取材・文/坂口鈴香
昨年末、鹿児島の有料老人ホームで入居者の死亡が相次いだという報道に、またかという思いをした人も多いのではないだろうか。原因は解明されていないものの、介護職員全員が一度に辞めたことが影響しているのではないかと言われている。死亡者と直接のかかわりは証明できないとはいえ、その後、別の入居者に対する介護放棄も指摘された。結局このホームは閉鎖されることが発表された。
このホームは「住宅型有料老人ホーム」で、外部の介護事業所から訪問介護サービスを受けるタイプなので、介護が必要な入居者がまったく介護サービスを受けられなかったとは考えにくい。とはいえ、介護職員が一人もいなくなったという状態は異常だ。
(「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」などの違いは「有料老人ホームとサ高住の違いは? 『老後の住まい』7種類の違いまとめ」で解説している)。
筆者がこれまでに見学した有料老人ホームでも、「数年前にほとんどの職員が辞めたらしいが、問題を抱えているのではないか」という噂を聞いたことがある。介護関係者の間でそうした噂が流れていて、そのホームの介護サービスの質が保てているか危ぶまれていながら、入居を検討している人には把握できないのは問題だ。ましてや入居後にそうした状態になると死活問題である。
有料老人ホームに限らず、高齢者施設では介護職員が入居者の生活の質を左右する。終の棲家を選ぶ際、もっとも重要なポイントだろう。
今回は、信頼できる職員がいるホームかどうかを見極めるポイントをお伝えしたい。
●見学でチェックするポイント
百聞は一見に如かず。直接自分の目で見て、ホームや職員の雰囲気を感じ取ることが一番。とはいうものの、一回の見学だけで職員の質を見極めるのは簡単ではないのもまた事実だ。それでもセオリーはある。
それが、「目を見て挨拶をしてくれるか」「笑顔はあるか」だ。漠然としているようだが、評判の良いホームは、職員の印象も良い。
それから、昼食の試食ができるようなら、入居者が食事をする場で食事をしてみよう。要介護者のペースで、食べ物を口に入れているか、話しかけているか。ご飯もおかずも、すべて混ぜて食べさせたりしていないだろうか。介護が必要な入居者への対応を見ていれば、適切な介護サービスが提供されているかどうかはある程度把握できるはずだ。
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