人が動くことは、荷物が動くことでもある。いかに効率よく荷物を収め、使いやすく快適に移動できる「容れ物」を作るか。それが、カバン(バッグ)メーカーの変わらぬ命題といえる。
近代以降、交通手段の発達とともに、カバンやトランクは形を変え、素材を変え、進化を続けてきた。その「最適の手段」を、駅や空港などで行き交う大小のスーツケースに見ることができる。キャスターと伸縮するハンドルが付いたスーツケースは、今や旅に欠かせないものだ。数泊分の着替えや土産物が入り、重くても楽に運べるので体の負担は大幅に減る。
エースは、日本でいち早く1967年に『デボネア』というスーツケースを発売したメーカーである。当時キャスターは付いていなかったが、1970年代にキャスター付きが発売される。「システムバー」と呼ばれる伸縮ハンドルが同社製品に付いたのは、1994年なので、現在のような形になったのは古いことではない。
「斜め引き」で安全に配慮
ここで紹介するのは、エースの「プロテカ」ブランドの『フリーウォーカーGL』である。サイズは、1~2泊の旅行に向く「機内持ち込みサイズ」を選んだ。このサイズのスーツケースがひとつあれば、国内旅行で重宝する。
「プロテカ」は、同社のスーツケースのなかで最上級に属するブランドだ。生産は北海道の赤平工場(エースラゲージ赤平工場)で一貫生産される。工場には設計部門があり樹脂板の製造から、成形、組み立て、仕上げ、出荷まで行なう。つまり原材料がスーツケースの形を成すまで、赤平工場で完結しているということだ。そこではベテランの職人による、手作りに近い組み上げがなされていく。
『フリーウォーカーGL』はハンドルの形状を刷新することで、スーツケースの走行に「斜め引き」という新しい機能を加えた新製品だ。スーツケースの引き方は、体の後ろで引っ張る「横引き」、体の脇に立てて移動する「縦引き」があるが「斜め引き」は、その中間となる引き方である。
斜め引きは、スペースを取らないので、安全に移動ができる。コンコースの曲がり角などで、人の後からスーツケースが突然現れて驚くことがあるが、斜め引きであれば荷物と接触する危険性は減る。
斜め引きは、機動力に優れた横引きと安全性の高い縦引きの「いいとこ取り」ともいえる。
また、「プロテカ」シリーズで定評のある「ベアロンキャスター」を搭載。キャスターの機構にベアリングを内蔵し、タイヤの素材を用いた強靱な構造をもつ。製品に3年間の保証が付けてあるのは「そうそう簡単には壊れませんよ」というメーカーの自信の現れでもある。
旅には出たいが、重い荷物を持っての移動が億劫と思う読者は、スーツケースの見直しをするのも一考だ。周囲の安全にも配慮した使い心地のいいスーツケースで、気持ちよく旅を続けたい。
※「サライ特上道具本舗」で購入できます。
プロテカ フリーウォーカーGLスーツケース/エース(日本)
https://www.pal-shop.jp/ippin/serai/
ロイヤルブルー、ブラック、ダークシルバー 各7万1500円(税込み価格)
取材・文/宇野正樹 撮影/稲田美嗣 スタイリング/有馬ヨシノ
※この記事は『サライ』本誌2023年3月号より転載しました。