クラシックなスニーカーに絶好のスウェットパーカ。胸にスニーカーをモチーフにしたプリントが入っている。1万6500円。
靴2万7500円/オニツカタイガー モデル名は「メキシコ66デラックス」。柔らかいゴートレザーを使用し、製品洗いは職人が一足ずつ手作業で行なう。
サイズは22〜31cm(29cmまでは0.5cm刻み。30、31cmは1cm刻み)。
問い合わせ:オニツカタイガージャパン お客様相談室 0120・504・630
上は製靴後、「泥染め」加工を施したモデル。4万4000円。
下は「グラデーション染色加工」を施したモデル。3万7400円。

老若男女、誰もがスニーカーを愛用する時代だが、『オニツカタイガー』の靴は、日本だけでなく世界中で多くのファンを持っている。創業は1949年。ブランドの名前は創業者・鬼塚喜八郎の名字と、アジアで最強の動物である「虎=タイガー」を組み合わせて考案された。

タコの吸盤から着想を得た「吸着盤型バスケットボールシューズ」(’51年)や空冷式エンジンをヒントにし、マメができにくいマラソンシューズ「マジックランナー」(’60年)など、次々と革新的なスポーツシューズを開発。オリンピックを始めとするスポーツ大会で輝かしい成績を上げ、世界的な有名選手にも履かれるようになる。

創業者の願いでもあった総合スポーツ用品メーカーを目指し、友好関係にあった2社と合併。会社名を『アシックス』と改名したのが’77年。新しい社名を浸透させるために『オニツカタイガー』は、ブランドとしては一旦消滅する。しかし「靴にタイガーのマークが入っているべき」など、『オニツカタイガー』の復活を望む世界中の選手やファンからの声に後押しされ、2002年、ブランドは復活を遂げた。しかも復活にあたっては、靴に加えて、服や小物なども含めて展開し、ファッションブランドへと生まれ変わる。翌年、クエンティン・タランンティーノが監督する映画『キル・ビル』でユマ・サーマンが同ブランドの黄色の「タイチ」を履いて登場、人気は『オニツカタイガー』を知らない若い世代にまで広がった。

’66年発表の名靴をベースに

ブランドが復活した2002年にデビューしたのが、「メキシコ66」。このモデルの元となったのは、’66年に発売された『リンバー』というトレーニングシューズ。その改良版として’66年に側面に初めてオニツカタイガーストライプ(当時はメキシコラインと呼ばれた)を施したモデルが発売されているが、この改良版を復活の看板商品にした。細身のシルエットと、薄底のソールを備え、踵のフラップがクラシック。誕生から20年を経過した現在でも高い人気を誇り、ロングセラーを続けている。

ブランド名が入ったレトロなフラップ。クロスに補強された踵のデザインも「メキシコ66」における特徴といえる。
履き心地も向上。硬さの異なる素材を組み合わせ、長時間履いても疲れにくい構造を持つインソールを装備している。

今回紹介するのは、「ニッポンメイド」シリーズに属する「メキシコ66デラックス」。これは「日本のものづくりの良さを伝えたい」と2008年にスタートし、日本で生産されたモデルだ。一足ずつ職人が手で加工を施し、機械による大量生産では表現できない風合いを実現している。約1日半、内部まで乾燥させたのち、職人が手作業で揉みほぐし、柔らかく仕上げる。同シリーズにはほかにも染色や刺繍、ペイントなど、多彩な技を駆使したモデルが揃っている。日本生まれのスニーカーとしての矜持さえ感じられる一足だ。

「ニッポンメイド」は山陰の工場で生産。写真はアッパーの「吊り込み」工程で、革の裁断なども手作業で行なう。

文/小暮昌弘(こぐれ・まさひろ) 昭和32年生まれ。法政大学卒業。婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)で『メンズクラブ』の編集長を務めた後、フリー編集者として活動中。

撮影/稲田美嗣 スタイリング/中村知香良

※この記事は『サライ』本誌2022年11月号より転載しました。

 

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