取材・文/関屋淳子
今年、建国150周年を迎えて何かと話題になっているカナダ。今回ご紹介するトロントは、カナダの東部、オンタリオ州の州都で、カナダでは最大、北米ではニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに次ぐという大都市です。
日本ではどちらかというと、留学やワーキングホリデー先の人気都市として有名ですが、観光面についてはあまり知られていません。そこで今回は、前回、前々回に続き、知られざるトロントの魅力についてご紹介します。
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年間1400万人以上が訪れるという世界一著名な滝「ナイアガラの滝」があるナイアガラへは、トロントの市内や空港からバスが出ています。
カナダのオンタリオ州とアメリカのニューヨーク州にまたがる大瀑布は、間近で見るとその迫力に言葉を失うほどです。水量は地球上の淡水の1/5が流れるというほどで、壮大な光景が展開されます。
700人乗りのボートで滝のすぐ近くまで寄れば、轟音と凄まじい水しぶきで、カッパを着ていてもびしょ濡れになりますが、全身マイナスイオンに包まれます。
さらに滝を楽しむならば、滝の裏側を見に行ったり、ヘリコプターで上空から眺めたりするのもおすすめです。
エレベーターで約46m下降して見る滝の裏側は、何とも神秘的。手が届くほどの距離でナイアガラの滝を感じることができます。
ヘリコプターで上空からナイアガラの滝を遊覧すれば、この滝の全景がよくわかります。水力発電施設や可動堰なども見られ、規模の大きさを実感できます。
ナイアガラの滝を見物にいったら、ジップラインのアトラクション体験がオススメです。2016年できたばかりの新しいアトラクションで、これによってナイアガラの滝観光の魅力は倍増したと言ってよいでしょう。
ジップラインとは、渓谷などに長いワイヤーを張り、そこを一直線に滑車付きのロープでぶら下がって降りていくもの。ナイアガラの滝のジップラインは、長さは670mのワイヤーを時速は40㎞くらいで滑り降ります。そのスリルと開放感は抜群で、皆さんキャーキャー声をあげながら滑り降りていました。
ちなみに、ナイアガラは約100ものワイナリーがあるワインの産地でもあり、世界的にも評価が高い“アイスワイン”などを醸造しています。
アイスワインとは甘いデザートワインの一種で、自然に凍ったブドウで造ります。ブドウは凍ることで水分が減り、果汁が凝縮されて糖度が上がり、極甘になります。気温がマイナス8度以下になる12月~1月に、手摘みで収穫されたブドウによって、強い甘みと香りを持つアイスワインが出来上がるのです。
ナイアガラは、冬はマイナス15度まで気温が下がることや石灰岩の土質など、アイスワイン造りには最適な場所。まさにカナダの大自然が生み出した、極上のアイスワイン産地なのです。
そんなナイアガラのワイナリーのひとつ「シャトー・デ・シャーム・ワイナリー」を訪ねました。こちらのオーナーは1963年にフランスからカナダに渡り、1971年に創業。年間にボトル100万本ほどを製造し、赤と白が半々で、アイスワインは1割ほどだそうです。
瀟洒な邸宅のようなシャトー内でワインを試飲させていただきます。白はリースリングやシャルドネ、赤はガメイなどの品種を使うとのこと。リースリングは酸味がありお寿司に合いそうな味わいでした。
アイスワインは赤と白を造っているということですが、白のほうはヴィダルという皮が強いアイスワイン用の品種でつくられ、蜂蜜のような甘みとアプリコットのような香りを感じました。アイスクリームにかけたいような味です。
また珍しい赤のアイスワインは、品種はカベルネソーヴィニヨンとカベルネフランを使って作られ、チェリーのような甘みとふくよかな香りが口福のひとときを感じさせてくれました。
ちなみにこのワイナリーには日本人スタッフがいて、1日1回(11時15分)日本語のツアーも行われています。
ナイアガラの滝周辺は、ホテルやカジノ、エンターテインメント施設が充実する大観光地です。トロントから足を伸ばすのもよいですが、ここに泊まってじっくり楽しむのも一興です。
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知られざる魅力いっぱいのトロントの街。次の旅先として、検討してみてはいかがでしょうか。数日間のんびりと街の中に溶け込み、トロントニアンになる。そんな上級の旅もいいものです。
【参考リンク】
トロント観光局 http://www.seetorontonow.com
※日本語サイトもあります>> http://seetorontonow.jp/(日本語)
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。