「ゆうづる」のヘッドマーク原図。1965年10月より運転開始。上野~青森間(常磐線経由)を約12時間で結んだ寝台特急。JR 東日本大宮総合車両センター所蔵 撮影/川井 聡
常磐線が全線電化する1967年まで、平(現・いわき)~仙台間は蒸気機関車のC62形が客車を牽引。写真/RGG

黒岩保美(くろいわ・やすよし)は、戦後の国鉄で工業デザイナーとして、車両の完成予想図や車体のカラーリングなど、幅広い分野で鉄道のデザインに携わった。なかでも、多くのトレインマークのデザインを手がけたことで知られる。戦後、特急列車復活の第1号となった「へいわ」のトレインマークも黒岩の仕事である。その後も「富士」(戦後)、「はくつる」「ゆうづる」「日本海」「あけぼの」など、名列車のマークを生み出していく。

なかでも黒岩がいちばん気に入っていたトレインマークが「ゆうづる」だ。真っ黒な蒸気機関車の先頭で映えるよう、鮮やかな朱色を基調に、夕日を背景に鶴が羽ばたく様子が描かれている。黒岩にとってトレインマークのデザインとは、直径66cmの円盤の中に列車のイメージのすべてを凝縮させる作業だった。

新型車両の塗装色を担当

トレインマークのほかにも、黒岩の仕事は多岐にわたる。1949年(昭和24)に描かれた「湘南電車」の塗装案はオレンジとグリーンのツートーンを配し、それまでの「国電」のイメージを覆した。

昭和30年代に入ると、新型車両が続々と登場し、黒岩は、トレインマークだけではなく「あさかぜ」や「こだま」などのカラーリングを提案、今に続くカラフルな車体デザインの先鞭を付けたのである。

黒岩保美(1921~98)。国鉄嘱託職員時代に描いた「連合軍客車車内見取図」が高く評価される。1949年に国鉄入社、工作局客貨車設計課に配属された。写真提供/黒岩美浩

取材・文/宇野正樹

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撮影/植野製作所 図版/日本海ファクトリー

※この記事は『サライ』本誌2022年2月号より転載しました。

 

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