取材・文/池田充枝
料紙(りょうし)とは、一般に書に用いる紙をさします。日本では原料によって麻紙、楮(こうぞ)紙、斐(ひ)紙、三椏(みつまた)紙などがあります。
料紙の歴史は奈良時代まで遡り、「漉(す)き染め」「吹き染め」などの染紙や、金や銀の細かい箔を散らしたものなど、美しく飾られた装飾料紙がありました。
平安時代には、和歌や物語を書くのにふさわしい優雅で繊細な紙が求められ、型文様を施した雲母(きら)摺り、蝶や鳥の下絵や漉き模様など、独特の技法でさまざまな意匠を凝らした料紙が登場し、技法もさらに発展していきました。こうした装飾料紙は、千年を経た今も美しさを損なわずに伝えられています。
そんな美しい料紙に書かれた書の名品を一堂に集めた展覧会『はじめての古美術鑑賞 -紙の装飾-』が、東京・青山の根津美術館で開かれています(~2017年7月2日まで)。
本展は、日本の古美術はすこし敷居が高いという声に応えて根津美術館が企画した「はじめての古美術鑑賞」シリーズの第2回目で、「読めない」という理由から敬遠されがちな書の作品にアプローチする一つの方法として、書を書くための紙、料紙に焦点をあてています。
華麗な色や金箔、あるいは雲母によるさまざまな装飾技法を、所蔵作品を中心に分かりやすく解説。国宝「無量義経」はじめ、奈良時代から江戸時代にいたる書の名品が並びます。
本展の見どころを、根津美術館の学芸部長の松原茂さんにうかがいました。
「染め・摺り・金銀箔散らしなどの多彩な技法を駆使して書を書く紙を飾る料紙装飾は、日本で独自の発展をとげました。今回の展示は、当館のコレクションを中心に、さまざまな技法を駆使した作品をご覧いただきます。
なかでも、それ自体ほとんど透明なため、光の角度によって見えたり見えなかったりする雲母(きら)による装飾は、とくに平安時代の宮廷貴族たちに好まれました。本展では、見え隠れする雲母の装飾を照明の工夫で実際に見ていただきます。また、紙質や装飾の異なる複数の紙をパッチワークのように継いで一枚の紙に仕立てる継ぎ紙の技法は、そのセンスが光ります。印刷ではわからないその立体感をぜひ作品でお確かめください。
日本人の美意識を凝縮したかのような料紙装飾の豊潤な世界を体感して、書の作品のあらたな魅力に触れていただきたいと思います」
日本ならではの美意識がちりばめられた書の世界。会場でじっくりとご鑑賞ください。
【展覧会】
『はじめての古美術鑑賞 -紙の装飾-』
会期 | 2017年5月25日(木)~7月2日(日) |
会場 | 根津美術館 http://www.nezu-muse.or.jp |
住所 | 東京都港区南青山6-5-1 |
電話番号 | 03-3400-2536 |
開館時間 | 10時から17時まで(入館は16時30分まで) |
休館日 | 月曜日 |
取材・文/池田充枝