シスターフッド(女性同士の連帯)を描いた映画やマンガがヒットし、女性同士の友情が注目されている。しかし、現実は、うまくは行かない。これは、友情が生まれてから崩壊するまでの道を、ライター・沢木文が取材し、紹介する連載だ。

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スマートフォンの普及が進み、若者層だけでなく、60代以上の層がSNSを活用していることが当たり前になっている。調査会社ICT総研が実施した「2022年度SNS利用動向に関する調査」を見ると、日本のSNS利用者は約8270万人だという。国民の8割以上が何らかのSNSを使っているともいえる。

多くの人数が使うほど、トラブルは発生する。中でも「世代による文化の格差がひどい」と語るのは波奈さん(40歳・会社員)だ。

波奈さんは12年通ったお茶の先生の貴和子さん(60歳)から1年前に「私もSNSを始めようと思うの」と相談を受け、SNSのアカウントを開設。友達としてつながったことが軽蔑と失望の序章だったと語る。

20歳年上の憧れの「お姉さま」

波奈さんと貴和子さんが知り合ったのは、アルバイトしていた飲食店の常連さんの紹介だった。

「当時の私は28歳、関西の私大卒業後、就職できず上京し6年が経っていました。地元(九州地方)の両親から帰って来いと言われるも無視。親不孝だと文句を言われ、絶縁状態に。だって戻れば適当な男と結婚させられて、子供を産み、義両親と両親の介護をする未来が見えましたから。

当時は派遣社員をしながら飲食店で働いていたんですけれど、そのときに茶道をテーマにした小説を読んでいたんです。常連さんにお茶に興味があると言ったら、“私の幼なじみがお茶を教えている”と紹介してくれたんです」

その飲食店は、生ビール1杯400円という庶民的な価格だが、高級住宅街の中にあり、地主、医者、弁護士、経営者、大学教授などが通っていた。客筋がいい店だから、貴和子さんも素敵な人なのだろうと思ったという。

「指定された日時に貴和子さんの家に行ったら、日本家屋の門がドーンとあって、中には手入れされた庭が広がっていました。玄関にはブロンズ像や猫脚の家具がある。セレブの家はすごいと驚きました」

貴和子さんも素敵だった。波奈さんに会うために、季節に合わせた着物を颯爽と着こなし、髪もセットしていた。

「日本舞踊もやっており、身のこなしにスキがない。なんて素敵な人なんだと圧倒されました。当時、貴和子さんは48歳。20歳年上の憧れのお姉さまに、私は恋をしてしまったのかもしれません」

貴和子さんも地方出身で、旧華族の血を引く経営者の夫との間に2人の娘がいた。長女は英国に、次女はフランスに留学中だった。

「夢みたいな世界ってあるんだなと。貴和子さんと話していると、マンガ『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットを連想しました。ロココの女王、貴族の中の貴族……お茶も趣味で教えているので、月に1回5000円。時間も3時間とたっぷり長く、貴和子さんとはどんどん親密になりました」

【ボディタッチをするなど、人との距離が近い……次のページに続きます】

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