迂闊に人生を語り、昔の経験を口にすれば「老害」と揶揄される昨今。しかしながら、たとえ陰で「老害」と呼ばれようとも、申しておかなければならない「一言」はあるもの。さりとて、長々と諭してみたところで、相手の心に伝わるとは限りません。貴重な時間が、無駄になってしまうこともしばしば。
ならば、先人が残した言葉や金言を用いることで、あなたの真意や願いが相手に伝わる良案となるかもしれませんね。そんな時に役立つ言葉をご紹介いたしましょう。第19回の座右の銘にしたい言葉は「七転び八起き(ななころびやおき)」 です。
目次
「七転び八起き」の意味
「七転び八起き」の由来
「七転び八起き」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「七転び八起き」の意味
「七転び八起き」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「(七度転んで八度起き上がる意から)多くの失敗にもめげず、そのたびに奮起して立ち直ること。転じて、人生には浮き沈みが多いことのたとえ」とあります。人生において何度失敗しても、その度に立ち上がり、前進し続ける姿勢を表現する言葉です。この言葉は、困難や挫折に直面しても諦めず、再び立ち上がることで成功へと繋がるというメッセージを持っています。
「七転び八起き」の由来
七転八起(しちてんはっき)とも言います。読んで字のごとく「七回転んで八回起きる」ということですが、そもそも「七回転んだら七回起きるのではないか? 」という疑問が湧いてきます。この一回の差は、元々倒れた状態から始まっているところにあります。生まれたての赤ん坊は一人では起きあがることができません。起き上がるには誰かの手を借りることになります。それを加えて、一回分多いといわれているのです。
ではなぜ、「七」と「八」なのでしょう。日本では古来から「七」や「八」は縁起の良い数字とされています。「七五三」「七草」「七福神」「七宝」など、「七」を使った語は多く見られます。また、「八」は末広がりの形から繁栄や成功を呼ぶものとして好まれています。扇子も末広がりで縁起物とされていますね。さらに「七」と「八」は数が多いことを象徴する数字でもあります。
中国では「七」は物事の始まりを表す「起」と同じ音なので、吉祥の数として尊重されるケースもあるようです。「八」は「発」と音が似ていて、繁盛する、儲かると言った意味の「発財」を連想させるとして非常に好まれる数字です。北京オリンピックが2008年8月8日の夜8時8分に開幕したことからも「八」という数字が縁起のいいものとして好まれていることが伺えますね。
また、「七」はもともと、線を縦と横に切りつけたさまを表す指事文字です。何回も転んだことを断ち切って、起き上がろうとする前向きな姿勢が感じられる「七転び八起き」という言葉。本当に七回転んでいるわけではないのですね。
「七転び八起き」を座右の銘としてスピーチするなら
この言葉が、どのように自分の人生に影響を与えてきたかを語りましょう。具体的なエピソードを交えながら、どのようにして困難を乗り越えたのか、どんな教訓を得たのかを伝えることで、聞き手にこの言葉の力強さを実感させることができます。以下に、「七転び八起き」を取り入れたスピーチの例を紹介します。
困難を乗り越える大切さを伝えるスピーチ例
今日は、「七転び八起き」という言葉についてお話しさせていただきます。この言葉は、何度失敗してもその度に立ち上がることの大切さを教えてくれます。
例えば、50代の頃、長年勤めていた会社が経営不振に陥り、突然のリストラに遭いました。その時は本当に辛く、これからどうやって生計を立てていくのか途方に暮れました。しかし、「七転び八起き」の精神で、新たな仕事を探し、スキルを磨き直しました。結果として、再就職し、そこで新しい人々と出会い、貴重な経験を積むことができました。
私がここでお伝えしたいのは、人生には必ず困難が訪れるということです。しかし、その困難にどう向き合い、どう乗り越えていくかが大切です。どんなに辛い状況でも、決して諦めず、何度でも立ち上がることで、新たな道が開けるのです。
最後に
「七転び八起き」という言葉は、私たちに何度でも立ち上がる力と勇気を与えてくれます。人生の中で遭遇する困難や挫折を乗り越え、前進し続ける姿勢を持つことで、私たちは成長し、成功へと導かれます。この言葉を座右の銘にすることで、日々の生活や仕事においても、より前向きで強い意志を持つことができるでしょう。
●執筆/武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com