取材・文/ふじのあやこ

家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)

今回お話を伺ったのは、都内にある人材派遣業務などを行う会社でコーディネーターとして働いている仁美さん(仮名・36歳)。埼玉県出身で、両親と4歳下に弟のいる4人家族。小さい頃に母親から『早く自立して家を出て行ってほしい』と言われたことがあり、親に頼ることなく、自分のことは自分で何とかするとい考えが根付いていきます。

「自分のことは自分でといっても、子供に責任を取る能力はないし、お金もありません。そこは親を頼っていました。私に興味がない親で晩ご飯も家族バラバラでとっていたけど、出来合いのものだったとしても、毎日ちゃんと用意してくれていました。それに、大学や塾にも行かせてもらいましたから」

どんなに突き放されても、親の振る舞いを“いつか”と期待してしまう

仁美さんが一人暮らしを始めると物理的な距離もあり、家族との交流はまったくなくなったとか。そんな時に感じたのは今まで感じたこともないような寂しさだったと言います。

「今までまったく私のことを見ない両親だったから一人暮らしをする前からずっと一人だったのに、離れて暮らすと本当に独りぼっちになってしまった感じがしたんです。自分の存在がふわふわしている実態がないもののような感じというか。その不安定な気持ちを埋めようと、お盆と年末には実家に帰っていました。でも、それも最初の2年間だけでしたね」

それでも3か月に一度ぐらいのペースで来る母親からのメールは嬉しかったそう。しかし冷たくあしらわれることもあり、その度にある思いが心に沸いていたと当時を振り返ります。

「メールの内容は気遣いの言葉が少しと、こんなことをしましたという報告みたいな内容で、すごく淡泊なものです。間隔は平均して3か月に一度くらいなんですが、長い時は半年ほど何の音沙汰がないんですよね。そんな時に私は特に用事もないのに実家に電話してしまって。その度に『何の用?』と面倒くさい感じで話された時は、なぜ電話をかけてしまったのかと後悔することばかりでした。

冷たくあしらわれるが繰り返されていくうちに、あることに気づいたんです。こんなに突き放されているのに、まだ親としての振る舞いを期待してしまっていたんだなって。自分に何かあると聞いてほしくなる。頑張って達成したことがあるとほめてもらいたい。悔しい思いをした時は愚痴を聞いてほしい、って……。小さい頃からそんなこと一度もしてもらったことがないのに、“もしかしたら”という思いがずっと消せませんでした。何かに縛られているような気分で、もういっそ忘れたいって思っていましたね」

【次ページに続きます】

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