文/印南敦史
文字どおり大型の10連休が終わり、しばらく祝日はおあずけとなる。次の連休が7月15日の「海の日」を含む3連休だと考えると、多少なりとも気持ちは沈んでしまうかもしれない。
とはいえ、ものは考えようである。なぜなら祝日はなくとも、週末は必ず訪れるのだから。平日の延長線上にある土日はなにかとダラダラしてしまいがちかもしれないが、その時間を存分に活用してしまえばいいのだ。
そんなとき、手間をかけずに楽しめる手段といえばドライブだ。車を出して、走ったことのない道を走ってみれば、それだけでリフレッシュできること間違いなし。
また、そこにもうひとつなにか目的を加えることができたら、充実感はさらに大きなものになるはずだ。たとえば、車で移動できる範囲内に点在する「道の駅」をひとつひとつ尋ねてみるのはいかがだろうか?
そこで参考にしたいのが『首都圏「道の駅」 ぶらり半日旅』(浅井佑一著、ワニブックスPLUS新書)。東京近郊から半日程度で行って帰ってこれる、50の道の駅を厳選したものである。
私は10代後半で車の魅力に目覚め、20代前半からキャンピングカー雑誌の編集部で働くことになった。キャンピングカーの試乗記事や旅の取材で車を運転して遠出することが多く、その頃から「道の駅」を利用していた。(本書「はじめに」より引用)
道の駅の制度がスタートしたのは、1993年4月なのだそうだ。24時間出入りできる駐車場があり、トイレも24時間使用可能。それまで一般道にはなかったサービスエリアのような場所として、全国103カ所からスタートしたのだ。
それは、著者が車雑誌の取材のためにあちこち移動していた時期と重なった。そのため、ごく自然な流れで道の駅を頻繁に利用するようになったのだという。
ただ個人的には、ちょっと意外な気もした。道の駅は、もっと以前からあったような気がしていたからだ。しかしそれは、全国各地に散らばるこの施設がすっかり認知されていることの証でもあるのかもしれない。
事実、道の駅は以後もどんどん増え続け、1999年には登録数が500カ所に。さらにスタートから20年後の2013年には、全国の登録数が1000カ所を超えるまでに成長したのだという。
また、そのころから単なる休憩場所ではなくなっていく。地域性や独自性を出すようになり、農産物直売所が充実。「道の駅グルメ」も大きな話題を呼ぶようになったわけだ。
いっぽう、私は昔から「キャンピングカーで日本中を旅したい」という夢があった。その目的のためには、道の駅の存在はとても魅力的に感じられたのは言うまでもない。なぜなら、車中泊をしながら道の駅をすべて巡れば、自然と日本一周が達成されるからである(笑)。全国制覇挑戦を宣言すると付き合いのあったメーカーが車を貸してくれ、嬉しいことに雑誌の連載も始まった。そんなこともあって、その当時の1014カ所の道の駅走破を目指して、キャンピングカーで車中泊しながらの旅に出たのが、2014年3月、いまから約5年前のことである。
(本書「はじめに」より引用)
その結果、2年以上かけて1059カ所を回り、2016年には全国制覇の認定を受けたというのだから恐れ入る。もちろん以後も訪問した道の駅は増え続け、本書執筆の時点では1082カ所に増えたのだとか。
そう聞けばおのずと好奇心をくすぐられるが、とはいっても泊りがけの旅はハードルが高いものでもある。なにしろ多くの人の場合、週明けにはまた仕事があるからだ。
とはいえ、週末を利用した「道の駅ぶらり旅」なら決して不可能ではないだろう。そこで本書においては、著者がそうやって実際に訪ねた道の駅のなかから、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、山梨、静岡、長野にある50カ所を厳選し、紹介しているのである。
厳密にいえば、静岡、長野は首都圏には含まれない。しかし重要なのは、「すぐに行って帰ってこられる」ことであるはずだ。そこで本書ではあえて、東京から半日で行って帰ってこられる場所を“首都圏”と設定している。
グルメ、絶景、温泉、体験など日帰り旅で楽しめるスポットを、著者の独断でチョイス。私の旅行記とともに紹介されているのだ。
関越自動車道・嵐山小川ICから約10分。小川町は周囲を山々に囲まれた盆地にあり、その名の通り清流の恵みを受けて発展してきた町だ。道の駅「おがわまち」は、国道254号沿い、隣が警察署という町の中心域にある。
道の駅には「埼玉伝統工芸会館」が併設されている。ぜひとも挑戦したいのが、特産の和紙の手すき体験だ。駐車場に車を停めると、紙すきをしている大きな人形が目に飛び込んでくる。とにかくここは和紙作りが一押しなのだ。
(本書122〜123 「おがわまち(埼玉県小川町)」より引用)
たとえばこんな感じだ。道の駅で和紙の手すき体験ができるなど、こうした情報に触れない限り知ることは難しい。そして好奇心をくすぐられれば、そのぶんだけ道の駅めぐりも楽しくなっていくことだろう。
週末に車を出し、本書を参考にしながら道の駅めぐりをしてみてはいかがだろうか? そうすれば、祝日のない時期も存分に楽しむことができるはずだ。
『首都圏「道の駅」 ぶらり半日旅』
浅井佑一著
ワニブックスPLUS新書
定価 : 1,000 円(税込)
2019年4月発売
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。