文 /小林幸子
小林幸子の「幸」を招くルール
ファン歴50年以上の方はもとより、若者やネットユーザーからも「ラスボス」と称され、幅広い層に圧倒的な人気を持つ小林幸子さん。
小林さんの「今が楽しい、自分らしい人生」をおくるための秘訣とは?
齢を重ねるたび、元気と勇気、パワーを増し続ける、ラスボス流「言葉の魔法」を初披露!
ラスボスの「仕事の流儀」
知識やテクニックだけじゃない。大切なのは“志”が立派かどうか。次々と未知の世界の扉を開けて新たなことに挑む、その原動力はどこにあるのか。そして、進化を重ね続ける秘訣とは?
ルール07
60年以上、生きていればいろんなことがあります。良かった時もあれば、悪かった時もある。でもね、これだけは口にしないように心がけている言葉が、私にはあります。「あの頃は良かったな~」です。
たとえば20代のころが良かったとします。そりゃあ20 代には今にないキラキラした感じがありますよ。でも「20代のころは良かった」と言ってしまったら、“今”はどうなるの?
私は、「今日より明日、明日より明後日」と思って毎日を過ごしています。歌だってお芝居だって、本当に奥が深い。「これでいい」と満足してしまったら、そこで成長が止まってしまいます。
今日より明日、明日より明後日にはもっとうまくなっていたい。そう思ってがむしゃらに生きていると、「あのころは良かった」と懐かしんでいる間もありません。私が生きているのは“過去”じゃなくて“今”なんですから。
『ポーカーフェイスにさよなら』の作詞をしてくださった湯川れい子さんに先日お会いしたら、こんなことを口にされていました。
「幸っちゃんね、私、明日死ぬかもわかんないからね。だから今日、楽しいことやるの」
83歳にして、この突き抜けっぷり! これには私も参りました。過去じゃない。“今”を目一杯楽しむ。では「楽しむ」とは、どういうことでしょうか。
きっとそれは、何事も一生懸命にやり抜くということです。手を抜かずにやり切ることです。一生懸命に今日を生きるから、明日につながるんですね。
湯川さんは作詞家として、『六本木心中』(アン・ルイス)、『恋におちて』(小林明子)、『ランナウェイ』(ラッツ&スター)、『センチメンタル・ジャーニー』(松本伊代)……と数々の名曲を世に送り出していますが、常に「明日死ぬかもしれない」との思いを込めて、作っていらっしゃるのだと思います。
人間はどんなことがあっても生きていける
先日も急に、こんなことを言い出すんです。
「元ビートルズのポール・マッカートニーは、ずっとベジタリアンなの。あの人、本当に野菜しか食べないのよ。でも70歳過ぎてるのに、あれだけパワフルに歌えるでしょ? ゾウだってそうよ。野菜しか食べてなくても、あんなに大きいんだから」
突拍子もない話に驚いていると、続くお話がまたすごい。
「だから大丈夫、大丈夫なの。人間はね、大丈夫なの。どんなことがあっても生きていけるから」
本当に前向きな考え方ですよね。どうしたら湯川さんのような心持ちでいられるのでしょうか。
私は、ニコニコ笑って過ごすことに尽きると思います。笑っていれば、勝手に心もポジティブになるし、楽しい人も集まってくる。
私も前向きな性格とよく言われますが、赤ちゃんのころの体験に根ざしているんだと思います。当時、両親は地元・新潟市で精肉店を営んでいたんですが、赤ん坊の頃の私は、店の前の乳母車に乗せられていました。で、主婦が買い物に来るたびに私を抱っこしていく……。
だから私は誰に対しても、いつでもニコニコ。「もじけない子」(新潟弁で「人見知りしない子」)になったのかもしれません。
この性格は幼い頃から今まで変わらぬまま。泣きたい時だって、笑っていれば前に進めるもんなんですよ。
一、今日を一生懸命に生きていれば明日につながる
一、ニコニコ笑って過ごせば楽しい人が集まってくる
小林幸子(こばやしさちこ)
1953年、新潟県生まれ。64年、『ウソツキ鴎』で歌手デビュー。その後、長く低迷期が続いたが、79年、『おもいで酒』が200万枚を超える大ヒットとなり、日本レコード大賞最優秀歌唱賞をはじめ数々の賞を受賞。同年、NHK紅白歌合戦に初出場。以来、34回出場し、その「豪華衣装」が大晦日の風物詩と謳われる。近年は、若者やネットユーザーの間で、「ラスボス」と称されるようになり、ニコニコ動画への「ボカロ曲」の投稿やアニメ『ポケットモンスター』の主題歌を歌うなどして、“神曲”を連発している。
ラスボスの伝言
~小林幸子の「幸」を招く20のルール~