「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努力をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶力の鍛錬につながると言われています。
「脳トレ漢字」第171回は、「漲る」をご紹介します。部首にもある通り、水に由来する漢字です。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「漲る」とは何とよむ?
「漲る」の読み方をご存知でしょうか? 「はる」ではなく……
正解は……
「みなぎる」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「水が満ちて、あふれるほど勢いが盛んになる。」「力や感情などがあふれるばかりにいっぱいになる。」と説明されています。平安時代中期頃から使用例が見られる「漲る」。当時は主に、水が溢れそうになっている様子を指す言葉として、使われていました。
やがて、「やる気が漲っている」「パワーが漲る」などのように、力や感情が高まっている様子を指す言葉として、広く使われるようになったと考えられます。
「漲る」の漢字の由来は?
部首が「さんずい」になっていることからも分かる通り、「漲」は水に由来する漢字です。「さんずい」と「張」という漢字が合わさって、「水が一面に張りつめている様子」を表すようになったと言われています。
また、「漲る」には、水しぶきが立つほど、流れが激しいという意味も含まれているそうです。
水流に関係する百人一首
「漲る」には、水流の勢いが激しいという意味が含まれていることが分かりました。百人一首の中には、「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」という、水流の勢いと相手を想う気持ちをかけあわせた歌があります。
これは平安時代後期の天皇・崇徳院(すとくいん)が詠んだ歌で、「流れの早い滝川が、岩にぶつかって割れてもまた一つの流れになるように、今は離れていても必ずあなたに会いたい」という意味です。崇徳院といえば、同母弟の後白河天皇と対立し、「保元(ほうげん)の乱」で争ったことでも知られています。
最終的に敗北し、配流先の讃岐国にて、失意のうちに亡くなったとされる崇徳院。亡くなるその時まで、遠く離れた場所にいる誰かのことを想い続けていたのかもしれませんね。
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いかがでしたか? 今回の「漲る」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「漲る」は、あふれるほど勢いがある様子を指す言葉であるということが分かりました。長い夏が終わり、ようやく秋らしい季節になってまいりました。
季節の変わり目でも体調を崩さず、活力が漲っている健康的な状態をキープしたいものですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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