『サライ』本誌連載「半島をゆく」の装画を担当している日本画家・北村さゆりさんによる、取材同行エッセイをお届けします。
文・画/北村さゆり
長崎県西海市内でふたつの像を見た。横瀬浦公園では、ルイスフロイス像。もうひとつは天正遣欧少年使節の一人中浦ジュリアンの生家跡付近に建つ中浦ジュリアン像だ。
街で見かける偉人像が、本人を目の前にして作られるケースは少ない。
歴史上の人物は写真や絵が残っていたらラッキーで、作画する場合は、参考資料として活用する。だけど大概は文献を読み込んで作者の主観で創られる。
時代考証やふさわしいポーズを決めるまでの制作過程を考えると、誰もができることではない。
制作者にとっては大きなプレッシャーではあるけど、名誉ある仕事になる。実際に出来上がった像は、末長く大切にされ街の景色になる。
実際に公園で像を見た私は、衣装を決めるのは難しかったろうなぁ〜なんて考えながらみていた。もっと素直に見るべきだったなぁ。
3本の煙突のようなスケッチは、旧海軍佐世保鎮守府の無線送信所として建設されたコンクリート製の電波塔。針尾無線塔と言い、大正11年(1922)に完成したもの。高さ・古さともに日本一。重要文化財に指定され、横瀬浦の景色には馴染んでいた。
文・画/北村さゆり
昭和35年、静岡県生まれ。日本画家。『利休にたずねよ』『三鬼』など小説の挿絵も担当。著書に『中世ふしぎ絵巻』など。
http://kitamurasayuri.jp/profile