3月16日、北陸新幹線は石川県の金沢から福井県の敦賀まで延伸開業する。これで東京からは、より北陸地方が近くなる。この機会に、春の北陸へぜひ足を運んでほしい。
地元の人々に慕われる神社には隠れた歴史が眠る
えちぜん鉄道の三国芦原線は、福井市内から九頭竜川と並行するように日本海まで伸びる。終点の三国港駅の4つ手前が、あわら湯のまち駅。駅前から旅館が立ち並ぶ中を北に約1km、小高い丘の上に春日神社がある。74もの源泉が湧く温泉街を一望しながら桜を楽しめる。氏子総代の齋藤愛夫さん(76歳)はいう。
「郷土安穏、五穀豊穣の神様です。やはり、地域をまとめる心の拠りどころですね。明治の初めに奈良の春日大社から分霊が勧請されました。同じ境内に小さな祠なのですが、薬師神社、白山神社もあります。この丘を私たちは、たいてい裏山といっていますが、3つの神社があるので『三社山』とも呼んできました」
平安時代に勧請された本荘
神社の来歴は、土地の歴史を知る手掛かりとなるが、あわら市には春日神社が多い。市内91社のうち21社が春日神社だ。あわら湯のまち駅から福井市方面に2駅戻ると本荘駅。この地は平安時代まで河口荘(かわぐちのしょう)といわれ、天永元年(1110)に総社として春日神社が建立された。市内最古の春日神社である。氏子総代の徳丸健一さん(77歳)はいう。
「藤原氏の氏社が春日大社で氏寺は興福寺です。河口荘は興福寺、正確にはその塔頭の大乗院の荘園という意味。そんな縁から春日神社が勧請されました」
こうした由緒から、あわら市内でも別格の扱いを受け続けるが、本荘の人々は親しみと愛着を込めて“お春日さん”と呼ぶそうだ。春は祭りの季節。祭りが終わると境内の桜が咲き始める。
●観光情報の問い合わせ/あわら市観光協会 電話:0776・78・6767
北陸新幹線が敦賀まで開業
3月16日、これまで東京から石川県の金沢までを結んでいた北陸新幹線が、福井県の敦賀まで延伸し、新たに6つの駅が開業する。これで石川県、富山県、福井県の北陸3県をより便利に旅することができる。
取材・文/藍野裕之 撮影/藤田修平
※この記事は『サライ』本誌2024年4月号より転載しました。