「ホテルという非日常の中で心身の力を抜いて寛ぎます」
篠井英介(ささい・えいすけ)さん(俳優・62歳)
篠井流ホテル選びの3か条
(1)自分の趣味嗜好に合うこと
(2)下見をして相性を探ること
(3)スタッフとの会話を楽しめること
気分転換や癒しの時間を求めて、私はホテルに泊まります。俳優の仕事は台詞を覚えるという大仕事がありますが、ある程度、台詞が体に入ると少しほっとするものです。その段階で自分へのご褒美で、ホテルに泊まって台詞の総仕上げをします。平日の昼間、ホテルのプールでぷかぷか浮かびながら台詞をぶつぶつ……。選ぶホテルは都内周辺の近場で非日常感を味わえる、いわゆるラグジュアリーホテルが多いですね。
ホテルの原体験といえば、『ホテルニューオータニ』です。若いころに、日本舞踊の師匠や先輩方に連れてきていただきました。高級ホテル独特の雰囲気を、少し緊張感をもって体験しました。大阪や福岡などで1か月ほどの地方公演がある場合、主催者側がホテルを用意しますが、ちょっと気分転換に別のホテルで羽を伸ばします。大阪ですと『ザ・リッツカールトン大阪』。貴族の邸宅のような優雅さがあります。このホテルで初めてエッグベネディクトをいただきました。あの味も忘れられません。
足繁く通ったホテルは、お台場にある旧・ホテル日航東京で現在の『ヒルトン東京お台場』です。窓が開けられて外気が入るところが好きなのです。海に面した客室にはバルコニーがあり、開放的で気持ちがいい。横浜のみなとみらい地区にある『横浜ベイホテル東急』もバルコニーがあり、海が見えて、目の前には大観覧車、夜はとても素敵です。海が見えるホテルはいいですね、清々とします。普段、防音装置のある稽古場や窓のない劇場にいることが多いせいか、広い海や空が見晴らせるところを求めているのでしょう。
自分好みの時間をつくる
ホテルでは部屋で寛ぐために、携帯型の音楽プレーヤーと小さなスピーカーを持ち込み、古いジャズやミュージカルのサントラを流しながら、本を読んだりしています。テレビはつけず、自分好みの滞在を演出します。お風呂の時間も大切で、気に入った入浴剤を入れて湯船に浸かってぼーっと音楽を聴きます。私のホテル選びでは、部屋にゆっくりできるお風呂があること、さらに大きなプールがあるところを探します。水に入ると、心身の力が抜けてリラックスできますから。最近開業したホテルでは、海を見晴らせ、客室に温泉がある熱海の『SOKI ATAMI』や、パークハイアットとして国内3軒目の『パークハイアット ニセコ HANAZONO』の大きなプールが気になります。
ホテル選びのコツは、あまり緊張しなくていいところ、自分の趣味嗜好に合いそうなところを探すことだと思います。気張りすぎていては寛げません。そのためには一度ホテルのラウンジを使ってみたり、昼食をとったりと、下見に出かけることをおすすめします。他人の推薦ではなく、自分自身でホテルとの相性を探ってみてください。好みのホテルがきっと見つかるはずです。
ホテルでは、様々な場所で働いている従業員のみなさんとの会話を心掛けてください。天気の話でも、近くの美味しい飲食店を聞くのもいいでしょう。スタッフの方々との会話を通じて、そのホテルの雰囲気を知ることができます。大阪のホテルは関西特有の明るさがあって楽しいですし、レストランのスタッフとのちょっとした会話で食事が一層美味しくなるものです。お気に入りのホテルで、顔馴染みのスタッフから声を掛けられれば、もうホテルは我が家同然、立派なホテル愛好家です。
SOKI ATAMI
静岡県熱海市小嵐町4-36
電話:0557・82・6511
チェックイン15時、同アウト11時
料金:1泊2食付きひとり3万5000円~
交通:JR熱海駅から車で約10分
パークハイアット ニセコ HANAZONO
北海道虻田郡倶知安町字岩尾別328-47
電話:0136・27・1234
チェックイン15時、同アウト12時
料金:1室朝食付き3万円~(グリーンシーズン[4月~11月頃]料金、税・サービス料別)
交通:JR倶知安駅から車で約10分
※この記事は『サライ』本誌2021年9月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。(取材・文/関屋淳子 撮影/藤岡雅樹(本誌、人物)撮影協力/ホテルニューオータニ)