取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「家族のことは何とも思わない。期待する気持ちを捨てられた時、心がふっと軽くなりました」と語るのは、仁美さん(仮名・36歳)。彼女は現在、都内にある人材派遣業務などを行う会社でコーディネーターとして働いています。話すテンポはゆっくりながら、一度話し出すと会話は尽きません。テーブル越しの対面でお話を伺っていましたが、身を乗り出して話す仕草には、やや自己主張の強さを感じました。
自分に興味のない両親。「早く自立して」と10代の頃から言われていた
仁美さんは埼玉県出身で、両親と4歳下に弟のいる4人家族。両親はずっと共働き。忙しく働く姿を覚えていると言います。
「父親はメーカーのサラリーマン、母親もパートでしたが、職を転々としながらもずっと働いていたイメージです。小学校の頃から弟といつも2人でご飯を食べていた記憶が残っているんです。ご飯を自分で作った記憶は残っていないので、ちゃんと用意されていたとは思うんですが、週末も家族団らんで食事をしたという思い出はありませんね」
家族仲について聞いてみたところ、よくわからないという回答が返ってきました。
「大きなケンカをしたことはないし、殴られたことや虐待を受けたこともありません。だから、決して仲が悪いわけでは無いと思います。でも、良くもない。一言で表せば、両親は私に興味がないんだと思います。それは今に始まったことではなく、小さい頃から常に感じていたことです」
両親から興味を持たれたことがないと言い放った仁美さん。その具体的なエピソードは衝撃的な内容でした。
「ハッキリと母親から『いつまでも育てられない。早く自立して家を出て行ってほしい』と確か中学、高校ぐらいの時に直接言われました。その時はショックというか、そうなんだなって妙に納得してしまったんですよね。興味がない理由はこれなのかと」
【次ページに続きます】