取材・文/池田充枝
春日若宮おん祭は、奈良の歳末を飾る祭事として、人々に親しまれています。
この祭は春日大社の摂社である若宮神社の祭礼で、創始以来大和国一国を挙げて盛大に行われてきました。祭礼が行われるのは、室町時代から11月27日に、明治11年(1878)からは現行の12月17日と変わりながらも、古儀の伝統を守り続けて現在に至っています。
おん祭の歴史と祭礼の様子を紹介する展覧会が開かれています。(2019年1月20日まで)
本展では、風流行列の様子を描く絵巻とともに、祭礼に参加する大和士(やまとざむらい)の潔斎の場であった大宿所(おおしゅくしょ)について取り上げ、また祭礼でにぎわう奈良町の様子を紹介します。
本展の見どころを、奈良国立博物館の学芸部、斎木涼子さんにうかがいました。
「おん祭のご祭神である若宮神は、平安時代の長保5年(1003)に現れたとされます。そしておん祭は長承4年(1135)の若宮社の創建・御遷座を承け、翌保延2年(1136)に始まり、今年で883年目を迎えます。
本展覧会は、おん祭が開催される期間に、祭礼の様子とその歴史を紹介する恒例の企画です。
今回は、華やかな風流行列を中心としたおん祭の様子を描く絵巻を数点展示します。御仮殿に一日だけ遷座する若宮神のもとに芸能者や祭礼の参加者が詣でる風流行列は、時々の風俗や流行を取り入れながら行われてきました。田楽、舞楽、猿楽などの華やかな芸能が行われるのも特徴で、昭和54年(1979)には「春日若宮おん祭の神事芸能」として国の重要無形民俗文化財に指定されています。
また、祭礼参加者の潔斎の場であった大宿所にもスポットを当てます。若宮神に奉納される流鏑馬を奉仕する人々、願主人(大和士)たちは、大宿所において精進潔斎を行いました。一方、ここには若宮神に捧げるため、大和国中から集められた懸物(供物)が並べられ、また町の人々が見物に訪れるにぎやかな空間でもありました。絵画資料や古文書で、大宿所の様子やおん祭の裏側をご紹介します。
さらに、若宮神を含む春日社の神々への信仰が、人々に広く浸透していく中で作られた様々な絵画もご紹介します。」
一度は見物してみたい「おん祭」。実際の祭見物とともに、本展でより深く理解して楽しんでみてはいかがでしょうか。
【開催要項】
特別陳列 おん祭と春日信仰の美術―特集 大宿所―
会期:2018年12月11日(火)~2019年1月20日(日)
会場:奈良国立博物館 東新館
住所:奈良市登大路町50(奈良公園内)
電話番号:050・5542・8600(ハローダイヤル)
https://www.narahaku.go.jp
開館時間:9時30分から17時まで、金・土曜日(12月28・29を除く)は20時まで、12月17日は19時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:12月25日(火)、1月1日(火・祝)、1月7日(月)、1月15日(火)
取材・文/池田充枝