横山大観、下村観山とともに岡倉天心の門下として、日本画の革新にまい進した菱田春草(1874-1911)。1890年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に学び、橋本雅邦に師事。卒業後は帝国博物館の委嘱をうけて、古画模写事業に参加しました。その後、天心や大観、観山とともに茨城の五浦(いづら)に移り住み、制作に励みました。

なかでも春草は、従来の日本画に不可欠の輪郭線を廃した無線描法(朦朧体とよばれた)を試みたことで知られます。

しかしながら春草は、《王昭君》《賢首菩薩》《落葉》《黒き猫》(いずれも重要文化財)などの名画を残して36歳の若さでこの世を去りました。

菱田春草《王昭君》 明治35年 善寶寺蔵

福井県立美術館で開催の「生誕150年記念  菱田春草展」は名作《落葉》誕生のいきさつを辿る展覧会です。(9月15日~11月4日)

本展の見どころを、福井県立美術館の学芸員、原田礼帆さんにうかがいました。

「菱田春草生誕150年の節目に開催する本展では、前期に重要文化財《落葉(永青文庫蔵)》を主軸に不朽の名作《落葉》5作品を一堂に展観します。

代々木の森に着想を得て、「画の面白味」と「距離」との問題に取り組んだ春草が「落葉」という主題をそれぞれ異なる角度から捉え、いかにして近代を代表する作品を生み出すに至ったのかをご覧いただきます。

菱田春草《落葉》(右隻) 明治42年 永青文庫(熊本県立美術館寄託)蔵 

また、後期には春草作品から重要文化財《王昭君》や《賢首菩薩》といった人物画の傑作を展示します。

菱田春草《賢首菩薩》 明治40年 東京国立近代美術館蔵

さらに、春草周辺の画家達による自然を描いた作品、そして近代画家たちが顕彰した尾形光琳の《槇楓図屏風》(重要文化財・東京藝術大学)を紹介します。春草の画業を通観するのみならず、同時代の作品を併せて展示することで、常に課題と向き合い、新しい日本画を生み出そうと奮闘した春草の《落葉》誕生の裏側に迫ります。

尾形光琳《槇楓図屏風》 江戸時代(18世紀) 東京藝術大学蔵
岸田劉生《日比谷の木立》 明治45年頃  下関市立美術館蔵

会期中、9月22日(日)に「菱田春草展シンポジウム」の他、11月2日(土)にはナイトミュージアムコンサートなど《落葉》の世界をより深く楽しむことのできるイベントを開催します」

静謐さの中に春草の決意のようなものが感じられます。会場でじっくりご鑑賞ください。

【開催要項】
北陸新幹線福井・敦賀開業企画
生誕150年記念 菱田春草展 不朽の名作《落葉》誕生秘話
会期:2024年9月15日(日)~11月4日(月)
会場:福井県立美術館
住所:福井県福井市文京区3丁目16-1
電話:0776・25・0452
公式サイト:https://fukui-kenbi.pref.fukui.lg.jp/
開館時間:9時~17時(入館は16時30分まで)
※9月15日(日)は午前10時~
休館日:10月15日(火)、10月16日(水)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照   

取材・文/池田充枝

 

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