文/鈴木拓也
厚生労働省による、令和4年度の「国民生活基礎調査」によると、心身の不調で自覚のある人の症状のトップは「腰痛」。日本全体で見れば、腰痛持ちは約3千万人もいるとされる。
腰痛と一口にいっても種類はさまざま。医学的にはまず、特異的腰痛と非特異的腰痛に大別される。特異的腰痛とは、ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、すべり症など、医療機関で原因がはっきりと特定できるものを指す。
対して、非特異的腰痛とは、医療機関で明確に原因が特定できない腰痛をいう。ぎっくり腰や慢性腰痛症などがこれにあたり、全体の約85%は非特異的腰痛とされている。
こうした腰痛に悩む人たちを、次々と改善に導いているのは、西住之江鍼灸整体院の白井天道院長だ。当院は、大阪市で唯一の脊柱管狭窄症、すべり症の専門院。非特異的腰痛も対応しており、年間の来院者は約1万人に及ぶという。
その白井院長が、このたび上梓した著書が『2500万人が苦しむ名もなき腰痛を自分で治すすごい本』(自由国民社)。「名もなき腰痛」、つまり非特異的腰痛に焦点を当て、効果的なセルフケアを網羅した注目の1冊となっている。
どこに痛みがあるかをまずチェック
本書の構成は、具体的に痛む箇所をチェックして、腰痛のタイプを判定。それに合ったセルフケアを実践するというもの。セルフケアといっても1日1分程度で、とても簡単(本書掲載のQRコードで動画も確認できる)。
そのうちの1つを、ここで紹介しよう。まずは、「痛いゾーンチェック」として前屈と後屈を行う。
【前屈チェック】
1. リラックスして立つ。
2. 無理なくできる限り、前屈する。この時、腰の張りや痛みがある場所をチェックする。また、手の指先と床との間の距離や痛みの度合いも確認。
【後屈チェック】
1. リラックスして立つ。
2. 無理なくできる限り、後屈する。前屈と同様、腰の張りや痛みがある場所をチェックし、どこまで反れるかも確認。
やってみて、もし腰のあたりの背骨より左側が痛いと自覚したら、筋・筋膜性腰痛(左側)の可能性が高い。これは、脊柱起立筋などの筋肉・筋膜が痛むもので、ピンポイントではなく、背中、腰、尻にかけて広範囲に症状が出る。腰痛の中では最も一般的なもので、若年者から高齢者まで年代を問わず発症するという。
ついで、再確認の意味で、側屈チェックと筋肉の盛り上がりをチェックする。
【側屈チェック】
1. 足を肩幅に開いて立つ。
2. 右手を体につけたまま、左側に体を倒す。
3. 逆に、左手を体につけたまま、右側に体を倒す。
右側よりも左側に倒しにくい傾向があるか、比べてみよう。
【筋肉の盛り上がりチェック】
1. 背骨下部の左右にある筋肉に手を当てて触れる。
2. そのまま前屈して、背骨の左右にある筋肉のどちらかが盛り上がっていないか、確かめる。
左側の方の筋肉が盛り上がっているか、比べてみよう。
左のわき腹を押すだけで腰痛が改善
白井院長が、この左側の筋・筋膜性腰痛に効くセルフケアとして挙げるのは、「左わき腹押し」。脊柱起立筋のこわばりをほぐすことで痛みを抑えるというものだ。
1. 肋骨の下あたりの盛り上がっている筋肉(脊柱起立筋)の外側を右方向に親指で押す。
2. 親指で右に押し込みながら、上半身を左側に5回倒す。
3. 親指の位置を少し(指1本分ぐらい)下げて、同様に5回行う。
このセルフケアをした後で、前屈をしてみよう。最初のときよりも、指先と床との距離が縮まっていることに気づくだろう。同様に後屈をすると、さらに後ろに反れているはずだ。なおかつ、痛みも改善されていることに驚かれるにちがいない。
このようなかたちで、本書には、仙腸関節性腰痛、椎間板性腰痛、坐骨神経痛など、およそほとんどの非特異的腰痛に応じたセルフケアが掲載されている。日頃腰が痛くて困っているという方は、一度読んで、ぜひ試して欲しい。
本書内イラスト:MICANO
【今日の健康に良い1冊】
『2500万人が苦しむ名もなき腰痛を自分で治すすごい本』
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。