大正、昭和初期にかけて活躍した美術家、小村雪岱(1887-1940)は、日本画や書籍の装幀、挿絵や映画の美術考証、舞台装置にいたるまで幅広く手掛け、情趣溢れる端麗な画風から「昭和の春信」と称されました。

あべのハルカス美術館で開催の「密やかな美 小村雪岱のすべて」は、約600点の作品や資料から、雪岱の画業を余すところなく紹介する過去最大規模の展覧会(前・後期で大幅な展示替えあり)です。(12月27日~2026年3月1日)

《おせん》 昭和16(1941)年頃 ※没後の刷り(木版、紙)埼玉県立近代美術館蔵 ◎前期展示

本展の見どころを、広報事務局にうかがいました。

「本展のタイトルにもあるように、雪岱の真骨頂ともいえる「密やかな美」の世界を味わうことができる《青柳》《雪の朝》は、雪岱が10代を過ごした明治期の日本橋の情景をもとに描かれた作品と言われます。江戸の面影が残る東京に、モダンさと柔らかな色彩を取り入れる独自のスタイルで「日本橋」の季節のうつろいを表現した代表作です。今回、日本画家としての一面に光を当てた展示も見どころのひとつです。

《青柳》 大正13(1924)年頃 絹本着色
埼玉県立近代美術館蔵 ◎前期展示
《雪の朝》 大正13(1924)年頃 絹本着色
埼玉県立近代美術館蔵 ◎後期展示

東京美術学校で日本画を学んだ雪岱は、装幀や挿絵の仕事で多忙を極めながらも、晩年まで日本画を描き続けました。美術学校で学び、模写の仕事を通して、古画の優品と出会えた経験は、「迷いのない線描」「俯瞰の構図」「美しい色づかい」など、雪岱のスタイルの核となっています。本展では、初期から晩年までの日本画家としての雪岱の魅力に迫ります。

《春告鳥》 昭和7(1932)年 絹本着色 個人蔵(埼玉県立近代美術館寄託)◎前期展示

明治末から大正にかけて、洋装本の需要が高まるなかで、出版社は装幀のデザインに画家を起用し、意匠をこらした書籍を次々と世に出しました。

1914年、雪岱は泉鏡花作『日本橋』で装幀家デビューをしています。鏡花の幻想的な世界を見事に表現した装幀で、以降、鏡花本を中心に200冊を超える装幀本を手がけています。

泉鏡花『日本橋』装幀:小村雪岱 大正3(1914)年 千章館(有)田中屋蔵 ◎後期展示

多彩なジャンルで活躍した雪岱ですが、どの分野でも貫かれている独自の世界観に魅了されます」

こころ洗われる静寂な世界が広がります。ぜひ会場に足をお運びください。

【開催要項】
密やかな美 小村雪岱のすべて
会期:前期/2025年12月27日(土)~2026年2月1日(日)
   後期/2026年2月3日(火)~3月1日(日)
   ※会期中展示替えあり
会場:あべのハルカス美術館
住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス16階
電話:06・4399・9050
公式サイト:https://www.aham.jp/
開館時間:火~金10時~20時、月・土・日・祝日は~18時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:12月31日(水)、2026年1月1日(木)、2月2日(月)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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