
今の時代、サライ世代にとって「生きやすい世の中か?」と問われたら、決して「生きやすい」とは答えられないように思います。それどころか、次第に「生き辛さ」が増しているようにも感じられます。その理由の一つが、社会通念の変化ではなかろうか? と思うのです。
それは、親や先輩、師と仰いだ人たちから指導を受け、身につけた「常識」が大きく変移しているからではないでしょうか? 別の言い方をするならば、社会を円滑に生きるための「世渡りの術」が、機能しなくなってしまった感じがいたします。
しかし、私たちが大きな変移と感じていることも、百年、二百年という単位で見れば、意外と小さな変化なのかもしれません。そのことは、今を生きる人々へ影響を与え続ける先人たちの名言や金言が物語っているように思います。
今回の座右の銘にしたい言葉は「優勝劣敗」(ゆうしょうれっぱい) です。
「優勝劣敗」の意味
「優勝劣敗」について、『デジタル⼤辞泉』(小学館)では、「力の強い者が勝ち残り、劣っている者が負けること。特に、生存競争で強者・適者が栄え弱者・不適応者が滅びること」とあります。
言葉の構造を見ると、「優」と「勝」、「劣」と「敗」が対になっています。「優れている」とは、必ずしも腕力が強いことや、地位が高いことを指すのではありません。環境に適応し、自らを磨き続けた結果としての「優」なのです。
サライ世代にとっての「優」とは何でしょうか?
それは、若さや体力ではなく、「経験に裏打ちされた知恵」や「新しい価値観を受け入れる柔軟性」かもしれません。
社会は刻一刻と変化しています。デジタル化が進み、価値観も多様化しました。その中で「昔はよかった」と立ち止まるのではなく、変化を受け入れ、自らをアップデートし続ける(=優勝する)姿勢こそが、この言葉の本質なのです。
「優勝劣敗」の由来
この言葉の由来は諸説ありますが、19世紀のイギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンが提唱した進化論に遡ります。彼の著書『種の起源』にある「Survival of the Fittest」(適者生存)という考え方が、明治時代の日本に輸入されました。
明治維新という激動の時代、日本は西洋列強に追いつき追い越せという状況にありました。「国そのものが強くならなければ、生き残れない」という危機感の中で、「優勝劣敗」は当時の日本人を鼓舞するスローガンとなったのです。
しかし、ダーウィン自身が言いたかったのは「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」という点にあることです。つまり、恐竜が滅び、小さな哺乳類が生き残ったように、「変化への対応力」こそが「優勝」の鍵なのです。

「優勝劣敗」を座右の銘としてスピーチするなら
「優勝劣敗」を座右の銘としてスピーチする際には、単に言葉の意味を説明するだけでなく、自身の人生経験と結びつけることが大切です。聞き手に威圧的な印象を与えないよう、謙虚さと深い洞察を込めて語ることが求められます。以下に「優勝劣敗」を取り入れたスピーチの例をあげます。
変化を恐れず、学び続ける決意についてのスピーチ例
私の座右の銘は「優勝劣敗」です。いささか物騒な、厳しい響きに聞こえるかもしれません。「今さら勝ち負けにこだわるのか」と笑われるかもしれませんね。ですが、私はこの言葉を、単なる「弱肉強食」の意味では捉えておりません。
この言葉の根底にあるのは、ダーウィンの進化論です。
かつて地球上で生き残ったのは、最も体が大きな恐竜でも、最も力の強い猛獣でもありませんでした。環境の変化に最も適応できた生物たちでした。つまり、本当の「優勝」とは、他者を打ち負かすことではなく、「昨日の自分よりも成長し、変化する時代にしなやかに適応すること」だと私は解釈しています。
私たち世代は、どうしても「昔のやり方」に固執してしまいがちです。しかし、世の中は凄まじいスピードで進んでいます。「もう歳だから」と変化を拒絶した瞬間、私たちは「劣敗」の道を歩むことになるのかもしれません。
私はこれから、組織という看板を下ろします。しかし、学びの道に終わりはありません。新しい趣味、新しい技術、そして新しい世代の価値観。これらを柔軟に取り入れ、変化を楽しみながら、最後まで自分自身を「優勝」の方向へ導いていきたい。そう願っております。
最後に
「優勝劣敗」という言葉は、見方を変えれば、「いくつになっても、人は変われるし、成長できる」という力強いエールになります。私たちサライ世代にとって、本当の敵は他者ではなく、変化を恐れる自分の心の中にいるのかもしれませんね。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











