
年々増える体重をどうにかしようとしても、60歳からはこれまでのダイエットの常識は通じません! 無理なダイエットによる筋肉の減少は、60歳からだと死活問題に。『60歳すぎたら無理なくきれいにやせる』(宝島社)では、ストレッチや筋トレなどの運動をはじめ、食べ方、やせて見える服の選び方など「キレイ」と「やせる」をかなえる方法をトータルで紹介しています。今回は「食」にフォーカスします。まずは、シニアのダイエットを成功させるためにはしっかり食べたほうがよい理由について解説します。
<教えてくれた人>
関口絢子:管理栄養士。「食を通じて世の中を元気に健康に」をモットーに、各種メディアやYouTubeでエビデンスに基づく、美と健康にまつわるレシピを発信中。
シニアが「食べない」と、かえってやせにくくなるわけ
食べないダイエットはシニアにとってリスクがいっぱい。食べたほうがいい理由を知って、罪悪感なくしっかり食べ、無理のないダイエットをしましょう。
1.エネルギーが不足して、元気に活動できない
食べないということは、体を動かすために必要な栄養を摂取するチャンスを逃すということ。特にシニアの場合、加齢に伴って食が細くなったり、好みにより食事が偏ったりするので、必要な栄養は意識的に摂る必要があります。必要な栄養が摂れないと、体を動かすためのエネルギーが不足し、疲れやだるさ、集中力の低下など、さまざまな不調が起こってしまうのです。
2.筋肉量が落ちて、動くどころではなくなる
人間の体にとってなくてはならない3大栄養素の1つであるたんぱく質が不足すると、筋肉量が減ってしまいます。筋肉量の減少に伴い、筋力も低下し、歩行など日常生活の動作にも支障が出たり、転倒などのリスクも高まったりしてしまいます。加齢によっても筋肉量は減少するので、筋肉をつくるためにもしっかりと毎日の食事から必要な栄養素を摂取することが大切です。
3.「食べない」ことで消費するエネルギーが使われない
食後になんだか体がぽかぽかすると感じたことはありませんか? 実は、体は食べることでエネルギーを摂っているだけでなく、食事という行為によってエネルギーの消費もしているのです。これは食事によって摂り入れた栄養素が体内で分解され、その一部が体熱となって消費されることによるものです。食べないとこのエネルギー消費が起こらず、やせにくい体になってしまいます。
4.血糖値が急上昇し、脂肪がたまりやすくなる
空腹の状態でごはんやパンなど糖質が多い食品を食べると、血糖値が急上昇してしまいます。血糖値が高くなるとインスリンが大量に分泌され、余ったブドウ糖を中性脂肪に変える働きをします。つまり、脂肪がつきやすくなってしまうのです。血糖値のコントロールは血管へのダメージを減らし、肌や脳などの老化予防にもつながるので、血糖値を急激に上げない食生活を心がけましょう。
5.自律神経が乱れると、消化・吸収機能が低下する
朝食を食べることで胃腸が刺激され、睡眠中に優位になっていた副交感神経から交感神経へ切り替えることができます。自律神経のスムーズな切り替えは、メリハリのある活動的な生活を送るためにも不可欠です。自律神経のバランスが乱れると、胃腸の働きが弱まったり、消化不良を起こして便秘になったりして、脂肪が蓄積されやすい状態になってしまいます。
6.食べる楽しみがなくなり、生きる活力がダウン
食事は生きていることを実感できるよろこばしい行為です。100歳以上の方に何を食べているのかを聞くと、「好きなものをなんでも食べる」と答える方が多いです。食べないことで、体だけでなく心も元気がなくなってしまい、活動しようという意欲が失われてしまいます。食べられるということは健康だということです。食べて健康を維持しつつ、やせやすい体づくりを目指しましょう。
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60歳すぎたら無理なくきれいにやせる
宝島社 1,210円(税込)
