伊豆の東の玄関口・熱海温泉。言わずと知れた名湯です。今から約1250年前に開湯し、徳川家康をはじめ歴代の徳川将軍に愛され、「御汲湯(おくみゆ)」として江戸城まで温泉が運ばれました。
約90度の高温の温泉が、強靭な男衆により15時間ほどで運ばれ、江戸城に着くころにはちょうど良い湯加減になっていたそうです。
明治以降は尾崎紅葉の「金色夜叉」などにより、その名が全国区に。昭和30年代には新婚旅行のメッカとなりました。泉質は塩化物泉と硫酸塩泉。肌にやさしいアルカリ性の温泉で、湯量も豊富。よく温まり婦人病などに効用があります。
早春の熱海といえば、熱海梅園の梅が有名ですが、もうひとつ、ぜひ楽しんでいただきたいのが、「あたみ桜」です。
花色の濃いピンク色の桜の種類は、台湾や沖縄に咲くカンヒザクラとヤマザクラの交配とされ、明治4年頃にイタリア人によってレモンやナツメヤシとともに熱海にもたらされました。その後増殖が行われ、現在は熱海市の木に指定されています。
1ヶ月ほど花が楽しめ、JR熱海駅から徒歩15分ほどの糸川遊歩道では、1月24日~2月15日まで桜まつりが行なわれます。
早春を飾る桜と梅という2つのお花見を愛でに、出かけてみてはいかがでしょう(写真は「星野リゾート 界熱海」の露天風呂と「あたみ桜」)。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。