マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、「プレイングマネージャー」の定義や問題点、プレイングマネージャーからマネージャーになるためにすべきことなどについて考察します。
プレイングマネージャーという役職。みなさんはこの役職名を聞いてどのように感じるでしょうか。違和感がないと思った方……ちょっと注意した方が良いかもしれません。ただ、違和感を覚えないくらい当たり前に存在する役職であることも事実です。今回はそのプレイングマネージャーに関してのお話しです。何が問題なのか? 設置するのであれば、何に気を付けなければならないのか? についてお話ししていきます。
そもそもプレイングマネージャーとは?
プレイングマネージャーとは、プレイヤーでしょうか? それともマネージャーでしょうか? 正解はもちろんマネージャーです。マネージャーであるということはプレイヤーではない、ということになります。ところが名称はプレイングマネージャー……ややこしくなりましたが、つまり、プレイングマネージャーとは「マネージャーなのにプレイヤーをやっている人」です。
言い換えると「プレイヤーを脱しきれないマネージャー」。さらに言い換えると「部下を育てられていないので現状は自らがプレイヤーをやらざるを得ないマネージャー」ということになります。
もちろん、マネージャーになって間もないうちは、部下が育っていなくても仕方のないことですので、一時的には誰しもプレイングマネージャーにならざるを得ません。ただ、その時に気を付けなければならないことは、プレイングマネージャーとはあくまでマネージャーの一時的な仮の姿であるということです。ですから早急に本来のマネージャーの姿にならなくてはなりません。
プレイングマネージャーの定義
ここでまずはプレイングマネージャーを定義します。プレイングマネージャーと正規のマネージャーの動きはよく似ています。正規のマネージャーもマネージャー業の傍らプレイをしていることはよくあります。ですから何が違うかを明確にしましょう。
プレイングマネージャーとマネージャーの違い、それは評価のされ方です。その方がマネージャーでありながら、その方個人の実績(売上額や売上件数等)で評価されているなら、その方はプレイングマネージャーです。一方、その方がその方個人の実績ではなく、自分が所管する組織の実績のみで評価を受けているなら、その方はプレイングマネージャーではありません。れっきとしたマネージャーです。
先ほども書きましたが、このお二人はやっていることや日々の時間の使い方は似ているかもしれませんが、明確に違うものなのです。
プレイングマネージャーとマネージャーの違い
評価項目だけの違いで他は何も変わらないなら、違いは明確にならないと思うかもしれません。しかし、そんなことはありません。
では、実際にあなたの会社にいるプレイングマネージャーの方を組織の実績だけで評価することを考えてみてください。不安ではないでしょうか。「個人の実績を追わなくなるのではないか?」「果たして、部下を育成できるだろうか?」となり、危なそうだからこれまで通り……となってしまいそうではないでしょうか。
または、今プレイングマネージャーであるあなたが、そのような設定をされたと想像してみてください。思考を大きく変化させなければならないことに気付くはずです。「自分が売ることよりも、部下に売らせることをしなければならない。果たして、自分にできるだろうか……」と途端に不安が出てくるはずです。お察しの通り、そのように設定しても不安ではない部下をお持ちの上司の方には、既にそのように設定しているはずですし、そのように設定されても不安にならないという方は既にそのように設定されているでしょう。
つまり、プレイングマネージャーという存在は「部下を育てられるという信頼を得ていない」もしくは「部下を育てた実績のない」マネージャーなのです。
マネージャーにならなければならない
大切なのは、プレイングマネージャーを卒業すること、卒業させることです。
では、どのように卒業するのか、させるのか?
以降は、卒業させたい側(マネージャーの上司等)からの視点のみで解説していきます。それは、部下を育てられるようにさせること、それしかありません。そのために、まず行っていただきたいのは、組織の実績のみで評価することです。
チームの実績50%・個人の実績50%はNGです。それどころか個人の実績10%もNGです。その領域が残っていると、いつまでも個人の実績が存在意義に繋がってしまい、部下を育てる方向に意識が向きません。「全体では30点しか取れていないが、個人の部分は10点満点が取れている」のようになってしまいます。
そこで、個人0・組織100の配分で評価をする体制を築いてください。これが一歩目ですが、とてつもなく大きな一歩となります。この設定が出来ない限りプレイングマネージャーの存在はなくなりません。逆にこの設定が出来れば、半ばまでは到達したようなものです。なぜなら、プレイングマネージャーを担っている方は、間違いなく個人プレイヤーとしては優秀です。ノウハウを持っていて仕事の出来る人です。エネルギーのある方です。後はそのエネルギーを部下の育成に向けてもらうだけなのです。
ただ、もちろん精神論だけで育成は出来ません。少し育て方のノウハウをお伝えいたします。
第一に、(マネージャーを目指すプレイングマネージャーを)育成する部下の「プロセスに介入させない」ことです。自身が優秀なプレイヤーだった方は放っておくと、往々にして部下のプロセスに介入する育て方をしてしまいます。トークスクリプトを作り、ロールプレイングを行い、一挙手一投足を注意していきます。部下の営業現場を録音(録画)させて提出させたりして、ここではこう言え、ああしろと細かいところまで口を出してしまいがちです。自分が出来るため、出来ないのを見ていられないのです。しかし、それを行ってしまうと部下はどうなるでしょうか。おそらく、自分で考えなくなります。そして、契約が取れなかった原因をスクリプトや上司のせいにし始めます。つまり、育たないのです。ですから、まずは、育てる際にやってはいけないことから徹底させていきましょう。
では、プロセスに介入せずにどのように育てるかですが、その際はプロセスを見ずとも経過で何をどのように行っているかを見極められる点を打って管理していきます。弊社識学ではこれを結果点と言いますが、一般的にはKPIと呼ばれたりもします。
例えば、営業の仕事であれば、架電数・訪問数・商談数・見積発行数・結論回答待ち数のような数値です。各種の率が高いのに最終目標に届かないのであれば、純粋に行動量が足りていないということが判明しますし、見積発行からの結論回答待ちや、結論回答待ちからの成約数が足りていないのであれば、テクニックや「押し」が足りていないというように、誰の目から見てもどこに不足があるのかが分かるような環境設計をします。そのようにして出来ないところがわかったら、それをいかに解消に向かわせるかを考えれば良いのです。部下に力を付けさせたいのであれば、部下自身に考えさせることが最も効果は高いのですが、考えるためのアイデアも浮かんでいないようであれば、最低限の知識は与えなければならないというように、その部分の出し入れのテクニックが必要になります。
そこはまた経験やセンスも必要になりますが、育成力を磨くということがどこの部分のテクニックを磨くことであるかは明確にすることができますし、そこが上手になりさえすれば、確実に部下を育てられるマネージャーにすることができます。
まとめ
ここまでプレイングマネージャーについて書いてきました。
最初に、プレイングマネージャーとは「部下を育てられていないので、現状は自らがプレイヤーをやらざるを得ないマネージャー」であるということをお伝えしました。「あいつは部下を育てられないけど、プレイヤーとしては一流」というような、褒めているのか叱っているのかがよくわからないようなご発言が、プレイングマネージャーの目指すべき成長する姿を迷わせてしまっているかもしれません。明確にいつまでもプレイングマネージャーではダメなんだというメッセージを発してあげましょう。そのメッセージは、直接口頭で言い聞かせても効果はありません。しっかり評価項目に織り込んでください。
口頭で何度言っても、評価項目が変わらなければ残念ながら変化はしません。そして、覚悟を決めさせたら、育成すべき部下のプロセスには介入させないことを徹底していきましょう。プロセスに介入出来ないとなれば、その中でどうやって部下を育てるのかを考えるようになります。
もう一点、そもそも企業の規模が小さく完全な管理者であるマネージャーが自社には必要ないとお考えの企業もあるかもしれません。ただ、育成が出来ない、もしくは人材が不足しているという諦めが現状の組織の規模に繋がっているのだとしたら、それはこちらの記事通りに実施して頂ければ解消できるかもしれません。いずれにせよ優秀な管理者が増え、たくさんの社員がしっかり成長していける環境を作るということにデメリットは何もありませんから、是非チャレンジして頂ければと思います。
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