文/小林弘幸
「人生100年時代」に向け、ビジネスパーソンの健康への関心が急速に高まっています。しかし、医療や健康に関する情報は玉石混淆。例えば、朝食を食べる、食べない。炭水化物を抜く、抜かない。まったく正反対の行動にもかかわらず、どちらも医者たちが正解を主張し合っています。なかなか医者に相談できない多忙な人は、どうしたらいいのでしょうか? 働き盛りのビジネスパーソンから寄せられた相談に対する「小林式処方箋」は、誰もが簡単に実行できるものばかり。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説します。
【小林式処方箋】丼やラーメン、カレーなど、炭水化物が大好物でガッツリ食べてしまう人は、あらかじめ半分くらいを取り分ける。
理想は朝4、昼2、夕4のバランス
食事を「抜く」ことほどマイナスなことはありませんが、炭水化物のとりすぎも考えものです。特にランチは、朝食、夕食に比べて、少なめがベスト。昼食時に短時間で牛丼やラーメン、カレーなどをガッツリ、炭水化物メインの昼食をとってしまうと、交感神経の働きが急上昇してしまい、食後は、そのリバウンドで一気に副交感神経が優位になってしまいます。
昼食後、「なんか疲れやすいなあ」「眠くなりやすいな」と感じているなら、それは、昼食のとりすぎが理由である場合が多いのです。理想は、朝はパンでもご飯でも炭水化物をガッツリ。昼は軽めの食事をゆっくりとって、腸を穏やかに動かす、というものです。
量の比率で言うなら、朝4、昼2、夕4、というバランスが最適でしょう。夕食は、夜9時までに終わらせるのが理想です。好きなものをゆっくり、味わいながら食べる、というのがいいですね。
とはいえ、これもあまりガチガチと自分を縛ってしまっては息苦しくなり、本末転倒。
私自身、カレーもラーメンも大好きですし、お昼に、ガッツリ系、コッテリ系を無性に食べたくなることもよくあります。いくら、「軽めの昼食」が理想だとしても、我慢してストレスが溜まってしまうなら、むしろマイナス。そういう時は我慢せず、食べてしまったほうがいいでしょう。
何も食べないのはNG
しかし、あまりに頻度が多いようでしたら、毎度ガッツリ完食してしまうのもお勧めできません。例えば、ラーメンやうどんなどの麺類の場合。最初から、「麺は半分だけ」と決めて、スープも飲まないようにします。牛丼やカレー、定食ものだったら、これも同じ。具も半分、ご飯も半分です。
ようするに、最初から「半分しか食べない」と決めてしまうのです。食べながら半分残すのではなく、最初から取り分けたほうが誘惑に負けにくくなります。
今後、意識しながら口に入れてほしいのですが、実は、人間の「食べたい」「おいしい」という感覚は、最初の一口、二口だけで十分に満たされるものです。その時点で、脳は満足していますので、完食しなくてもあまり影響がないのです。
ところが「全部食べなければ満足できない」という思い込みや錯覚が働くので、最後まで食べきってしまっている。ですから、最初から「半分しか食べない」と決めておけば、それ以上食べずとも、満足を得られるのです。
もし残すのがもったいないならば、注文の際に、量を減らすようにお願いすれば、たいていのお店は、協力してくれます。最近では、最初から量の少ないメニューも増えてきました。こうしたものをうまく利用しながら、「食べたいものを食べる」が「量は控える」ということを実践してください。
朝食同様、食べる時間がない日もあるでしょう。そういう時でも、おにぎり1個、豚汁1杯でもいいですから、何かは口に入れるようにしてください。昼食を抜いたまま夕食をとると、血糖値が急上昇してしまうからです。
そうすると、夕食でとったカロリーがエネルギーとしてうまく代謝されず、そのまま脂肪として蓄積されてしまいます。1日3食、規則正しく食事をとったほうが、食事を抜くよりも、実は体型を維持しやすいのです。
『不摂生でも病気にならない人の習慣』
小林弘幸 著
小学館
文/小林弘幸
順天堂大学医学部教授。スポーツ庁参与。1960年、埼玉県生まれ。87年、順天堂大学医学部卒業。92年、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。また、日本で初めて便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもある。自律神経の名医が、様々な不摂生に対する「医学的に正しいリカバリー法」を、自身の経験も交えながら解説した『不摂生でも病気にならない人の習慣』(小学館)が好評発売中。