文/鈴木拓也
諸悪の根源は「頭の重み」
首・肩がこる、腰が痛い、ひざが痛いといった不快な症状。
「年だから仕方がない」と思い込んでいないだろうか。
実はその不調、「頭」をしっかり支えていないことから起こるものが多いという。
そう説くのは、指導歴35年の健康運動指導士、植森美緒さんだ。
大人の頭の重さは約6kg。ボーリング1玉が首の上に乗っているようなものだが、ふだんはその実感はない。
そこが「落とし穴」だと、植森さんは指摘。著書『イラストでわかる 肩・腰・ひざの痛みが消える日常動作大図鑑』(ダイヤモンド社)の冒頭では、次のように語る。
たとえば、凍結した路面を歩くときは、転ばないように意識して小さな歩幅で歩きます。持ち上げるものが重いと分かっていれば、意識してお腹に力を入れるでしょう。ところが、頭が重いという実感は日ごろなかなか持ちにくく、自覚のないままに体に負担をかけてしまうわけです。(本書10pより)
植森さんによれば、明確な病状ではない首、肩、腰、ひざの不定愁訴の「9割」が、支えられていない頭の重みが原因だという。だから、「頭を上手に支える動作」を習慣づけることで、不調は収まってくるとし、本書にはさまざまなセルフケアが掲載されている。
壁に頭をつけて歯をみがく
セルフケアといっても、何か特別なエクササイズをするわけではなく、ふだんの動作や姿勢を変えるというもの。
たとえば、「歯をみがく」。この何の変哲もない生活のルーティンにおいて、姿勢をちょっと変更するだけ。「めちゃくちゃ痛いとき」「ちょっと痛いとき」「痛くないとき」の3つの症状それぞれに対応したやり方が載っており、「ちょっと痛いとき」は、以下のように行う。
まっすぐに立ち、頭を壁にくっつけて歯をみがくだけ。それだけだが、「腰痛、肩こり、ひざ痛など、痛みのない若々しい体づくりに間違いなく有効」だとする。
つっぱり棒のように頭を支えて座る
次は、オフィスワークで会議に出席したときの姿勢。首、肩、腰が「めちゃくちゃ痛いとき」は、下の姿勢を極力キープする。
この姿勢のポイントは、足は椅子の近くに置き、手を太ももについて頭の重みをつっぱり棒のように支えること。逆に、疲れているからと背中が丸まった姿勢で座っていると、頭が前に突き出てしまい、かえって余計に疲れてしまうと、植森さんは注意する。
ちなみに植森さんは、「疲れたら伸ばす、ゆらす」など、痛みが消える動作心得を6か条記しているが、座っているときも含めていずれも、こうした心得をベースにしている。なので、まずは心得をしっかり覚えてから、各種動作に取り組むと理解が早いだろう。
つり革につかまってソフト牽引
電車に乗って立っている時も、頭を支えるのに最適な姿勢が載っている。
整形外科には、首(頚椎)や腰部を引っ張る牽引療法というのがあって、椎間板などへの圧迫を軽減する効果があるが、この電車立ちはいわば「ソフト牽引」。つり革を持ち、体の自重で腰を少しずつ伸ばして、圧迫を緩める。もし、この動作が気持ちいいなら、「ぶら下がり健康器を購入するのもあり」だと植森さんはアドバイスしている。
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このように本書には、起きてから寝るまでに行うあらゆることについて、肩、腰、ひざの痛みを消すための動作が、絵解きで解説されている。今まで多くのセルフケアをやってみたけれど、効果が出なかったという方は、取り組んでみてはいかがだろうか。
本書内イラスト:中村知史
【今日の健康に良い1冊】
『イラストでわかる 肩・腰・ひざの痛みが消える日常動作大図鑑』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。