我が国の書籍装幀や新板画の先駆者として知られる橋口五葉は、明治14年(1881)鹿児島に生まれ、明治32年に上京。黒田清輝を中心とした日本初の洋画団体、白馬会研究所を経て、明治34年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学しました。

東京美術学校在学中に夏目漱石と知り合い、漱石の作家デビュー作『吾輩ハ猫デアル』の装幀を手がけて一躍脚光を浴びました。以降、『三四郎』『それから』『門』など漱石作品の装幀を数多く手がけました。

橋口五葉による夏目漱石著作の装幀の数々 撮影:上野則宏

大正期に入ると、五葉は渡邊庄三郎を版元とする、日本の伝統的な版画技術である浮世絵をベースにした現代における版画、新版画の制作に取り組みます。

新版画において新たな表現を追求した五葉ですが、大正10年(1921)、40歳の若さでこの世を去りました。

橋口五葉《髪梳ける女》 1920 (大正9)年 千葉市美術館蔵

足利市立美術館で開催の「橋口五葉のデザイン世界」展は、五葉の豊かなデザイン世界を紹介する展覧会です。(4月5日~5月18日)

本展の見どころを、足利市立美術館の広報ご担当者にうかがいました。

「本展では、橋口五葉が手がけた「漱石本」を一挙に紹介します。
五葉が、夏目漱石の小説家デビュー作である『吾輩ハ猫デアル』の装幀を手がけたのは、弱冠25歳。これは五葉の装幀家としてのデビュー作でもあり、これ以降、漱石のほかにも「日本の本をもっと美しくしたい」という想いのもと、泉鏡花をはじめ日本近代文学を代表する作家たちの装幀を手がけました。

工夫を凝らし、一冊一冊が個性的な仕上がりとなっている五葉の装幀作品の数々をお楽しみください。

橋口五葉による泉鏡花著作の装幀 撮影:上野則宏

また本展では、五葉の絵画作品、新板画作品も併せて紹介します。

明治44年、三越呉服店が懸賞募集した広告図案が第1等になり、大好評を得ました。商業グラフィックのデザイナーとしても活躍した五葉の画業や、新板画への取り組みにみる版画作品も見逃せません」

橋口五葉《此美人》 1911(明治44)年 鹿児島市立美術館蔵

アール・ヌーヴォー、それとも大正浪漫―時代を先導した五葉のデザイン世界を会場でじっくりご鑑賞ください。

【開催要項】
橋口五葉のデザイン世界
会期:2025年4月5日(土)~5月18日(日)
会場:足利市立美術館
住所:栃木県足利市通2ー14-7
電話:0284・43・3131
公式サイト:http://www.watv.ne.jp/ashi-bi/
開館時間:10時~18時(入館は17時30分まで)
休館日:月曜日(ただし5月5日は開館)、4月30日(水)、5月7日(水)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
巡回:府中市美術館(5月25日~7月13日)
   碧南市藤井達吉現代美術館(7月23日~8月31日)
   久留米市美術館(9月13日~10月26日)

取材・文/池田充枝

 

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