家言あり、関連本もいくつか著わしています。

勉強の鬼の「王道の勉強法」

佐藤氏は午前4時45分に起き、歯磨きをしたら朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞、琉球新聞、沖縄タイムス、ウォールストリート・ジャーナル日本版など10紙を電子版で読みます。
その後、正午まで執筆をして、昼食後、また執筆をします。
そして夕食ののち、就寝まで必ず4時間、読書をします。読書量は毎月300冊に達します。
まさに勉強の鬼です[4]。

しかし佐藤氏がビジネスパーソンにすすめる勉強法は、極めて普通です。IT機器を多用しますが、王道といってもよいでしょう。奇をてらったものではありません。

ITを駆使して昔ながらのスクラップをする

佐藤氏は10紙を電子版で読みます。雑誌も「dマガジン」という電子版を講読しています。それは、情報を保管しやすいからです。
佐藤氏は自分に必要な情報をみつけると、記事の一部を「コピー&ペースト」して、クラウド上に保管します。
ポイントは、記事をまるごと1本保管するのではなく、本当に必要な部分だけを「わざわざコピペして」いることです。コピペするときに、しっかり読むことになるので記憶に定着します。
しかもクラウドの文章データとして保管しているので、キーワードさえ思い出せれば、その文章をすぐに引き出すことができます[5]。
これで、昔に獲得した貴重な知識と情報を、いざビジネスに使おうとするときに、すぐに確実に使うことができます。

ITを使ってはいますが、やっていることは、新聞や雑誌のスクラップと同じです。スクラップとは、必要な記事だけを切り抜いて、スクラップブックに貼り付けておく作業です。
スクラップは多くの知識人が行っていますが、手間がかかりすぎますし、スクラップブックの保管スペースを確保しなければなりません。必要な過去の記事を掘り起こすのも大変です。
佐藤氏のようにスクラップ作業をIT化すれば、そういった欠点を解消できます。

「日本史A」と「世界史A」を使う

佐藤氏はビジネスパーソンに、高校生が使っている教科書や参考書で勉強することをすすめています。重要な知識が、コンパクトに、かつ平易な文章で記されているからです。

グローバルな仕事をしているビジネスパーソンは、これまでに一度は「もっとしっかりと日本史と世界史の勉強をしておくべきだった」と感じたことがあるのではないでしょうか。

佐藤氏はそのようなビジネスパーソンには、高校の「日本史A」と「世界史A」の教科書がよい資料になるとアドバイスしています[6]。
日本史Aと世界史Aの教科書は、商業高校や工業高校など、大学受験をあまり意識しない高校で使われていて、歴史の流れと要点がわかりやすくまとまっているからです。
進学校が使う日本史Bと世界史Bは情報量が多すぎて、記述が「情報の羅列」になっていて、読み物として面白くないのだそうです。面白くないと、勉強は続きません。

佐藤氏のアドバイスから、次のことを学ぶことができます。

・「社会人が高校の教科書で勉強するなんて恥ずかしい」と思わず、謙虚な気持ちで確実に知識を獲得していく
・自分に合った、楽しく続けられる勉強法をみつける

ただ佐藤氏は、次のような警句も残しています。

「歴史小説や歴史漫画は、あくまで歴史を学ぶモチベーションを高めるための材料と考えるべきで、その内容を鵜呑みにしたり、これで『勉強しよう』『学び直そう』といった安易な発想をしたりすることは捨てるべきだ」[6]

佐藤氏は快適な勉強法を教えてくれますが、獲得すべき知識の量と質には一切妥協していません。だから「王道の勉強法」といえます。

総括~まずは巨人たちの10分の1からでも

ビジネスパーソンが、塩野義製薬の手代木氏の考え方を知ると、「勉強しないなんて考えられない」と思えるようになるのではないでしょうか。
ビジネスパーソンが、佐藤優氏の勉強法を真似れば、「王道の勉強法でも、こんなにスイスイ学べる」と実感できるのではないでしょうか。
ただ、ビジネスの巨人の教えを守ったり、知の巨人の真似をしたりすることは、すぐにはできないはずです。まずは両者の教えの10分の1ぐらいから実践していってはいかがでしょうか。

【参照】
[1]:塩野義・手代木功社長の「理と情の先読み経営」(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/interview/16/082400028/121700006/?P=5
[2]:塩野義・手代木社長が断言「勉強し続けない幹部は失格」(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00041/051000008/?P=1
[3]:新薬でインフルエンザと戦う(カンブリア宮殿)
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2019/0124/
[4]:ネットは初級者と上級者向け(佐藤優、東洋経済2016年12月10日号)
https://premium.toyokeizai.net/ud/magazine/pubdate/20161210
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/13835
[5]:佐藤優が毎日やっている「資料整理」5大極意(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/162165
[6]:池上彰+佐藤優「最強の歴史学び直し」勉強法(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/167270

* * *

いかがだっただろうか。「勉強」の必要性はわかっていても、なかなか実践できない方も多いのではないだろうか。そんな方々の参考になれば幸いである。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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