歴史あるキャンパスには、大人が興味を惹かれる施設や場所が多数ある。医学史、自然誌、演劇、文学から仏教美術まで。大人の好奇心が大満足!

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日比野克彦さん(東京藝術大学学長・66歳)
昭和33年、岐阜県生まれ。日本の現代アートの第一人者。東京藝術大学大学院修士課程修了。令和4年4月、第11代東京藝術大学学長に就任した。
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地域との連携、社会との接続。こうした「大学の新しい形」をアートによって積極的に構築しようとしているのが、東京・上野公園に隣接する東京藝術大学だ。
東京藝大は、明治20年(1887)設立の東京美術学校(官立)と東京音楽学校(官立)の両校が、昭和24年に包括される形で誕生した。言わずと知れた芸術系大学の最高峰である。
令和4年、伝統ある母校の第11代学長に就任したのが、日比野克彦さんだ。
より“開かれた大学”を目指し、日比野学長が就任直後から推進するのが「地域との連携」や「社会との接続」だ。その「象徴」として、大学構内の本部棟1階に昨年10月に設けられたのが、「芸術未来研究場」の一室。日比野学長はこう説明する。
「ここでは、私どもが行なっている活動が“かたち”として見えるようになっています。アートで社会貢献するにはどうするべきか、とずっと考えていますが、まずは地域や企業、社会に対して、自分たちの活動を知ってもらい、相互関係を築くための場が必要です」
ゆえに、「研究所」ではなく「研究場」と名づけたのだという。出入りは自由かつ無料。相撲部屋のイメージから立ち上がった、別室の「藝大部屋」は近隣の街中にあり、ここでは講演やイベントを開催している。
「私どもに限らず、大学は地域や社会との関係を再構築する必要がある。芸術未来研究場は、そのための実験場です」

ロダンや高村光太郎の作品

構内に目を転じれば、その名にふさわしく、あちこちに“アート作品”が点在している。
オーギュスト・ロダンの「バルザック像」や「青銅時代」をはじめ、詩人で彫刻家の高村光太郎による「高村光雲像」など、東京美術学校や東京音楽学校にゆかりのある27もの彫像が構内にあり、キャンパスそのものが屋外美術館のようだ。構内は緑も豊かで、散策する近隣住民も多い。


同大と隈研吾氏設計の「国際交流棟」(音楽学部側構内)は、建物自体がアートだ。正面と内部を、日比野学長が総合ディレクションしたパブリックアートが彩っている。また、構内にある奏楽堂(音楽ホール)や大学美術館では、頻繁に催しが行なわれている。
「この地に足を運んでもらうことで、アートが今まで以上に身近になってもらえたらいいですね」


東京藝術大学上野キャンパス
東京都台東区上野公園12-8
交通:JR上野駅・鶯谷駅、東京メトロ千代田線根津駅より徒歩約10分

