
日本酒は幅広い温度帯で楽しめるお酒です。特に寒さで凍える季節には、熱燗にした日本酒の温もりが心と体を癒してくれます。すっきりした冷酒とは異なり、熱燗にすることで日本酒の旨味や香りが開花し、新たな味わいの世界が広がって、おすすめです。
文/山内祐治
目次
熱燗で楽しむ日本酒。向き不向きを知って選び方をマスター
熱燗おすすめ銘柄で本格的な味わいを堪能
熱燗に合う日本酒をスーパーで手軽に楽しむ
熱燗に合う日本酒。甘口で優しい味わいを楽しむ
熱燗に合う日本酒。辛口でキリッとした味わいを満喫
熱燗に合うおつまみで相性の良さを発見
ぬる燗で美味しい日本酒で上品な味わいを楽しむ
まとめ
熱燗で楽しむ日本酒。向き不向きを知って選び方をマスター
熱燗に向いている日本酒と向いていない日本酒は、香りと味わいで捉えていくとスムーズです。
一般的に熱燗に向かないと言われている日本酒は、吟醸香が強いものです。特にカプロン酸エチルというリンゴや洋梨のようなフルーティーな香りが強いお酒は、熱々にするとバランスが崩れやすくなります。
逆に、熱燗に向く日本酒は、お米の旨味がしっかりと出ているタイプです。熟成したお酒や、温かいご飯のようなふっくらした印象があるお酒は、熱燗にすることで香りや味わいが豊かに広がります。
味わいの面では、日本酒に含まれる酸のうち、重要な4つの酸(クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸)が重要な役割を果たします。クエン酸とリンゴ酸は温度が上がると渋みや苦みを感じやすくなるとされており、乳酸とコハク酸は一般的には「温旨酸」とも呼ばれ、40度程度に温めると柔らかい旨味を作り出します。
熱燗おすすめ銘柄で本格的な味わいを堪能
熱燗におすすめの銘柄として、乳酸やコハク酸が多く含まれているお酒はいかがでしょうか。
先程の流れから言って、伝統的な醸造スタイルのお酒として「生酛(きもと)」や「山廃(やまはい)」と呼ばれる製法で作られた日本酒がおすすめとして挙げられます。これらの製法では乳酸が多く生成されるため、温めることで柔らかい酸と旨味のバランスが際立ちます。
具体的な銘柄では、「大七」(大七酒造)、「末廣」(末廣酒造)に代表される生酛・山廃系の銘柄です。加えて、「剣菱」(剣菱酒造)も熱燗の代表格として外せません。これらの銘柄は味わいがしっかりしており、蔵も燗を推奨しています。熱々のお燗にするとバチッとハマる感覚を楽しめます。
熱燗に合う日本酒をスーパーで手軽に楽しむ
スーパーで購入できる熱燗向きの日本酒なら、まず「黒松剣菱」が筆頭に挙げられます。味わいがしっかりしたお酒で、超熱々のお燗にするのもおすすめです。
「黒松剣菱」の一号瓶(180ml)は、実は電子レンジでお燗をつけるのにちょうどよいフォルムです。栓を開けて電子レンジ(500W)で温めるだけで、手軽に美味しい熱燗を楽しめます。

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また、スーパーでは「菊正宗」の樽酒も見つけることができます。樽の香りが移った日本酒を熱々でお燗にすると、また冷酒とは異なる風味を楽しめるのでおすすめです。
スーパーで買えるお酒は手軽さが魅力で、日常的に熱燗を楽しみたい方には最適な選択肢です。
熱燗に合う日本酒。甘口で優しい味わいを楽しむ
もしも甘口の日本酒で熱燗を探しているなら、群馬の土田酒造のお酒が特におすすめです。甘旨口で柔らかく、お燗をつけると非常に相性が良い味わいになります。
土田酒造の季節酒「プリンセスサリー」は、お燗にするとスパイス料理との相性も抜群です。もともと味わいがしっかりしているため、温めることでより一層の深みを楽しめます。使用米のエピソードも含めて、とても面白さのあるお酒です。
石川の宗玄酒造の「生原酒」も、少し熟成させてからお燗をつけると面白い味わいになります。新潟の酒蔵で、「菊水しぼりたて生原酒」も、ぜひお試しください。フレッシュな味わいをあえて温めることで、甘さとのバランスが取れた良質な味わいを楽しめます。
甘口の日本酒は度数が高いものもあります。それらを探して、ぬる燗や、熱燗まで上げた温度から戻していく燗冷ましなどでゆっくりと楽しむのがポイントです。
熱燗に合う日本酒。辛口でキリッとした味わいを満喫
辛口の熱燗を楽しみたい場合は、温度を高めにすることでピシッと締まった味わいを作り出すことができます。
「黒帯」や「菊正宗」の生酛の特別本醸造は、お燗にするとかなり引き締まって一層美味しくなります。手軽に購入できる価格帯でありながら、しっかりとした辛口の熱燗を楽しめます。
鳥取の日本酒も辛口で締まった味わいのものが多く、熱燗におすすめです。「扶桑鶴」(桑原酒場)、「諏訪泉」(諏訪酒造)、「鷹勇」(大谷酒造)などの銘柄は、高めの温度にお燗をつけると美味しい辛口の味わいを楽しめます。
熱燗に合うおつまみで相性の良さを発見

特に温度帯の高い熱燗はアルコール感をしっかりと感じられるため、脂を切るような感覚で楽しめるおつまみが最適です。例えば、タレのついた焼き鳥は熱燗との相性が抜群です。甘辛いタレの味わいと熱燗のアルコール感が絶妙にマッチします。また脂の乗った魚、特に冬場のブリに九州の甘醤油を合わせた刺身は格別です。
さらに旨味や香ばしさがある熱燗には、塩味のある珍味がよく合います。塩辛やいしるなどの発酵食品・発酵珍味は、熱燗との相性が非常に良いおつまみです。
手軽に楽しみたい場合は、コンビニでおでんと「剣菱」を買うだけでも十分楽しめます。出汁割りにすることも可能で、バリエーション豊かな楽しみ方ができます。
ぬる燗で美味しい日本酒で上品な味わいを楽しむ
ぬる燗(40度程度)で美味しい日本酒は、熱燗とは異なる上品な味わいを楽しめます。
精米歩合を上げて磨いたお酒は、ぬる燗により面白い味わいを見せます。「九頭龍(くずりゅう)大吟醸」(黒龍酒造)は、蔵が燗向きとしてリリースしたお酒で、柔らかくぬる燗につけると絶品です。
また、フレッシュでフルーティーなお酒も、飲み疲れた時などに敢えて燗をつけると新しい発見があります。味変として燗をつけるのも面白い楽しみ方だと思います。
一般的にフルーティーなお酒は熱燗には向きませんが、ぬる燗だと香りと甘さがマッチしてバランスが取れるのです。またチーズと合わせると、口の中でチーズが溶けて絶妙なハーモニーを奏でます。
まとめ
日本酒は冷たくして飲む楽しさもありますが、温めて飲む楽しさも非常に大きなものです。熱燗にすることで、口の中で料理の油を切ったり、旨味を溶かしたりと、様々な楽しみ方ができます。いまは全国燗酒コンテストなどもあり、その結果もふまえて銘柄探しをしても面白いと思います。
手軽に熱燗を楽しみたい方は、スーパー、コンビニで「剣菱」を購入して電子レンジで温めるだけでも十分楽しめます。ほかにも、片口やマグカップ、お椀などでお燗をつけるのも一つの方法です。
大切なのは“気軽に楽しむこと”。日本酒の新たな魅力を発見する第一歩として、ぜひ熱燗に挑戦してみてください。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。
構成/土田貴史











