文・写真/南野真琴(海外書き人クラブ/オーストラリア在住ライター)
オーストラリア南東部に位置するメルボルン。シドニーやケアンズに比べるとマイナーではあるが、実はメルボルンは世界住みやすい街ランキングに7年連続で1位に選ばれたことのある、なんとも魅力的な街なのだ。
緑豊かな街並みにヴィクトリア調の建物。思い思いの時間を過ごす人々で賑わう広い公園。街角にあるパブには毎晩人が溢れ、コーヒーの香りが漂うカフェに早朝から常連客が集まる。
メルボルンを語る上で外せないのがコーヒー。元々イタリアンコーヒーが主流だったこの地にスペシャリティコーヒーが根付いたのはおよそ10年前のこと。
現在はいたるところにカフェがあり、世界中から集まるハイレベルなバリスタが淹れてくれる極上の一杯を気軽に楽しむことができる、コーヒー好きにはたまらない街なのだ。
今回は、そんなメルボルン独自のコーヒーメニューをご紹介しよう。
・オーストラリアのコーヒーの全般的な特徴
オーストラリアでは、エスプレッソを用いたコーヒーが主流である。
コーヒーは大きく分けて「ブラックコーヒー」、「ホワイトコーヒー」があり、そこからロングブラック、カフェラテなどに細分化されている。カフェには大きなエスプレッソマシーンがあり、注文が入ってからバリスタが一杯ずつ丁寧に淹れてくれる。
日本で主流のドリップコーヒーやサイフォンコーヒーはほとんど見当たらないが、最近はハンドドリップコーヒーを扱う店も増えてきている。
・オーストラリアのカフェでの「ブラックコーヒー」とは?
日本と同様、ミルクを加えないコーヒー。ただし前述のようにカフェではドリップやサイフォンではなく、エスプレッソマシンで淹れるのが普通だ(ちなみに家庭ではエスプレッソマシンだけでなくインスタントコーヒーも用いられ、ミルクなしの場合はいずれも「ブラックコーヒー」と呼ばれる)。
その「ブラックコーヒー」は主に下記の二つに分けられる。
・ショートブラック
シングルのエスプレッソを指す。昼食後はショートブラックに砂糖をたっぷり入れて、眠気を覚まして午後の仕事に向かう人も多い。
・ロングブラック
エスプレッソをお湯で薄めたもの。日本ではアメリカーノと呼ばれることが多い。酸味が強いものが多く、すっきりとして飲みやすい。ドリップコーヒーが主流でないオーストラリアで、日本風のブラックコーヒーを楽しみたい人におすすめ。
・オーストラリアのカフェでの「ホワイトコーヒー」とは?
ホワイトコーヒーの「ホワイト」はミルクを指す。エスプレッソにスチーミングしたミルクを注いだドリンクを一括してホワイトコーヒーと呼び、ほとんどの店で綺麗なラテアートで提供してもらえる。
日本でよく目にするカフェラテもホワイトコーヒーのひとつ。
ミルクをスチーミングする際にできるなめらかな泡をフロスと呼び、フロスやエスプレッソの量の違いから、カフェラテの他にも数種類のメニューが存在する。
・フラットホワイト
オーストラリア・ニュージーランド発のメニュー。見た目は日本で提供されるカフェラテと似ているが、カフェラテよりフロスが少なく、口当たりがなめらかで飲みやすい人気の一杯。カップに対して平ら(Flat)に注がれることからフラットホワイトと呼ばれる。
・カフェラテ
日本でも人気の高いカフェラテは、オーストラリアではラテグラスと呼ばれるフラットホワイトより一回り大きなグラスで提供されることがほとんど。カプチーノよりフロスが少なく、フラットホワイトよりもミルキー。
・カプチーノ
カフェラテよりさらにフロスが多いカプチーノ。
ふわっと盛り上がるフロスの上にココアパウダーが乗った、上記2種より少し甘いドリンク。たっぷりのフロスをスプーンですくって食べるのがメルボルン流。
・マジック
メルボルンオリジナルのコーヒー。
リスレットと呼ばれる通常のエスプレッソより水分量が少なく、よりコーヒーのうまみを感じられるエスプレッソ2ショットにミルクを注いだもの。カフェラテやフラットホワイトよりさらに小さいサイズのカップで提供されるため、コーヒーの風味をしっかりと感じられる。筆者一押しメニュー。
・ピッコロラテ
日本では恐らくほとんど目にすることのないピッコロラテ。小さなラテグラスに、エスプレッソと少量のミルクを注いだもの。エスプレッソとミルクの量がほとんど同量のため、コーヒーの風味が非常に強い。
【番外編】
・ベイビーチーノ
名前の通り、ベイビーのためのカプチーノ。
カプチーノのエスプレッソ抜きといったところ。ショートブラックと同じサイズの小さなカップに、マシュマロを添えて提供されることが多い。
カフェ文化が根付くメルボルンでは、小さな子どもたちもカフェの楽しみ方を知っているのだ。
・アイスコーヒー
エスプレッソ、ミルク、アイスクリームに氷が入った、カフェオレフロートのようなものをアイスコーヒーと呼ぶ。日本のようにブラックのアイスコーヒーを想像していると全く違うものが出てくるのでご注意。ちなみに、ブラックのアイスコーヒーが欲しい場合は「アイスロングブラック」とオーダーすると良い。
・カフェの営業時間にご注意
メルボルンの人々にとってのコーヒータイムは午前中。そのためカフェの営業時間も特徴的で、朝の6時~7時ごろにオープンし、昼の3時~4時にはクローズしてしまう。
私たち日本人にとってのコーヒータイムはまさに3時ではないだろうか? そんな一番コーヒーを飲みたい時間にほとんどの店が閉まってしまうので、メルボルンのカフェを訪れる際には、閉店時間を要チェック。
・メルボルンでは誰もが知る大人気店!絶対に訪れたいカフェ3店をご紹介
1店舗目は、言わずと知れた有名店、「St. Ali Coffee Roasters」(https://stali.com.au)。
メルボルンの中心地からは少し離れたサウスバンクという地域にありながらも、連日大勢の客で賑わう。
2018年度オーストラリアラテアートチャンピオンに輝いた日本人バリスタも所属している同店。自家焙煎されたコーヒー豆を使用しバリスタが淹れてくれるコーヒーは、一口飲んで違いが分かるはず。
12-18 Yarra Pl, South Melbourne VIC 3205
2店舗目は、メルボルンで6店舗構える「Market Lane Coffee」 (https://marketlane.com.au)。
比較的足を運びやすいクイーンビクトリアマーケット店は、テイクアウト専門店にも関わらず連日コーヒーを求めて大勢の客が列を作る。コーヒーを飲みながらマーケットを散策するのがおすすめ。
同店でも日本人がヘッドロースターとして活躍している。
Queen Vic Market店
Shop 73-76 Dairy Produce Hall
Melbourne 3000, Victoria Australia
3店舗目は、倉庫を改装した広々とした空間が魅力的な「Seven Seeds」 (https://sevenseeds.com.au)。
メルボルン中心地の隣に位置するカールトンという地域にある同店。住宅街にあり目立った看板もないため、うっかりしていると通り過ぎてしまうのでご注意。
広々とした店内はいつも大勢の人々で賑わっている。自家焙煎された新鮮なコーヒーを味わうことができる。
114 Berkeley St, Carlton VIC 3053
コーヒーの街メルボルンを歩けば、いたるところでカフェを目にするだろう。お気に入りのカフェを見つけて、気持ちの良い朝のはじまりに、ひと息つきたい午後に、とっておきの一杯を愉しみたい。
文・写真/南野真琴
メルボルン在住のライター。デザイン会社のコピーライターを経てフリーに。海外書き人クラブ(http://www.kaigaikakibito.com/)所属。