取材・文/ふじのあやこ
新型コロナの流行に伴い、私たちの生活は激変した。この連載ではコロナ禍よってもたらされたさまざまな変化により、人生が変わってしまった人たちに話を伺っていく。
今日子さん(仮名・35歳)は大学時代から付き合っていた男性を追って上京するもフラれてしまう。友人もいない、彼氏も失った状況を救ってくれたのは転職先の同僚たちだった。彼女は、人間関係はもちろん風通しも良かった職場を引き抜きにより3年で辞めることを決意したのだが……。
【~その1~はコチラ】
コロナ禍で「知らない」という外され方を味わった
職場の親しい人にだけ引き抜きの事実を伝えて、今日子さんは転職。新しい仕事は以前と同じWeb広告の営業だった。前の職場は数人がグループとなって仕事に向き合うのに対して、新しい職場は自分の仕事を共有こそするもののほとんどが自分次第。新しい案件を掴もうとする矢先に海外の話だと思っていた新型コロナウイルスが身近なものに変わっていった。
「最初の頃は海外の話と思ってあまり気にしていなかったんです。それが急に身近になって恐怖しかありませんでした。職場もそのまま出勤を続けさせていたんですが、大手がリモート出勤にすると報道されるにつれて、うちの会社でも社員の中で希望する人が出てきました。
会社は最初は希望者をリモートにするという方針だったんですが、出勤する人と出勤しない人に社内の連絡や共有がうまくいかずに差が出てきたんです。リモートワークというもの自体が初めてのことだったから。それに不満を訴える社員が出てきて、上の立場の人以外がリモートになりました」
入ってまだ半年にも満たない今日子さんは当然リモートになり、連絡の輪から知らずに外されていることが多くなっていく。一番ショックだったのはマスクの配布がされなかったこと。
「その頃はマスクがまったく手に入らなくて、会社がマスクを買って社員に支給していたんです。そのマスクが私の元には届かなかった。リモート会議のときに普通にマスクの話題が出ていたので、私に届いていないことさえ誰も知らなかった。
リモートだから、いじめなどの対象にも入らないということが出てくるんだと思いました」
【東京でいざというときに頼れる人は一人もいなかった。次ページに続きます】