
人の生き方とは様々です。何となく観ていたテレビ番組や新聞の記事などで、とある人物の人生を知り、心打たれることがあります。人様の生き方から学ぶことも多いもの。また、己の生き方と比べ、恥いることもしばしばです。
どこで、人生の違いが生じたのか? 運なのか、チャンスだったのか……。おそらくは、志と運を呼び寄せる努力、そしてチャンスを物にする能力の違いではないでしょうか?
先人たちが残した名言や金言の中に、その答えを見つけることができるかも知れません。今回の座右の銘にしたい言葉は「大所高所(たいしょこうしょ)」 です。
目次
「大所高所」の意味
「大所高所」の由来
「大所高所」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「大所高所」の意味
「大所高所」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「小さな点にこだわらない、広く全体を見通すような観点・視野」とあります。「大所」とは文字通り「広い場所、大きな立場」を、「高所」は「高い場所」を表しています。つまり、「大所高所」とは、「全体を見渡し、高い視点で状況を判断すること」を意味します。
要は、目先の小さなことにとらわれず、広い視野で物事を考える姿勢を示しているのです。
この考え方は、人生経験を積み重ねてきたシニア世代にとって、まさに今日的テーマと言えます。様々な経験や人間関係を経てきた今だからこそ、視野の広さを自らの強みにしていきたいですね。
「大所高所」の由来
この言葉の直接的な出典を特定するのは難しいのですが、古くから指導者や賢人が持つべき徳目として、広い視野や大局観の重要性が説かれてきました。例えば、戦略を練る際には、個々の戦術だけでなく、戦全体の状況や長期的な影響を考慮する必要があります。
政治を行なう上でも、一部の利害にとらわれず、国全体の利益や将来を見据えた判断が求められます。こうした文脈の中で、「大所高所」の考え方が育まれてきたといえるでしょう。
歴史上の偉人たちの決断や言葉の中にも、「大所高所」の精神を見出すことができます。彼らは目先の困難や反対意見に屈することなく、より大きな目標や理想を見据えて行動したからこそ、後世に名を残すような偉業を成し遂げることができたのです。
「大所高所」を座右の銘としてスピーチするなら
「大所高所」を座右の銘としてスピーチする際は、言葉の意味を、ご自身の経験や具体的なエピソードを通して分かりやすく伝えましょう。聴き手が共感し、自分事として捉えられるように、独りよがりな表現を避け、謙虚な姿勢で語ることが大切です。以下に「大所高所」を取り入れたスピーチの例をあげます。

シニア世代の視点を取り入れたスピーチ例
私の座右の銘は「大所高所」です。私利私欲にとらわれず、広い視野と高い観点から物事を判断し行動することという意味です。この言葉の素晴らしさは、皆さまが築いてこられた豊かな人生経験の中で、すでに体現されているものと思います。
思い返せば、私たちの世代は「もったいない」「おかげさま」という言葉を大切にしてきました。これらの言葉の背景には、物事を自分だけの視点ではなく、先人や周囲の人々、さらには未来の世代との繋がりの中で捉える「大所高所」の精神があります。
皆さまがこれまで培ってこられた経験や知恵は、次世代に伝えるべき貴重な宝です。時に孫や若い世代との会話で、「昔はね」という言葉で始まる語りの中に、実は「大所高所」からの洞察が含まれているのではないでしょうか。
今日の私たちには、SNSやAIなど情報過多の時代だからこそ、「大所高所」という姿勢が一層重要になっています。日々の小さな喜びを大切にしながらも、時には人生という大きな山の頂から景色を眺める余裕を持ちたいものです。
最後に
「大所高所」という言葉が示す、広く高い視野から物事の全体像を捉える力は、変化の時代を生きる私たちサライ世代にとって、まさに人生の羅針盤となるものです。
目先の利益や感情に流されず、物事の本質を見抜く。それは、日々の暮らしに心の平穏をもたらし、より良い判断へと導いてくれます。また、豊富な人生経験を持つ私たちだからこそ、この「大所高所」の視点を活かし、周囲の人々や次の世代に対して、いい影響を与えていくことができるのではないでしょうか。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
