蕗谷虹児(ふきや・こうじ 1898-1979)は、新潟県で生まれ、1913年に日本画家を目指して上京しますが、竹久夢二の紹介で少女雑誌の挿絵を描くようになると、またたく間に時代の寵児となりました。

1925年に絵を学ぶためにパリに留学しますが、4年後に生活のために帰国。その後の1930年代に手がけたモダンな女性像は、近代的なライフスタイルに憧れる女性たちの象徴となりました。

戦後は、童話や絵本の挿絵のほかにアニメーションの仕事にも取り組みました。

蕗谷虹児
《秋の声『少女倶楽部』第3巻第10号口絵原画》
1925年 蕗谷虹児記念館蔵

平塚市美術館で開催の「大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展」は、60年間におよぶ虹児の画業を約450点の作品で辿ります。(10月5日~11月24日)

本展の見どころを、平塚市美術館の学芸員、家田奈穂さんにうかがいました。

「本展は、大正から昭和にかけて、挿絵や絵本、アニメーションの制作など少女や児童文化の担い手として才能を発揮した蕗谷虹児の画業を振り返る展覧会です。

竹久夢二との出会いをきっかけに挿絵画家の道を歩み始めた蕗谷虹児は、大正期の大きな特徴であった抒情的な雰囲気の色濃い女性像を描くことからその画業をスタートさせ、一躍人気画家となって出版界を席巻しました。

蕗谷虹児《『睡蓮の夢』箱原画》
1924年 蕗谷虹児記念館蔵

やがて時代は、モダンガールの闊歩する1930年代へと突入。パリへの留学を経て帰国した虹児は、時代の先端をいく流行のファッションに身を包み、強い眼差しを持つモダンガールを描くようになり、流行に敏感な同時代の読者の絶大な支持を得ました。

蕗谷虹児《表紙原画(『令女界』第27巻第2号》
1949年 蕗谷虹児記念館蔵

33年ぶりに公開される《胡蝶の夢》、東映動画(現・東映アニメーション)初となるカラーアニメーションで虹児が構成と原画を担当した「夢見童子」の放映も含め、虹児の多彩で魅力的な世界をお楽しみいただければ幸いです」

蕗谷虹児
《さやからとびでた五つぶの豆(『世界名作童話全集 アンデルセン おやゆび姫』挿絵原画》
1942年 蕗谷虹児記念館蔵 

80歳の生涯を通じて理想の少女像を世に送りだした画家の足跡を、ぜひ会場でご覧ください。

【開催要項】
大正・昭和のモダニスト 蕗谷虹児展
会期:2024年10月5日(土)~11月24日(日)
会場:平塚市美術館
住所:神奈川県平塚市西八幡1-3-3
電話:0463・35・2111
公式サイト:https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館)、10月15日(火)、11月5日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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