奈良・長谷寺の本尊と同じ木から刻り出されたという伝説がある、鎌倉・長谷寺の観音菩薩像は、木像としては日本最大級の巨像である。この寺には、紅葉のライトアップをはじめ、12月には魅力的な夜の行事が集中している。今回はこの鎌倉・長谷寺の年末の美景をお届けしよう。
文・写真/原田 寛
■1:池面に映る紅葉(鎌倉市長谷)
長谷寺は、鎌倉を代表する紅葉名所のひとつで、むろん昼間の紅葉も十分見応えがある。ただ、鎌倉で唯一紅葉ライトアップが実施されている寺だけに、できれば夜の境内を存分に堪能したい。
以前は夕方一度閉門していたが、最近は閉門時間をそのまま夜間まで延長する方式になっているので、夕方早めに境内に入っておくと安心。昼間の紅葉をゆっくり楽しみながら日没を待つと良い。
■2:新年の準備を整える歳の市
長谷寺の歳の市は、12月18日に開催される。参道両側に並ぶ露店で、年迎えの縁起物を購入しながら境内を目指す。日頃は閉鎖されている山門だが、当日は特別に開扉されているので、大きな提灯が灯っている下をくぐって境内へ。この日は拝観料も無料となる。
歳の市の期間中、特別に観音堂内で「御足参り」が行なわれている(有料)。僧侶による読経が堂内に響く中、日頃拝観者が入れない内陣に上ることができ、しかも観音像の足に直接触れられ、最後に祈祷札も授与される。
年の最後に、ちょっとありがたい経験をした気分に浸れる。
■3:長谷寺だけのオリジナルな除夜
鎌倉市内には寺院が密集しているので、大晦日になるとあちこちの除夜の鐘が響き合う。長谷寺でも観音堂内の法要に続いて、僧侶による読経の中、除夜の鐘が撞かれる。僧侶に続き一般拝観者も撞くことができるので、毎年長い行列ができる。
除夜の鐘に先駆けて、境内一面に置かれた約5千基の祈願ロウソクに灯りが点されるが、除夜の鐘が一段落すると、祈願者が取り囲む中、このロウソクの周囲でも経が読まれる。
そのまま境内で時間を過ごし、見晴台から初日の出を拝む拝観者もたくさんいる。気分の良い年の越し方である。
【長谷寺】
所在地/神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
電話/0467-22-6300
拝観時間/12時〜14時45分
アクセス/江ノ電長谷駅から徒歩5分
■立ち寄り処 「レストランCARO」
フレンチやイタリアンの店がひしめく鎌倉で、昭和の香りを色濃く残した昔ながらの洋食店。肉と野菜の旨味がたっぷりつまったデミグラソースが人気なので、ビーフシチュー(R1900円S1500円)をオーダーする人が多い。
とろけるまで煮込んだ牛肉に彩り豊かな野菜とフェットチーネがたっぷり入って、ボリュームもたっぷり。ハンバーグステーキ(1200円)やポークソテー(1550円)にもデミグラソースがかかっていて、付け合わせの野菜もたっぷりなのが嬉しい。
グラタン(M1250円)やドリア(1250円)、ピザ(M1400円)、スパゲッティ(1100円〜)といった定番洋食は、どれをとっても手間暇惜しまぬ料理ばかり。当たり前のことを丁寧に行うのがいかに大切かを実感する。これからの季節にはカキも人気で、生ガキ、カキフライ、オーブン焼きの三種が、どれも1ピースからオーダーできる。
地元住民にも熱烈に支持されている店だけに満席になることが多いので、昼も夜も開店時間を目指して訪れるとよい。
【レストランCARO】
所在地/神奈川県鎌倉市長谷2-16-15斎藤ビル1F
電話/0647-25-4379
営業時間/12時〜14時45分LO、18時〜21時LO
定休日/金曜
アクセス/江ノ電長谷駅から徒歩3分
文・写真/原田 寛(はらだ・ひろし)
1948年 東京生まれ。1971年 早稲田大学法学部卒業。鎌倉を拠点に古都や歴史ある町並みを撮り続け、鎌倉の歴史と文化・自然の撮影をライフワークとしている。鎌倉風景写真講座を主宰し後進の指導にもあたる。作品集は『鎌倉』『鎌倉Ⅱ』(ともに求龍堂)『四季鎌倉』(神奈川新聞社)『花の鎌倉』(グラフィック社)など多数。