関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は会社経営者の早苗さん(83歳)です。結婚40年の夫(78歳)の浮気調査を私たちに依頼しました。早苗さんは、“チャラ男”の夫を、40年間養ってきました。その間も浮気は数えきれないほど。そのすべてを対処していたのです。
【それまでの経緯は前編で】
特急と思いきや、車だった
夫が群馬に行くのは週末が多い。運転免許を持っていないので、てっきり特急で行くのかと思い、路線情報を詳細に調べて尾行に挑みます。
調査初日となる土曜日、夫を油断させるために、依頼者・早苗さんは金曜日の夜から友達と軽井沢の別荘に出かけています。
夫は朝10時に家を出て、10分ほど歩いて駅まで向かいます。白いズボンにパリッとしたストライプのシャツを着て、白の中折れハットをかぶり、手には真っ白なハイブランドのボストンバッグ。股下の長さを自慢するだけあり、着こなしが決まっています。また、独自のオシャレセンスが光っている。
駅から電車に乗るのかと思っていたら、埼玉県内のナンバーの白い4WDが迎えに来ており、そこに乗り込みます。私はタクシー乗り場に駆け込んで、車を追尾。ペアの探偵はレンタカーで私の後を追います。
私が乗ったタクシーは、昔ながらのセダンタイプの個人タクシーでした。屋根が高いタイプのタクシーは、23区外に行くと目立ってしまう。タクシーの運転手さんも「おねえさん、探偵さんでしょ」というフレンドリーな方でした。聞けば30年前に写真週刊誌で張り込みのカメラマンをやっていた方で、当時の武勇伝をたくさん伺いました。
「もしかしたら群馬方面かもしれません」と伝えたのですが、車は東名高速に乗り、厚木から大磯方面へ。この近くのラブホテル密集エリアに入って行きました。車が入って行ったのは、その中でも最近リニューアルされ、高級路線に特化した人気のホテルです。地元シェフのデリバリー食事サービス、中庭やジャグジーもついている滞在型のホテルで、土日は予約で埋まっていることが多いとあります。
ラブホテルも追尾しようとしましたが、男女ペアで入らないと怪しまれます。タクシーを降りて外で待機。
「ここに入ったら、しばらく出ない」と思い、近くのビジネスホテルを予約。それから30分後にペアの探偵がレンタカーで到着し、同乗して中に入りましたが、部屋に空きはありませんでした。
交代で出入り口を見張り、朝6時から万全の態勢で待機。車が出てきたのは9時でした。
【シニアカップルの仲睦まじいデート……次のページに続きます】